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卑劣

 陰陽師が悪霊を守る? 陰陽師として一番やってはいけないことなんじゃないか、それ。あの子が一般人を襲わないという保証など一切ない、私の能力があるだけではない、弱体化しているとはいえ第二世代型程度の悍ましい破壊力と知能が奴には存在する。その上、私への歪んだ感情が奴の思考に渦巻いている。


 そもそも陰陽師と悪霊の共存自体が無理だ。奴はまだ渡島さんのことを、家族だと明確に認めた訳ではない。他の誰でもない渡島さんが危険だ。そもそも渡島さん、もの凄くあの子から嫌われていたじゃないか。殺意が芽生えるほどに。


 「そんな無謀は絶対に許しません。悪霊の味方になるということは、我々陰陽師の敵になるということです。私はあなたと戦わなくてはならなくなります。あなたはただ反逆者になろうとしているだけです」


 「そうですね、でも仕方ないですよね。俺は仕事よりも家族が大事ですから」


 「あなたの娘ではない、私の娘です」


 「…………娘だと思ってあげているんですね。てっきり俺はあなたがまだあの子を娘だと思っていないんじゃないかと思っていました」


 そう思いたいさ、この有り様を目の当たりにすれば。だが私があの子のことを娘じゃないと思うのは、ただの現実からの逃走に過ぎない。あの子が未来に誕生するであろう、私の娘であることは避けようのない事実なのだから。


 だからこそ、私はあの子を消滅せねばならない。母親である私がきっちり決着を付けなくてはならない。あの子から目を背けるような真似だけはしない。


 「私を絶望させようとして、卑劣な手段を使ってくることは自覚できました。もうこれ以上に心を乱すような、そんな失態はしません。私はあの子を陰陽師として消滅させるのではなく、あの子を娘と思い、母親である私があの子を安心させて未来に送り返えします。ちゃんとあの子の前で産むと宣言します、名前も決まりました。だから……かくまうとか、見逃すとか、家族になるとか……もう止めにしましょう。あの子はそんな次元の存在じゃない。あの子は悪霊でもあるんです。だから……消滅させましょう」


 私は決意した。奴を倒せるのは、私しかいない。きっとあの子は私が幸福になったことを正しく認知していないだけだ。それとも私の心を覗いて幸せになっていることに気づき、自分の役目が無くなっていることに戸惑っただけなのかもしれない。


 「いや、無理です。今の晴香さんじゃ間違いなく、あの子を倒せません。あの子の神経を逆撫でする結果しか表せないと思いますよ」


 「…………どうしてですか? 私のどこが間違っているというのですか?」


 「晴香さんはまだ……幸せになっていないんです。『幸せ』になりたいと願っているだけで」

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