背後
四話です。この話で過去の内容を終わります
ですが、かなりこの四話、長くなります。11月中に追われればベストって
そこまではさすがにないとは、思いますが
自分の生まれてずっと抱えてきた呪いをようやく解除した私だったが、ただそれだけであの悪霊が消えるとは思はない。私だけが幸せになってもダメなのだ、一刻も早くあの娘に私はこれからの人生を幸せに生きていくということを宣言し、納得して貰わなければならない。
一晩たって、施設に向かう出勤時間にふと思い出した。私とは離れて娘を追った渡島さんは一体どうなっただろう。師匠から受け継いだ悪霊探偵の力はどれほどのものなのか、いまいち理解していないのだが。
横断歩道の中で少し歩くスピードを落とした。そして取り敢えず近況を聞く為に、携帯電話から渡島に連絡してみた。
応答はない、あの男のことだから直ぐに電話に出てくれると思ったのだが。
「まったく、相変わらず使えない陰陽師です」
「いやぁ、申し訳ない」
…………いた、私の真後ろに。面目無さそうにというよりは、恥ずかしそうに。
「えっと……、どうして私の背後にいるのですか? 今、すっごく怖かったのですけれど。どうしてあなたはいつも奇怪な動きをしているのですか?」
「いやいや、わざわざ目の前にいるのに電話越しで話す必要もないかなーって。なぜ真後ろにいたかというと、あの後の晴香さんがお母さんとどんな話をしたか気になって、早起きして迎えに行ったんですけど……既にいなくなっていて……慌てて追い掛けたらこんな展開という」
私の質問を無視して後から聞こうと思っていた話を先に言ってしまった。
「……あの子はどうなりました?」
「すいません、必死で追い掛けましたが、見失いました。やっぱ一時的に探知出来たとしても、人間の脚力で悪霊を追い掛けるとか無理ですね」
何の成果もあげられてないじゃないか、やっぱり役立たずだ。
「晴香さんの方は、何かお母さんとの対話で収穫がありました?」
……改めて、『自分は今まで幸せになってはいけない存在だと思っていたが、それは捉え方の間違いであり、別にそんなルールは無く、これからの人生を幸せになるように努力していく所存だ』なんてあんまり恥ずかしくて言いたくない。
「まあ、それなりには」
「そうですか、良かったです。本当に良かった」
ワザとらしい、全て気付いていたくせに。私が何に苦しんでいて、それを解除できる人間が誰なのかも。いや、昨日のラーメンでの出来事で渡島さんに気付いて貰ったのかもしれない。
「それじゃあ、あとは悪霊に『幸せ』を報告するだけですね。いや、それだけじゃ駄目か。ちゃんと奴の要望に全て答えなきゃ」
そうだな、ってあいつの要望って何だったっけ?
名前が欲しい、育てて欲しい、愛して欲しい、産んでほしい。
「名前が欲しいですか。あの子の名前……」