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達磨

 私の母は、私を振払追継になるように教育をした。しかし、別に私に陰陽師になるように強要していた訳ではない。別に放任主義になっていた訳ではないが、私に陰陽師としての技術を始めから学ばせようとしていた訳ではない。


 私が自主的に母に学びに行ったのだ。陰陽師になる為に。

 それは私が陰陽師になることを夢見ていたからという、そんな希望的な理由ではない。私は物心が付いた時から、自分は振払追継でなくてはならない存在であり、母親に導かれて動き出すのではなく、自分から使命に真っ当しなくてはならない、という見解にあったからだ。


 私は母の苦しそうな姿を見て生きてきた。怪我をして初めて、母が振払追継でなくなった時、正直ほっとしたのだ。ようやく入れ替わることが出来たから、私の母はようやくこれで、振払追継でいなくてもよくなると。


 「ただいま」


 私と母の住んでいるアパートに到着した。玄関のドアは不用心にも開いていて、鍵は必要なかった。まあいくら怪我をしているからとはいえ、陰陽師の家に不法侵入しようものなら、狐火に火達磨にされるだろうが。


 「お母さん、帰りました」


 「……おかえり」


 母は相変わらず、卓袱台から一歩も動いてないかのように、正座して静止している。何をしているかといえば、テレビを見ているだけだ。内容はニュースだった、何の感想も述べることなくただぼーっと眺めている。


 「お母さん、ちょっとお話したいことが」


 「奇遇ですね、晴香さん。実は私も話したいことがあったんです」


 ……、え? この人に何の会話のネタがある?

 家から殆ど出ずに、ただテレビを眺めているだけのお母さんに、一体何があったというのだ。


 「えっと……、お先にどうぞ」


 「はい、それでは。今日のお昼ごろに私達によく似た子供が勝手にあがり込んできて、私を祖母扱いしてきたのですが……。いつの間に子供を持っていたのですか? 晴香さん」


 あの野郎!! そこまで行動範囲を広げてやがったか。まさか既に私の母にもコンタクトを取っていたなんて、あらぬ誤解が生まれたじゃないか。


 「違います、お母さん。あれは私の子供なんかでは……」


 いや、正確には私の子供である。血の繋がった、能力を受け継いだ、容姿が瓜二つな、私の子供である。ただちょっと生まれてくる時期が間違っているだけで。


 「可愛かったですよ。まるで本当の家族のように接してくれました。甘える姿が本当に可愛くて、泣きそうになりましたよ。まあ帰ってしまいましたが」


 申し訳ない、お母さん。そいつは間違いなく悪霊です。あなたも第三世代型の悪霊の内容について話を聞いていたでしょう。まあ気が付きにくいとは思うが。いくら子供でも、勝手に家の中に入れちゃ駄目でしょう。


 「それで、あの子は今どこにいるんですか? おなたの子供は?」


 ……え? お母さん?

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