自称
……この私が幸せになりたがっている?
「なりたいと思ってもなれないのですよ。なってはいけない部類なのです」
「いえ、なれますよ。私にはお母さんがいて幸せです。だからお母さんも私がいるから幸せになったのです」
似たようなフレーズを、最近どこかで聞いたことがことがある。行弓君も私に似たようなことを言っていた。『烏天狗が幸せになるから、自分も幸せになる』みたいなことを言っていた。
そんなものだろうか、幸せとは常に誰かの不幸せを犠牲に成り立っていると思うのだが。誰かといるだけで幸せなんて非現実的だ、流行の韓国ドラマだってそんな恥ずかしい台詞は言わないよ。人気なのか、そのフレーズ。
「質問を変えます、あなたが私の娘であるかどうかはともかく、あなたは悪霊何ですか? もし悪霊の場合、私はあなたが例え本当の娘だとしても、あなたを殺します。いえ、母親と呼ばれたからこそ、私がきっちり処理しなくてはいけないことです。私は陰陽師です、娘が悪霊になったなら、殺す覚悟なんて出来ています」
「へぇ~」
不具合な態度を取るかと思えば、余裕の笑み。
「本当に殺せますかね、お母さん」
瞬きをした一瞬の隙に、間合いを詰められていた。今、悪霊は私の目と鼻の先にいる。瞬間移動……じゃない!! そもそも三次元物質じゃない、私の心の中にある概念的な存在だった。
「殺せませんよ、絶対に」
「そうですね、概念的な存在に物理的な淘汰を狙っても仕方ないですね」
「違います。そんな理由ではありません」
「まさか、『私はお母さんの娘だから』とか言わないよね」
……うわっ、すっごい笑顔、図星かよ。凄まじいな、この娘。さっきから同じことを何回言うんだよ。もうその『お母さん大好きアピール』は聞き飽きたよ。
この悪霊を倒すには、方法は二つ。私が死ぬか、私が心に打ち勝つ、つまり……幸せになれない人生を理解し、納得する。思考と精神を完全に一致させ、本物の機械になる。この二つしかない。
成功すれば機械、失敗すれば死刑。二つに一つだ
「だから……お母さんは私が守るから死なないし、機械になんてさせないし、幸せになるんだよ。私と一緒に。まあ、お母さんが完全に幸せになったあたりが、私の旅立ちの日になるんだけど。ちゃんとお母さんのことは幸せにして出ていくから安心して。育ててくれた御恩はしっかり親孝行するよ……おっと、タイムリミットだ。じゃあね、大好きなお母さん」
タイムリミット? そんなものがあるのか?
別に時間制限という意味ではなく、ただ私が始めに呼んでおいた救援部隊が到着しただけだった。私の元に辿り着く前に、悪霊は霧になるようにして消えた。私の心の中に入ったのか。
「追継さん、大丈夫ですか」
「はい、奇跡的に無傷です。睨み合いだけで交戦にはなりませんでしたから。すいません、逃げられました。追跡をお願いします」
……いや、第三世代型に追跡なんて意味がある訳がないだろう。陰陽師として身に付いた、いつも通りの反応をしている。
無傷か……、本当に攻撃してこなかったな……あの自称娘の悪霊。
これから私は、あの悪霊を倒す為にどう動けばいいのだろうか。
番外編②、終了。
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