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私は自分のことを、任務に真面目な人間だと自負しているが、だからといって休日出勤したがるほど、忠誠心溢れる元気マンではない。寧ろ結構、疲れやすい体質なのだ、無駄な労働は出来るだけ避けたい。

 しかし、確かに橇引行弓を一人で烏天狗の住む山に登らせるのは、承認しかねない、つまりだ……私以外の誰かが行弓君をしっかり止めれば問題ない訳である。


 だから……。


 「貴方がして下さい、それが明日が通常出勤である陰陽師の仕事です。良かったじゃないですか、仕事をサボれる大義名分が出来上がって。どうせ『説得に失敗したー』とか言って、一緒に山に登る気なんでしょうけど」


 「え? 俺は行きませんよ。さっき追継さんの手作りカレーが食べられるとか言いましたが……、実は俺は明日に特別任務が入っていて。凄く行きたいのですが行けない訳ですよ。行弓君にも俺が都合が着く日にちにずらしてくれるように頼んだんですが、『関わってくるな!! 』の一点張りで。俺か追継さん以外に彼の烏天狗に会いたいという事情を知る人はいない。行弓君は大人を連れて登山する気はサラサラありません、このままじゃ確実に一人で登ります」


 ……事情はだいたい分かった。

 なるほど、私はとことん着いていない。橇引行弓を陰陽師にし妖力さえ与えなければ、こんな事態にはならなかった。陰陽師でない人間にはあの山を登ることは出来ない、そういう結界が張ってあったのだ。いや、あのまま行弓君の記憶を消しておくのが一番の得策だった。これは私の失態かもしれない。


 「……分かりました。……でも……」


 「はい?」


 「今度、渡島さんの仕事が休みの日に、私と休暇を変わって下さい。私は休日を台無しにするのだから、これくらい当たり前ですよね。これを約束してくれるというのならば、考えてあげないこともないですよ」


 「げっ!! マジですか!? それはちょっと……」


 「行弓君を置いてけぼりにしますか? それとも特別任務とやらを放棄しますか? 出来ませんよね、諦めて仕事を頑張って下さい」


 日頃からサボりまくっているのだ、これくらいの罰は甘んじて受けて頂くとしよう。そもそもこの男の自業自得だし、計画性が無い自分が悪いということを少しは自覚して貰おう。


 「うぅぅ、でも…けど……だって……、分かりました」


 久しぶりに気分が良い、この男が一分でも長く仕事をしなければならない、というシチュエーションが嬉しくて堪らない。


 「あっ、そうだ。言うのを忘れてた。追継さん、これからの登山ですが、烏天狗もそうですが、それ以上に気を付けて下さい」


 「? 一体、何にですか?」


 「この町に今、潜伏しているという悪霊です」

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