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休日

振払追継こと音無晴江は怪我で一時、現場から脱退した。私、音無晴香はその母の影武者として笠松陰陽師機関に潜伏し、何食わぬ顔で母の名義を使い仕事をしている。

 私と私の母は妖狐の式神を所有して、その変身能力を基調としている。

 私達は変化を利用する実態の無い、謎な陰陽師としてその定位置を保っている。


 そんな私だが、最近困り果てている存在がいる。渡島搭吾という男のことだ。

 サボり常習犯、勤務態度は不真面目、使命感、責任感ゼロ。

 

 そんな奴のくせに……悪霊の三段階進化なんてことを気にしている。

 気にしているのかなと思えば、あの熱弁から一週間くらい時が経つが……何も起こらないし、何も言ってこないし、いつものようにニコニコ笑っている。

 もう忘れていいのだろうか? この一件。

 

 そんな私の波乱に満ちた二十代の人生だが、ちゃんと陰陽師の機関にも休日という物がある。この疲れ切った体を癒す大切な一日だ、折角の日曜日に貰えた休日である、ゆっくり母と買い物にでも行きたいと思い、機関の施設から自宅のアパートまで足を運んでいると……またあの男が現れた。


 自宅の丁度前の電柱に腕を組み、健やかなイライラする笑顔で私を向えてくれた。不愉快以外の何物でもない。腕時計を確認するともう時計は九時だ、夏とはいえ辺りも暗くなっている。


 「晴香さん~」


 「そっちの名前で呼ぶな!!」


 「夕食を一緒に食べに行きませんか。お母様も一緒に。勿論、驕りますよ」


 迷惑極まりない。私は目立って生きる訳にはいかない、影の存在だ。

 この男は私を何だと思っているのだろうか。確かに仕事の関係で時間を共にすることが多いが、仕事が終わってからまで付き纏ってくるのだろうか?

 これって、ストーカーって奴なんじゃ。


 「それで……どうして私があなたと食事をしなきゃいけないのですか」


 「俺が君を愛しているから」


 「……はぁ?」


 「ライクじゃなくて、ラブの方で」


 「死ね」


 そろそろ警察にストーカー届けを出そう。


 「ちょっと待って下さい。お願いがあってやって来たんです。この間の橇引行弓が明日、ついに陰陽師になった記念にあの烏天狗のいる山に行くそうなんです」


 「そうですか、じゃあ頑張って止めてあげて下さい」


 「あれ? いつもの追継さんじゃないみたいですね。いつもなら『それは大変、何が何でも私達が止めるわよ』とか言いそうなのに」


 「私は明日はオフです。私だって休憩したい時だってあるんです。それに強引に橇引行弓君を陰陽師にしたのは貴方じゃないですか。責任を取って、自分でどうにか彼を止めて来て下さい」


 「えぇ~、追継さんは登山とか好きじゃないですか? キャンプとか楽しいですよ。一緒にバーベキューしましょうよ。いや、晴香さんの手作りカレーが食べたいなぁ」


 行弓君を止める手伝いじゃなくて、ただ遊びの誘いをする為にやって来ただけかい!!

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