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 妖怪の恨みの対象は察しが着く。私達、陰陽師に対してだ。彼らは実に千年の時を奴隷として利用されてきた。それはもう尋常じゃない怨念や復讐心が芽生えているだろう。別に捕獲してある妖怪だけではない、捕獲していない妖怪だって仲間を奪われた悲しみや、過去の因縁という物は確実に存在するはずだ。


 もし渡島さんの言うように、悪霊が心に寄生するという進化を遂げ、その寄生した人間の怨念を吸い取り、力を肥大化させるというのなら……。


 「妖怪は人間と違って貧弱ではありません、普通に動きまわるだけでも、十分な凶器になります。本来の妖怪はそんなことしませんが、悪霊に心を支配されてしまっては……収集が着かなくなります。事態の深刻さを理解して頂けましたか、追継さん。いや、音無さん」


 理解しろと言われても……そんな空想な話をどう信じろと言うのだ。

 仮に信じたとして、私一人に何が出来るというのだ。


 「打開策が半分あるとおっしゃいましたが……。どうすればこの危機的状況を打破することが出来ると思いますか?」


 「そうですね。正直に言わせて貰うと……俺にもよく分からないんです。今回の悪霊の撃退方法が。何というか……奴等は本当に最強になるんじゃないかなって感じです。弱点と言っても……その寄生された人間を殺すって手しかありません。しかし、お兄さん的に言うならそんなのもう奴等の思う壺って感じかと……妖怪は殺せないし、死なないし。ただ、一つだけ方法があるとすれば……」


 「一つだけ方法があるとすれば……」


 「『心に打ち勝つ』ことです」


 ……心に打ち勝つ……。


 「自分が思っている心の弱さを克服すればいいんです。自分自身を縛る怨念を否定すればいいんです。良くあるでしょう、『自分にだけは負けるな』って。あれを比喩表現や叱咤激励ではない、本当に実行すればいいんです」


 ……それだけ? 


 いや別に絶望したかったとか、そんな訳じゃないけど……。

 随分と分かりやすい解決方法だな。特別な儀式とか、数え切れぬ生贄とか。

 そんな物ではなく……ただの根性論。


 「えっと……、簡単ですね」


 「簡単じゃないですよ。一人じゃ絶対にこの呪いよりも恐ろしい毒からは、逃れられない。自分に…まして心に勝つなんて…。公務員試験の百倍は難しいですよ。それに被害対象は妖怪もだ。この世界に気力が幻滅しかけている妖怪が、一斉に暴れ出したら。そこからさらに悪霊の進化を助長したら……。俺達に勝ち目は無い」


 だから……私にどうしろと言うのだ。そんなどうしようもない世界の話を言われても仕方ないだろう。もし今の話が全て本当でも、私はただの陰陽師だ。世界を救えなどしないただの女だ。


 なのに……。


 「ですから……追継さん」


 急に渡島さんは卓袱台から体制を崩し、私の正面に立った。


 「俺と協力して世界を救って下さい」

番外編①、終わり

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