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観念

 「『この世に実在しない何か』です」


 「は?」


 この世に実在しない何か……って何?


 「だから観念的存在って意味で、ウイルスと言った方がいいのかな。奴等の新しいあり方は感情介入なんです。人間には必ず感情という物があります、いろいろな感情という物が。その中から憎悪という一部分を残して、死すとも魂のみ死なずに卵になって孵化し復活する、これが今までです。だが二世代まではあくまで自分だけの怨念だけだった。今回からは違う、奴らは他のまだ生きている人間に寄生し、憎悪の感情を吸い取りつつ成長する」


 感情介入? それは、憑依のことだろうか? 確かにあれは他の第二者を巻き込んでおこなう、悪霊の上等手段である。体を乗っ取り、精神を操り、自分の死への道連れとする。だがこんなこと、当たり前ではないか。指して改めて言うことではない。この憑依の技術は妖怪にすら応用されているくらいだ。


 と、質問する前にお母さんの口が開いた。


 「それは二世代の憑依と、どう違うのですか?」


 「はい、全く本質から違うといっていいでしょう。『憑依』という悪霊の行為は、多くの人が誤解をしているのですが、あくまで同一化に過ぎないんです。別に精神を支配する訳でも、体の神経を全て乗っ取る訳でも、心を奪う訳でもないんです。居座り合体した状態なんですよ。だから『お祓い』で祓えるし、自力で呪いを解くという話が世間にあるのです。ただ背中に乗っているだけなんです。むしろ憑依という行為は、一般人ならともかく我々のような陰陽師には無駄な足掻きです。『人質』としての利用価値があるにせよ、その憑依という行為自体で力を持っていかれる、その上で人間と合体した状態からさらなる技を繰り出すのは至難の業です。結局、自分で分解する破目に陥るだけなんですよ」


 確かにそうだ、実力者なら妖怪に憑依しているかどうかなんて一瞬で分かるし、動きが鈍るのも分かる。一般人相手ならそれだけで十分、怖いのだろうが。


 「だが、今回は違う。祓えないし、倒せないし、そもそも三次元物質でもない。簡単に言うと、前回までは肩の上の操縦桿に乗るのがやっとでしたが、次からは心の中、いや感情の中に居座っているのです。しかも悪霊は寄生した人間の怨念をも吸い取ります。例え復活開始状態は今までの強さと変わらなくても、そこからまたさらにぐんぐん大きくなっていく訳です」


 そんなことが……あるのか? 悪霊が千年もの期間に敗北が続く状態で、そんな進化を遂げたとは到底思えない。私だって陰陽師だ、元の機関でもこの笠松陰陽師機関でも悪霊退散に務めてきた。憑依した人間にも遭遇したことはある。が、そんな奇妙な変化を持つ悪霊を私は見たことが無い。


 そしてもう一つ気になることがある。


 「それじゃあ、今回の悪霊って倒しようが無いじゃないですか。感情や心をどうやって殺すっていうのですか? そんな観念的な触れも出来ない存在とどうやって戦えばいいんですか……」


 「……攻略方は半分は分かっています。……それよりも……もう一つ奴等の強味といいますか、進化の特徴といいますか……」


 まだ、あるのか!!


 「奴等の寄生する相手です。人間相手だけではないということです。一世代目のモチーフ、妖怪相手にも寄生します」

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