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弱味

 「それで、私の弱味を握っていることで……何を脅迫するつもりですか?」


 「そうですね、……ちょっとだけ見せて貰えれば……いや何でもありません」


 何を開示する要求をするつもりだったんだ!!


 「渡島さん、私のいる前で娘にセクハラを要求しないで下さい。お母さん、貴方を殺しますよ」


 「ははは、冗談ですって。ははは」


 お母さん、その言葉はとっても嬉しいけど……久し振りに親子だなぁって噛み締めたけど……殺すってさぁ。そんなラーメンを啜りながら言う台詞じゃないよね。


 「あのっ、まずはお礼を言わせて下さい。橇引行弓君を申請してくれて、ありがとうございました。我が儘を聞いて貰ってすいません」


 「別に私は行弓君の陰陽師の才能を認めたから通した訳ではないです。あのままじゃ直ぐに解雇になると思いますよ。あの子には伸び視路が無い」


 渡島さんはこの言葉を聞いて、困った顔をするどころか笑っている。


 「何か可笑しいですか、あの子にしかない才能を私は見抜けてなくて、貴方だけが把握していることが、そんなにも嬉しいですか」


 「違いますよ、俺は指揮官にも教育者にも向いてない人間です。別に彼の才能を見出せたとか、そんなカッコいい観察眼はないですよ。ただ、あいつの言葉を信じてみただけです。あいつは確かに陰陽師での直接的な才能は無いかもしれないけど、心だけは最高の物を持っていたんです」


 心、それは私に無い物だ。陰陽師は機械であれば、機械である程良い。本家の言う事を忠実に聞き入れ、機関の駒となって任務遂行を厳格に守る。この作業に心情などという物はむしろ邪魔で仕方ない代物だ。その点、今日に出会った日野内飛鳥は渡島さんの言うメンタル面でも素質があると思う。


 だが、行弓君は真逆だ。メンタル面でも評価出来ない。感情的なところもあったし、素直な性格でもない。彼のどこに協調性があるのだろうか。


 「ずばり、妖怪を愛する心があったことです」


 …………?


 「妖怪を愛する心?」


 「そうです。お兄さん的に言うなら、これからの陰陽師の世界には愛が必要不可欠なのです。妖怪と歩み寄り、お互いを信頼し合い、共に戦うパートナーとして共存する。これがお兄さんが目指す最高の陰陽師のあり方なのです」


 馬鹿だ、このお兄さんは本当に馬鹿だ。

 妖怪と分かり合うことなど絶対に出来ない、奴らは一歩間違えれば悪霊と変わらぬ身。人間に害をなす存在だ。それを加味した上で、捕獲し、縛り、鍛え上げ、悪霊退散の道具としてきたのだ。


 今更、歩み寄るなど向こうとしても嫌だろう。今まで奴隷のように使用してきた連中を『倒せない敵が現れたんだ。仲良くなってあげるから、今まで以上の力で戦って』などと言う要求を呑むとは思えない。

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