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逸材

 集まってくれた小学生の数はかなり多かった。表向きは只の近所の神社がするお祭りみたいな物だから。実際に子供に神具を触れさせ、適性のあると判断出来る逸材のみに、バレないように後から引き込む流れだ。


 私達の任務はガイドのようなもの、そしてスカウト。他にも影で審査をしている仲間もいるのだが、私たちが一番間近で子供達を観察する為にこの作戦で一番重要なポジションだ。今はその子供達の通るルートの最終確認をしていて、回るコースや立ち止まって説明する箇所、実際に触らせる個所などの下見などを行なっている訳だ。


 だが、ここにいる連中の大半は適性が無いだろう。陰陽師の能力とは一族の力といっても、変わりはない。仮に適性があったとしても、始めから用意された式神もなければ、付与された程度の妖力は、オリジナルと比べて微弱になる。陰陽師の世界は新参者には厳しいのだ。


 カモフラージュに屋台を並べ、軽いお祭りのような風景を醸し出している。陰陽師に選ばれた方が幸せなのか、それとも陰陽師になどならない方が幸せなのか。私的には後者だと思うのだが……。


 「いやぁ、お兄さん的には、こういう祭りとか大好きでして」


 日本語の使い方、おかしいだろ。あとお祭り気分でいるな、こいつ。仕事の中だというのに。こんな所に連れて来た私が間違いだった、部屋に括り付けて事務作業をさせるべきだった。


 「……もうすぐ、任務開始です。気を引き締めて下さい」


 「りょうか……やべぇ。焼きそばが俺を呼んでいる」


 「気を引き締めて下さい!!」


 「うおぉう、そんなに大きな声を出さなくても。びっくりしたじゃないですか。お兄さん的に言うなら、そこは『お前にはもっと大切な物があるだろ』って優しくさとしてくれる方がポイント高いかなぁーって」


 「……、行きますよ」


 「はい!! って、置いてかないで下さいよー、一緒に焼きそばを食べてから行きましょうよ~」


 こいつ、早くまた転勤すればいいのに。……ってあれ?


 「何してるんですか?」


 「え、立ち食いですけど。結局お昼ご飯抜きじゃないですか。ちょっと買ってきたんですよ。勿論、追継さんの分も買ってきましたよ」


 「あの一瞬で焼きそば買ってきたんですか!!」


 「はい、だってお腹空いたし」


 と、言いつつ私にもう片方の手で持っていたビニール袋を預けた。 

 この男、何度言ったら分かるのだろう。まだ仕事中、これから大事な任務。

 なのに許可も無く、何故歩きながら食事をする気になるのだ。馬鹿げている、いやもうそんなレベルじゃない。駄目だこの男、早く何とかしないと。


 「あの……これから……大事な」


 「やべぇ、あれ!! まさか……林檎飴!! こんな場所で我が宿敵に出会うとは……、ゴクリ(唾を飲む音)」


 「渡島さん?」


 「俺が小学生の時にです。俺は奴と出会いました、奴は俺に何も言わずこう訴えてきたのです。『食えるものなら喰ってみろ!!』とね」


 「いや……訳分かりませ……その左手に持っている物は何ですか?」


 「あぁ、林檎飴です。ちょっと買ってきました」


 「あの一瞬で買ってきたんですか!?」


 「はい。勿論、追継さんの分も」


 気付くといつの間にか焼きそばの皿の上は空になり、渡島は飴をさぞかし美味しそうに舐め始めた。


 「いいかげんにして下さい!!」

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