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神聖

 カワウソはもう鳴かなくなった。リーダーぼ式神は角を振り降ろし、カワウソを地面に叩きつける。カワウソは何の抵抗も無く、地面に倒れた。腹部から鮮血が漏れる、目は開いたまま。死んだ? まさか……。


 「なっ、……何も殺さなくても……」


 「……、まだだ。奴はまだ死んでない」


 「だって……、こんな……」


 奴は確かにあらぬ力とやらに、身を委ねたのかもしれない、その行為がどろほどの罪かは分からないが、奴はこの場に助けを求めてやってきたのだ。俺達に助けて貰う為に。然るべき罰は受けるべきなのかもしれないが、操られているだけで、死刑なんて……,もっと他に策があったんじゃ……。


 「行弓君、危ない!!」


 「うぇ?」


 いきなり五百機さんが飛びかかってきた。椅子の角に背骨をぶつけた。痛い……、折れたかと思った。


 「い、痛いじゃないですか!!」


 五百機さんは何も答えない。その変わり、俺に人差し指で部屋の天井に視線を向けるように指示した。そこには……。

 黒くて長い髪、前髪で目は完全に見えない、そして黒髪の先には黄色い角が着いている。白い服を着ていて、手には血の跡が。


 「悪霊だ、間違いねェ」


 しまった、落ち着いて考察している暇はなかった。本体まで死んだ、なんて保証はどこにもない、ちょっと考えたら、すぐに分かったはずなのに。


 「ダモンは鶴見ちゃんのカバー、五十鈴ちゃんは行弓君のガードをお願い。それ以外、何もしなくていいから、依然続行で僕が戦う」


 リーダーの両手から新たに二体の式神が投入される。

 今度は、白い鹿と……黄色い鹿。


 「角端かくたん索冥さくめい麒麟きりん。追い込むよ、逃げ場がないように、囲んで!!」


 麒麟だと、キリンってあの麒麟かよ。

 合成獣型の妖怪、竜の頭、牛の尾と馬の蹄をもち、煌びやかな角。

 他の三体も形状は同じだ、違うのは体毛と角の向いている方向くらいである。あの鳳凰や応龍と並ぶ神聖な幻の妖怪であり、その鳴声は音階に一致し、歩いた跡は正確な円になり、曲がる時は直角に曲がるという噂がある。


 「冗談じゃねぇ、レアとか捕獲不能とかいうレベルじゃねーぞ」


 そもそも、麒麟って逸話で絶対に捕獲出来ないって話じゃなかったっけ?


 「御免、行弓君。これらの妖怪は捕獲してない。また時間が出来たらそれもお話するよ。でも…今は…、お前だ」


 悪霊はその場から一切、動かない。いや、違う。動かさないのだ、リーダーが。この鬼神スキル、見たことあるぞ。


 「鬼神スキル『宵氷』。逃がさないよ。」


 悪霊も必死にもがいて抵抗しているようには見えるが……何の効果もないようだ。それにしても久し振りだ、悪霊を見るのは、これで二回目ということになる。悪霊と戦うところを見ることも。


 「悪霊退散ってね」


 三体同時の角の突進に、逃げ場など始めからない悪霊は、そのままなすすべも無く、灰になるように消滅した。


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