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破棄

  「逃げてきたって、機関の式神が契約者から脱走してきたってそういうことなのか?」


 「……うん」


 思い出した、俺がまだ疑問に思っていたことを。

 契約破棄の方法、俺は地元の機関に契約破棄の方法について『絶対に不可能だ』、と習っていた。しかし、松林は『式神解放』を手持ちの陰陽師を倒すことによって成し遂げていた。村正先生もダモンとの戦闘で、その実態を目の当たりにしたと語っている。だが、陰陽師を病院送りにするくらいで、式神を妖怪に戻すことが、果たして出来るのだろうか。


 いや、今回はそれ以前の問題である。

 このカワウソは自力で脱走してきたと言った。誰か第三者の力を利用することなく、契約を破棄してみせたということになる。これを異変と言わずに何と呼ぶって話だ。


 「詳しく教えてくれないか? お前の陰陽師から脱走したルートを」


 「えっと、僕にもよく分からない。ただ、お札から勝手に体が出て、あたふたしていたら、主様あるじさまが怒って僕を叱ろうとしたから、怖くなって逃げ出して、逃げ切ったと思ってふと気が付いたら……契約が消えていて……。僕にも何が何だかさっぱり分からないんだ」


 体が勝手にお札から出たか、そんな現象も聞いたことがないな。前代未聞だ、だがこの妖怪が嘘を言っているようには思えない。声が震えていたのは、主から逃げてきた恐怖から、クッキーを奪ったのは俺たちの注意を向けるため。そんな奴がこの状況で満足に虚言を吐ける訳がない。


 「……それで、俺たちの機関に逃げ込んで来たのか」


 カワウソは小さく頷いた。取りあえず、一連のこいつの行動は理解できた。次は、契約破棄についてである。丁度いいことに、それに詳しそうな男が、俺の後ろに立っている。


 「ダモン、式神との契約解除の方法って分かるか?」


 「……勿論さ、松林君が私に教えてくれたんだ」


 やはり、松林仕込みの手品だったか。まあ、奴がどうやってこの方法に辿り着いたのか、奴が笠松町の陰陽師を辞めた理由に直結しそうで、それも凄く気になるが、まずはその方法そのものについて聞かなくてはいけない。


 「単純に言うと、妖怪を半悪霊化させる技術さ」


 半悪霊化? 言うまでもなく、初めて聞いた単語だ。


 「そんな……悪霊化って」


 「……松林君の研究テーマだよ。ほら、この前君と松林君が決闘をおこなったじゃないか。その戦闘の最後に式神と合体みたいな現象があったのを覚えているかい?」


 勿論だ、あんな屈辱を忘れる訳がない。

 確かに奴は式神と合体し、信じられないパワーを手にしていた。憑依装甲とか言っていたか。だがそれと、契約破棄と、どう関係があるのだろう。

 


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