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餌食

 「男装?」

 

 一体、何のことだ? みたいな不思議そうな顔をした飛鳥に対し、『うちのリーダーは男装趣味の変態で、自分以外の周囲の女性にも、男装を強要してくるんだよ、因みに既に鶴見の奴は餌食だよ』なんて言えない。


 でも現状を打破できる訳が無く、今更どうしようもないので……。


 「ただいま帰りました」


 飛鳥には申し訳ないが、そのまま帰るしかなかったのである。


 「おかえりー。あっ、行弓君、お疲れ様。丁度ね、鶴見ちゃんとクッキーを焼いていたんだけど、試食する?」


 俺が入るなり、すぐさま駆け寄ってきたリーダー。一切、貫録を感じさせない剽軽さだ。手には、パンなどを焼くとき専用の、グローブみたいな物を、両手に着けていて、腰にはエプロン。これで男装なんてしていなかったら、様になっていただろうに。なんか、全機関から追われている、無名の組織とは思えない緩さだな。なんだよ、クッキーって。凄く暇そうだな。


 「帰りました、報告します。本家の機関の醜態を録画した映像と音声は、既にダモンの方に引き渡しました。そして、阿部清隆の手持ちの式神の捕獲に成功しました。検証した結果、間違いないと思います。どうぞ」


 そう言って、大事な戦利品をリーダーに渡した。


 「おー、そこまでは難しいかなって思っていたけど……やはりあいつの愚鈍ぶりは、治っていなかったか。うん、好都合、好都合。ご苦労だったね、二人とも、お疲れ様だよ」


 やはり……リーダーは本家について知っている。

 俺の予想が正しければ、元関係者であるような気がする。


 「それとー、あのー」


 気まずそうな顔をしている俺と五百機さんの間から、飛鳥がヒョッコリと姿を現した。飛鳥は百鬼夜行のリーダーを前にしてもなお、依然とうっすらとした希薄な目をしている。恐怖とか、不安とかないのか?


 因みにリーダーはというと、いつもの営業スマイルで。


 「初めまして、百鬼夜行の頭領をやっている者です。よろしくね」


 と、自己紹介していた。固く一方的に握手を交わすと、キラキラした目で飛鳥の全身を観察し始めた。五百機さんが、『始まったよ』という呆れ顔をしている。分かります、その気持ち。


 「行弓君、おかっ…げ!! 日野内飛鳥」


 キッチンに入ると、そこには優雅にイヤホンを耳に着けて、コーヒーと音楽を楽しむダモンの姿と、相変わらずぼたおモードが解除されない鶴見がリーダーと同様にクッキーを作る恰好でいた。あの忌々しい松林の姿はいないようだな。


 「あ、鶴見牡丹さん。先日はどうも」


 飛鳥は鶴見だと一瞬で見抜いた、結構分かりにくい出来栄えだと思うのだが、飛鳥には通用しなかったらしい。


 「ねぇ、飛鳥ちゃん。男装に興味ない?」


 ついに魔の手が飛鳥の元にまで迫り始めた。

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