朝練
第二話です。今回、ミスが多くて三回書き直しました。
早朝、六時に目を覚ました俺、橇引行弓。眠い、だるい、頭が痛いの三拍子が揃っているが学校に行かなければならない。俺は陰陽師である以前に高校生なのだから。
「おはよう行弓ちゃん」
目の前から声がかかる、つい先日に俺の式神となった火車である。因みに俺が契約したのはこの火車だけではない為、この日本に存在する全ての火車の主ということになる。特に命令することとかないけど。現在、車輪モードで空中に浮いている。
「毎朝、来なくていいって言っただろ。俺は主従関係とか本当に無理なんだって」
制服を着ながら眠たそうに言ってみる。
「そうだけど、一応。私からも報告があって。実はそろそろ本業に戻らなきゃいけないんだ」
「この前のマダム達がやっていた、あれ?」
「そうそう、それでね。この前火車の一族みんなで集まって、話し合ったんだけど。今度から交代で行弓ちゃんの護衛をすることになったんだ」
それはそれは、俺抜きで大層な会議だな、それ。制服を着終わり、今日の学校に行く用意をする。
「いらねーよ、護衛なんか。別に俺は妖怪や悪霊から狙われてない。他の流派の陰陽師とも知り合いなんかいないしな。狙われるなら、幹部のエリート共だろ。俺みたいな、本当に陰陽師かどうかも怪しいような奴、襲われたりしねーよ」
「えっ、でも……」
学校へ行く支度が完了した、早く朝食にありつきたい。
「大丈夫だって、この町ほど安全な場所なんかないよ。もし本当に危険が迫ったら真っ先に召喚するから」
まだ心配そうな顔をしている火車を置き、俺は部屋のドアを閉めた。
俺の実家は学校から決して遠くない、なのになぜ六時という朝起きるのが苦手な人には絶望的な時間に起床したかというと、日本の部活に朝練という忌まわしい風習があるからである。
「おはようございます、部長」
「あぁ、おはよう行弓君。まあ座りたまえ」
二年生の先輩、久世謳歌部長。整った顔と真っ赤な髪、部室内限定でみられる黒いヘッドフォンが特徴だ。なにやら真剣な顔でパソコンの画面を見つめつつ、キーボードから火が出る勢いで文字を入力している。俺には一回も顔を合わせない。
「確認です、部長。この部はパソコン部でしたっけ?」
「そんな訳ないだろ、このパソコンは私の私物だし、ここはパソコン教室ではないだろう」
その通りだ。だってこの部屋にあるのは、見るからに怪しい石像や、謎の魔導師が残したような紋章が模様になっているただのカーテンとか、大切に飾っている透き通った水晶とか。
「では部長。我々はいったい何部ですか?」
「決まっているだろう。オカルト研究部だ」
「どこの世界に朝練と称して集まっているオカルト研究部があるんですか!!」
「ここにある!!」
今、部長がパソコンでやっていることはホラーゲーム作成というものだ。機械に疎い俺にはさっぱり分からないが、真剣な表情から推測すると、大変な作業らしい。
「ゲームを作っているなら俺はいらないでしょう。教室に行きますよ」
「まあ、待ちたまえ。行弓君」
今日で始めて部長が顔を上げ、俺に向かって笑顔を見せた。
「久しぶりに面白い情報が入った」