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二の次

 「貴様、私が一体誰か分かっていて、そんな生意気な事を言っているのか!!」


 もしかしたらリーダーは、この衰退した阿部家を知っていたのかもしれない。

 だから俺をここに差し向けた、俺にこの事実を見せるのが目的で。


 じゃあリーダーは一体誰なんだ?


 「もう我慢ならない、おい誰かこの者たちを縛り上げよ!! 打ち首じゃ」


 ……こいつの言葉に誰も反応しない。誰も動かない。


 「ええい、何なんだ!! この無礼者は処刑せねばならんのだ!!」


 悲しい虚空だ、野望ではなく、悪情でもなく、ただ能力の無さで見限られた男の姿。

 哀れだ、この男は白くもなく、黒くもなく、ただただ何の意味もなく腐っている。……いや、これが陰陽師の全ての現状。


 数千年にも及ぶ『正しさ』と思ってきた面影が、霧散となった。『間違っている』という結論を、最高責任者であるこの男自身が言動で示してしまったのである。これが悪霊から人々を守った英雄の末路だ。


 「統領様、お考え直し下さい」


 後ろにいた近衛隊の一人である男が恐る恐るの声で、言った。


 「何をだ、こいつらの命か? 死刑という判決は変えん」


 「では統領様は一体何の罰で彼らを裁くとおっしゃるのですか?」


 「無論、この俺様に無礼な態度を取ったからだ」


 「……犠牲になった者達の為ではないのですか?」


 「それもある」


 それもあるって、つまりは二の次って意味だろ。

 

 「俺様は罪を犯し、償いに来たお前達を罰してやる為に、この場を設けたのだ。そんな人の親切を仇で返した、素直に土下座をしなかった。貴様等は反省していない、だから死刑なのだ。殺される意味が分かったか、愚図共」


 阿部は一旦、布団に寝そべると、偉そうに語り出した。


 「俺様は指揮官だ、指揮官の役目は部下の調教だ。俺様がいるからお前達は正しくいられる。俺様が力を分け与えているから、お前達は戦える。俺様がこの場にいるから、世界は平和だ。俺様は存在するだけで救世主なのだ」


 ……真顔で何言ってんだか……。


 「だから俺様の判断は全て正しい。お前達の行動は全人類に対し、害を放っていることになる。細かい状態の把握など必要ない。私を否定することは、幼稚な戯言に過ぎない。そして貴様らのような害虫を排除することで、俺様はまた世界を救うのだ。正しいのは世界に最も近い存在である俺様だ。分かったな、害虫」


 この言葉を最後に俺の何か自分の中の大切なブレーキが壊れた。


 「……あのぅ」


 俺は正座の状態から頭の先にしか届かないくらいの高さで、手を挙げた。

 まるで、学校の先生が出した問題の解答を知っていて、発表しようとした時みたいに。恥ずかしく、でもカッコつける為に。


 「何だ、ガキ。命乞いか?」


 第三鉄則……『一回だけ質問することを許す』。


 「貴方にとって、統領様にとって妖怪は何なんですか?」


 


 


 


 

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