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暴君

 連れて来られたのは、大広間だった。

 畳に障子と和風な設計だが、清楚なんてイメージは全くない。

 全て金色なのだ、障子も、置物も、天井の模様も。その光に反射して、畳まで光って見える。大変見応えはあるのだが、ここまでいくと嫌な感じがする。この部屋は、華やかで豪華ではあっても、美しくはない。


 そして、その部屋の奥に奴がいた。年齢は三十代くらいだろうか。漫画本や空き缶や、お菓子の袋を散乱させ、布団の上で寝そべっている。今日始めてお会いする全機関の中でも一番偉い人な訳だが、その容姿は予想を遥かに超えていた。体つきが大きい、ガタイが良いという訳ではなく、ただの肥満症だ。唇はぶよぶよとしていて、見ていて気持ち悪い。おまけにパジャマのままの姿で、紙もぼさぼさ。

 顔はアヒルで、体系は豚、恰好はトドって感じだな。

 しかし、周りには将軍の護衛の如く、武士の恰好をしたチョンマゲ軍団が、後方に身構えている。五十人はいるだろうか、目でみただけでも、なかなかの猛者の集団であることが分かる。


 「あぁ、来たの~」


 てっきり俺はスーツを着ていて、常にカッコいいとダークの融合みたいなオーラを出しているイケメンが来ると思っていた。少なくともこんな醜い生物が現れるとは、何というか絶望した、幼少期の時に俺はこんな奴の下で働いていたのか。


 「はぁ~、困るなぁ」


 大欠伸のあと、ようやく布団から腰を起こし、こっちを向いて胡坐をかいた。

肩にはまだ布団が掛かっている。そして口を開いた。


 「俺様が阿部清隆あべきよたかだ。まあ、そこに土下座しろ」


 ……? おい、今こいつ何といった?


 「おい、ゴミ共。俺を誰だと思っている。悪いことをしたら、まずは土下座だろうが、死にたいのかぁ?」


 悪いこと? 話し合いではないのか? だいたい初対面の相手に第一回目の要求が土下座? どんな世界の暴君だよ、俺はお前の奴隷や召使いじゃないんだぞ。馬鹿にしているのか。そもそも悪いことって何だよ。


 「悪いことをしたらごめんなさいだろうが!!」


 三歳児か、こいつ。最近の教育しない親から育った、駄目人間か。

 俺は散々、捕獲不能レベルの妖怪を『ニート』呼ばわりしてきたが、こいつは本物のニートなんじゃないのか。


 俺も飛鳥も五百機さんも何も言わずただ黙って、奴を見つめている。ちなみにあのデブの後ろの連中も全く動かない。ただ黙って俺達を睨み着けている。


 痺れを切らしたのだろうか、枕を持ったかと思うと、投げつけた。

 運悪く俺の頭に激突。全然、痛みはなかったが、非常に屈辱だ。

 そしてこの一言。


 「悪いことをしたらごめんなさいだろうが!!」


 ……付き合ってられない。


 


 


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