表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
115/462

門番

『邪魔だ、消え失せろ』と仕事中の従業員の方々に、遠回しに言われた俺達三人は時間もないので、俺の反応も待つことなく、目的地の門の前まで来ていた。

 結局、何もかも結論が出ずにぐだぐだなまま、飛鳥も五百機さんも不満と文句を胸に秘めて、荒そうことを避けることのみに全力を注いで、この場に辿り着いた訳である。この二人の不機嫌そうな顔といったらもう……。


 「えっと、到着ですね。御門城」


 「そうだな」


 「そうですね」


 二人の反応が薄い。こんな重要な任務の前にパーティのコンディションは最悪だ。俺、生きてこの城を出られないかもしれない。任務とは全く別の意味で。

 

 巨大な俺の身長の何倍もある木製の門に、何か中華風味な長槍を持っている門番の男が二人。これは式神ではなく、人間である。

 一方は漁師のように頭にハチマキを巻きつけていて、落ち武者のような江戸時代初期の戦闘服をしている、そして髪の毛が無い。もう片方は……一般サラリーマンのようなスーツに眼鏡をしている、髪型は黒色に七三分けだ。最近、シュールな出来事が立て込んでいて、もう何が来ても驚かなくなった。


 「あっ、百鬼夜行の御一行様ですね。お待ちしておりました」


 門番の眼鏡がこっちへ駈けてくる。別に期待していた訳ではないが、もうちょっと厳重な守備管理だと思っていた。一見、やる気がないようにも感じられる。


 「えっと、この紙に団体様入場のサインと一人一人のお名前を記入下さい」


 これは……一体? こんなに奇妙な門番が受付をやっているというのに、何のリアクションも起こさず、淡々とボードの上の紙に必要事項を書いていく五百機さん。いつもの希薄な目で、ただぼーっと自分が書く番をじっと待つ飛鳥。慌てふためく俺。

 何かさっきまで神経質になって、言い争っていたのが馬鹿らしくなってくるくらい平和な光景だ。


 ふと気になってもう片方の門番を見ると、大事な槍を門に立て掛けて、椅子に座りこんで……寝てね!? あいつ、寝てね!?


 「はい、あとはあなたの名前だけですよ」


 不意に飛鳥からボードを渡される。慌てて記入欄に名前を書くと、すぐにスーツに帰した。


 「はい、では真っ直ぐ行って頂いて、突き当りに向かって下さい。皆様の案内人が待っております」


 手を中庭の方に向けた。軽い会釈をした後、二人が先んじて何事もなかったかのように、前へ進む。いろいろ言ってやりたいことはあるが、今の俺が何を喋っても逆効果な気がするので、静かにしておこう。


 片目で後ろを眺めると、ゆっくり……門が閉じた。

 まるで『逃がさない』とでも言っているかのように。


 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ