装甲
「おい、松林。どこにいやがる!! 男なら正々堂々、隠れていないで、正面から戦いやがれ」
バイクによる逃走や鬼神スキル乱用の回避技など、小細工ばかりで男らしい戦い方など一切しない、俺が言えるよは思えないが。奴は俺のことを格下だと思っているからこの挑発に乗って欲しい。普通の人間なら、呆れるようなトラップなんだろうが。さて、奴はどう出る!!
「別に隠れてねえよ、ちょっと準備しているだけさ。お前を恐怖のどん底に突き落とす為になぁ。もう時間稼ぎはしないから、安心して死ぬ用意をしておけ」
死ぬ用意ってなんだよ。つーか、さっきの攻撃は時間稼ぎだったのか。
それで俺が地面の中に届かせる攻撃を持っていないから、ってそんだけだったのか。でもどうしよう、確かに奴の言う準備とやらを妨害する手立てを持っていない。完成してから対処するしかない。
「おい、行弓。奴が地面から出てきたらどうするか考えよう」
「行弓ちゃん。きっとまだ奴は何かを隠し持っている。捕獲不能レベルの妖怪があの程度の能力のはずがない。何か仕掛けて来る」
あの程度って、再生と分裂とあんだけの素のパワーがあれば充分に感じるのだが。そうだ、この発想の甘さが俺のダメなところだ。見通しを大きく持たなくては。相手が思ったように動いてくれる訳がない、最低のパターンを想定し、得策を取るんだ。
「火車、まだフルパワーじゃないかもしれないが、今の限界までのパワーで、次に奴が地面から現れた時に、狙い撃ちしてくれないか。そしてもし避けたら、今度は烏天狗がさっきの台風で、奴を上空に浚ってくあれ」
奴はなかなか勝負中に慢心する、だからその準備とやらが完成したら、必ず勿体ぶって登場するはずだ。そんな暇与えるか、その前に狙い撃ちにしてやるぜ。
「掛かってこい、松林」
砂浜が盛り上がった、奴が出てくる合図だ。
「砲撃用意、発射!!」
その言葉を皮切りに、戦車砲が炸裂する。ついでに烏天狗も脇から容赦なく台風を十個くらい叩き込んでいた。奴が危険を察知し避ける仕草は見えなかった。最初の砲撃も、烏天狗の台風も完璧に決まった。しばらく爆風による砂埃と爆発の煙で奴がどうなったのか全く分からない。だが、虫の息で間違いないだろう。
「おいおい、この程度で勝ったとか思ってないよなあ、落ち毀れ」
……無傷なのかよ、まじか。邪魔な砂が払われ現れた奴の姿は変わり果てていた。その体はまるで騎士このようにその体に鎧を纏っていた。
「じゃあ本気でいくぜ、落ち毀れ。憑依装甲」