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陶の村 之 壱

「なあ、けっこう歩いてるけどまだ着かないのか…」

「もうすぐよ。ほら、見えた」


そう言った彼女の指差す方を見てみると、立派な木の門にある物見矢倉にスキンヘッドな盗賊ルックな人が…って、


「盗賊じゃねぇか!?」

「ち、違うわよ。村の人だって、普通の…」

「そういうのはこっち見て言おうな?」


明後日の方向を見て言ったて説得力は欠片もないぞ?


「まさか、今更帰るとか言わないわよね!?」

「せっかく来たからよっては行くけど?」

「そう、良かった…」


だから、何が良かったの?

本当にいったい何をしたいのやら…心配だよ、こんちくしょう。

そう思いつつも、近づいていくと、


「おい!そこのお前!何用だ!ここは、天下の陶家が治める賊村だ!

命が惜しけりゃ、食料は余ってる分、有り金は1石ほど置いて行きな!そうすりゃ洛陽の町までは案内するからよ!」

「なあ、陶順さん?あの人、陶家が治めるとか、ここが賊村だとかばらしてるけど…いいのか?そして後半が凄く親切なのは気のせいか?」

「あ、あのアホ…」

「ん、そっちの嬢ちゃんは…、お、お嬢!お帰りなさいませ!帰りがいつもより遅いので心配してやしたぜ!おい!お前ら!お嬢のお帰りだ!開門急げ!」

「「「へい!しばしお待ちを」」」


これは、盗賊じゃないだろ。最早、極道とか893とかいう人種だろ。

しかも、ご近所に優しいタイプの…


「まあいいわ。よっていくんでしょう?着いてきて」

「あ、ああ」


門が開くと見えてきた村は結構しっかりとした綺麗な何処にでもありそうな村だ。…村の奥へと両端に人が並んでなければだけど。


「お嬢!お帰りなさいませ!」

「「「お帰りなさいませ!」」」

「うん、ただいま。今日は客人が来ているから、丁重にもてなす様に。わかった?」

「「「オスッ!」」」

「それでは、私は父様に伝えることがあるから」


そこで、陶順はこっちを向き直り、


「それでは高凌殿ごゆるりと…」


なんて言って村の奥へと入っていった。


「よし!おい、ヤス!お嬢の御客人を客間に御通ししろ!」

「へい!」


すると、ヤスと呼ばれた人はこっちに走ってきた。


「これから、御客人の案内を務めやす。靖凱(やすがい) 灯岳(とうがく)といいやす、気安くヤスと呼んでくだせぃ」

「これはご丁寧に、俺は姓は高、名は凌、字は譚丞と言います。よろしくお願いしますね、ヤスさん」


するとヤスさんは不思議そうな顔をしだした。

何故だろうか、デジャビュを感じる。


「高凌さんは女の方なのに、何で言葉使いが『俺』なんでやしょう?」

「それは、格好から察しが付くと思いますが俺が男だからですよ」

「…え?」


それっきりヤスさんは固まってしまった。


「冗談でやすよね?」

「冗談言う雰囲気でしょうか?」

「それは、失礼しやした。まさか男の方とは思いやせんで…」


彼は柔軟な思考の持ち主だったらしい。

考えるのを止めただけという可能性もあるが。




「此方でやすよ。この部屋でお待ちくだせぃ」


何と言うか、一言で言うなら場違いだと思った。

広い、綺麗、ビューティフォー!はちょっと違うか。

まあ、賊村には確実に場違いな様式美あふれる部屋だった。


「ゆっくり寛いでいて下せぃ」

「え、ええ、分かりました…」


正直に、言ってしまいたい…

こんな綺麗なところで寛げと言われてもちょっと無理だわ…気が引けるわ…

口が裂けても言えないが。


その数分後だっただろうか、陶順が父親なのだろう人とこの部屋へ来たのは。

見た目が、凄い厳ついし顔に傷が付いている。

一人称はワシだろうか?


「お主が、高凌か?あんまり強そうには見えんのだが?」

「父様…失礼よ」

「いえ、俺はそこまで強くないですし、妥当ですよ?」


初対面の一言目はこんな感じ、三者の意見が全く違う。

実際俺自身は本当にそんなに強くない。

盗賊に負けたことはないけれど…

母さんが連れてきた赤い髪の触覚少女と打ち合ってギリギリ負けているのだ。

アレは悔しかったな…ギリギリ負けたって言うのが特に。


「おい、閃歌(せんか)

「大丈夫よ、父様。この人の強さは私が保証するわ」


勝手に保証しないで欲しい…


「本当に大丈夫なんだな?」

「ええ、この人ならやってくれるわ」

「そうか。すまなかったな御客人。失礼なことを言ってしまって」

「いえ、あれが普通だと思いますよ?」


あれ?本人そっちのけで重要なことが決まった気がする。何故だ?


「そう言ってもらえると助かる。この度は娘を救っていただいて、本当に感謝している」

「いえ、当然のことをしたまでです」


このぐらいが当たり障り無いかな?

さて、この2人が何を考えているのか聞き出せるだろうか。


「こんなことで礼になるかは分からんが、ワシの真名を受け取ってほしい」

「そ、そんな!そこまでしなくてもいいですよ。俺が助けたくてしたことなんですから」

「それなら、これもワシがしたくてしていることだ。異論はあるまい?」


ははは、この人面白い人だ。

頑固なのか、豪快なのか…


「…ふぅ。分かりました、ありがたく頂戴します」

「そうか。ワシは、姓は(とう)、名は(らく)、字は箋遊(せんゆう)、真名は善次郎(ぜんじろう)じゃよろしゅう頼むぞ?高凌殿」

「はい。それと、俺の真名も受け取ってください。相手のだけ持っているのは気持ちが悪いので」

「おう。こちらもありがたく頂戴しよう」

「ありがとうございます。俺は、姓は高、名は凌、字は譚丞、真名は項です。これからよろしく、善次郎さん」


こうして、俺の始めての真名交換は厳ついおじさんとして終わった。

何かを失った気がするが、大切なものを得た気がする…泣いてないよ?ほんとだよ?



オリキャラ解説


陶楽(とうらく) 箋遊(せんゆう)


真名 善次郎(ぜんじろう)


名前の由来――陶順の父という事で、遊びと楽しみを入れたかったのでこうなりました。


主人公の初めての(真名交換をした)人。

一人称がワシな、豪快な人で、賊村の長。

イメージとしては、極道に近いような身内には優しい人。

娘を大切に思う親馬鹿さんでもある。


年齢 39歳

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