洛陽への道 之 弐
「あの…」
「…ッ!?」
声をかけただけなのに、数歩引かれた。
…怖がられてる?よね、これは。
出来るだけ怖がらせないように、血が出ない殺し方をしたのに…
しゃあない、さっさと洛陽に行こうっと。
「ちょっと、待って…くれません、か?」
呼び止められた。
何でだ…今凄く怖がってなかった?
「何かな?」
出来るだけ、なんでも無い風を装う。
「私の住んでる村へ来てもらえませんか?」
罠か?そんな言葉が頭をよぎるが、それは無いと思う。
第一、罠に嵌める意味が分からない。
なら、何だ?お礼は、この怖がられ様ではありえないだろうし…
「お、お礼…を、させてほしい、んです…」
これは、もう確実だな。絶対何かある。
「謹んで、ご遠慮します。それでは」
「そ、それじゃ困るの!…あ」
「ほう、何が困るのでしょう?」
ずいぶん必死だな…
それに、何故か何かを探している感じがする。
何かを探している人には、ある種独特の雰囲気の様なものがある。
この子からは何故かそんな感じがするのだ。
「そ、そうです!お礼ができないと、お母さんにしかられてしまいますから!ですから!」
「…いいですよ。それと、無理してお淑やかに喋ろうとしなくてもいいですよ?大変でしょう?えぇと…」
「陶順よ…です。私の名前は、陶順 嵯融」
「陶順さんですか。俺は、姓は高、名は凌、字は譚丞といいます」
取り合えず、名乗り返さないのは失礼かな?と思い名乗ったら、凄く意外そうな顔をされた。
「え?今、俺何か変なこと言いましたか?」
「いえ、何でそんな綺麗なのに男言葉なのかと思って、じゃなくて!思いまして」
「?俺は男ですから、普通だと思いますが?と言うか綺麗って何だ」
「はあぁぁあぁぁぁぁ?その何処が男なのよっ!私より綺麗じゃないの!?」
この子、ビックリすると口調が戻るな。
「さっきも言いましたが、無理してお淑やかに喋らなくていいですよ?」
「そう。ならそうするわ。じゃなくて!」
「何処がって言われても…ちゃんと付いてますよ?」
「でも、その長い綺麗な薄水色の髪とか、綺麗な肌とか、大き目の目とかぁー!…背はそれなりに高いけど、全然男に見えないわよ!」
「え?…鏡とか、ありますか?」
「え、ええ。ここに、はい」
鏡を受け取り、覗き込むと何処かの深窓の令嬢の様な人物が写っていた。
俺だった。
「なっ!?なんだこれ!?」
「…あんた、自分の顔鏡で見たこと無かったの?」
「あぁ、家の母さん、そういうのは見ちゃダメよ?って怖い顔で言ってたから」
小さい頃は何でだろ?って思っていたけど、予想の斜め上だよ。
どうせあの人のことだ、説明が面倒くさかったんだろう…
「まあ、いいわ。こっちよ、着いて来て」
そう言うと、山の奥へと歩き出す陶順さん。
…村なら山を下るんじゃないのか?
まさか、村って言うのも嘘だったりしないよな?
はい。洛陽からどんどん遠ざかってます。
ですが、洛陽への道での出来事なのでこれでいいよね?だめ?
オリキャラ解説
陶順 嵯融
名前の由来――陶という字は、陶器を焼くなどの意味の他に楽しみ喜びや、頑なな頑固さ、憂いなどの意味も含みます。そこに、順という従うや寄り添うの意味を混ぜ、より感情的にという意味があります。
これからレギュラーになる可能性のある人。
力は余りないけれど、知恵とスピードが持ち味に。
レギュラーになるなら、文武官としての予定。
言っていることに嘘が多いが、それがすぐに分かってしまうことから嘘が吐けない性格であることが窺える。
年齢 18歳