ぷろろーぐ 之 壱
――ねぇ?君は何を探しているの?
何かに呼ばれた気がしてふと顔を上げると、埃っぽい部屋の窓から綺麗な夕焼けが見えた。
「あぁ、もうこんな時間か…」
俺は、凪都 項。
趣味で失せモノ探しをしている高校3年生だ。
ここには失せモノ探しの依頼できていたんだが…どうやら、時間を掛け過ぎていたらしい。
もう外は大分薄暗くなってきている。
最後に体育館倉庫の端を探し、一通り探し終わったのを確認して倉庫に鍵をかける。
「あ、出てきた!おーい、凪都君。ピンバッチは見つかった?」
この子は今回の依頼人で、同じクラスの山根さんだ。
昨日、友達から貰ったピンバッチを失くしてしまったらしい。
「いや、見つからんかった。他に何処か失くしたかもしれない場所が無いなら明日から移動した道や、聞き込みもやってみるけどどうする?」
「うん、ごめんね。見つかるといいんだけど…」
その日は結局ピンバッチは見つからず、また明日探すのを手伝うという約束をして帰った。
その帰り道のことだ。
交差点を横断中、何かに躓いて足元にピンバッチが落ちているのに気が付いた。
失せモノのピンバッチか?と思い、同時にまさかな。とも思ったが取り合えずしゃがんで拾った。
「おいおい、今日の俺の頑張りは何だったんだ?」
どうやら、本当に失くしたピンバッチだったらしい。
裏にイニシャルが入っているという条件にも当てはまるし、間違いないだろう。
まぁ、見つかったからいいか。
――ねぇ?それはあなたが本当に見つけたいもの?
またか…と、俺は思った。
体育館倉庫で聞こえた、あの呼んでいるかの様な声だ。
実はあの声を最近頻繁に聞くようになった。
決まって、集中して探しているときと、失せモノを見つけたときに聞こえるこの声。
「本当に、何なんだよ…「あ、危ないっ!?」え?」
ドンッ!!!という衝突音が鳴り響いた。
ビックリして俺は目を瞑ってしまった様だ。何も見えない。
おいおい、何だ今の…車が人を撥ねたような音だったぞ!?
気になって目を開けてみようとしたが、目が開かなかった。
仕方なく、手で目を開けようとしたが、手も動かなかった。
自分がいつの間にか寝転がっているのに気付き起き上がろうとしたけど、起き上がることすら出来ない。
段々と寒くなってきた。困ったな、さっさと帰りたいのに…なんだか、眠くなって来たや。
「…お、やす…み……」
まあ、要するに衝突音の正体は――車が俺を撥ねた音だった。