その3
続けて三人が死んだ一連の事件。明確に犯人が分かっているせいか、次の日は一限が自習で二限に全校集会があっただけで、残りはいつも通りだった。
荒神高校は別段進学校というわけでもないのだが、わずか三名程度の死で数百名の生徒全員の学業をおろそかにする選択は取らなかったようだ。
なんら特別な事もない。せいぜい教室内の空気が少し妙といった程度だろうか。
なんだかんだ理由をつけて休んでいる人も多いようだったが、大半の生徒にとっては自分に関係のない人間が死んだところで日常に変化は起こらない。せいぜいちょっとした非日常を垣間見る程度で、当事者にでもならなければ事の重大さを実感する事など出来るはずもないのだ。
かく言う僕も人よりはずっと深く関わっているわけだけど、だからといって何がどうなるわけでもない。直接に死体を見るのは何も初めてじゃないし、その死体も僕にとって特別な思い入れがあった存在ではない。
これが静先輩だとか宗也のものだというのなら話は別だろうけど。
僕はチラリと宗也の席を盗み見た。昨日は見事に嘔吐してしまった彼だが、今日話した感じではすでになんでもないようだった。今日は放課後に倉庫として使っているというあの空き教室を捜索する手伝いをしてくれる事になっている。
そう。あの空き教室だ。僕の考えではあの場所には消し様のない痕跡が残っているはずなのだ。
それが見つかれば僕の仮説はほぼ固まる。あとは静先輩があの日の朝の金井昌子の足取りを掴めれば、晴れて謎は解決だ。その話をクロに聞かせて、クロがそれに納得すれば笑ってくれるだろう。
その後の処置は静先輩に一任すればいい。真犯人を朝川さんに連絡して捕まえてもらうのか、それとも放置するのか。どちらにしても僕には関係がない領域になる。
そのまま午前の授業、午後の授業と消化し、ホームルームを終えてすぐに僕は宗也と武道場へ向かった。まっすぐ武道場へ行くのは空き教室の鍵がそちらにあるからだ。
途中でクロとも合流し、僕らは武道場で鍵を取って西校舎へ向かう。その途中、いまだに黄色いテープが張られている現場に一人の女子生徒がいるのを見かけた。
花束を抱えて悲しそうな表情をしたセミロングのその人は、間違いなく飯島先輩だ。
黄色いテープの向こう側にいる彼女は、深い悲しみをその身にまとい、ふとした拍子に消えてしまうのではないかというほどに希薄な存在感のままそこにいた。
「に」
「あ……」
いつの間にそこへ行っていたのか、気が付いたらクロが飯島先輩の傍にいた。
「おいおい、黒猫ちゃんいつの間に移動したんだ? っつーかあの死にそうな顔した美人のはずのお姉さん誰よ」
「そっか、宗也は写真を見てないんだっけ。あの人が二年の飯島先輩だよ」
「あー、あの時話に出た学食で話したっていう先輩か」
僕が説明すると、宗也はそうかそうかと何度か頷き、しかしそれ以上特に興味を示すわけでもなくクロと飯島先輩の様子を傍観している。
「ちょっとクロを回収してくるよ」
「おう。俺は先に鍵開けに行くわ」
「分かった」
その場で宗也と別れ、僕はテープをくぐって飯島先輩に近付いた。
「こんにちは先輩」
「……ああ、あの時の。えと、シロ君、だったっけ?」
弱々しい声をした飯島先輩は、まるで病人のようだった。この間会った時に比べると完全に別人としか言いようがない。顔は青白くて目の下には濃いクマが出来ているし、唇は乾いてボロボロだ。整えも梳いてもいないのか、髪もどこかぼさぼさである。
そんな飯島先輩の様子に内心首をかしげながらも、僕は気にしていないふりをした。
「ええ。すみませんまたクロが勝手に」
「ううん。構わないわ。ね? クロちゃん」
「に」
飯島先輩のどこか疲れ切った笑みに、クロは屈託のない笑みで返した。そしてじっと先輩が持っている花束に目を向け始める。
クロが花に興味を持つのは珍しい事だが、僕もまた飯島先輩の持つそれを見て、
「その花は昨日の二人にですか?」
ごく普通に思った事を口にした。
天夜先生に限定しなかったのはわざとだ。けれどそれは特に深い意味があったわけじゃない。ただ単にこの前の時に関係を否定されているので、それを考慮してぼかしただけのつもりだった。だが――
「…………二人? 貴方、今二人って言ったの?」
「え?」
一瞬、僕は目の前にいるのが誰か分からなかった。
飯島先輩はぎょろりと血走った目を見開き、その手に持った花束をグシャリと握り潰す。全身が強張っているのか、小刻みに震えるその様子は明らかに尋常じゃなかった。
「……けないじゃない」
「えと――」
「そんなわけないじゃない!」
口から泡を飛ばす勢いで否定の言葉を口にした飯島先輩は、まるで悪鬼のような表情で僕の事を睨みつけていた。
手に持っていた花束を地面に叩きつけると、おそらく花束の中に隠し持っていたと見られるナイフを僕に向けて突き付けて来た。
しまった。クロが興味を示していたのは花ではなくその中にあるものだったようだ。
予想外過ぎる行動に僕は一瞬棒立ちになる。先輩の傍にいたはずのクロはちゃっかりと僕の背後に隠れていた。
「何で私があんなゴミクズに花を供えてやらなきゃいけないの? 私の……私の先生を殺したあんなゴミクズに!」
「あ、えっと、そのすいません! 軽率でしたごめんなさい!」
直感的に身の危険を感じた僕は思いっきり頭を下げた。どこで間違ったのかよく分からないが、少なくとも自分が相手の地雷を踏んでしまった事だけは分かる。
こういう時はとにかく謝って、相手の気持ちを沈める事が大事だ。
「に」
僕の隣でクロも頭を下げ始めた。彼女は単に僕の真似をしているだけなのだろうが、飯島先輩の気持ちを落ち着ける効果はあったようで、
「……ごめんなさい」
鋭い圧力が一気になくなったかと思うと、ポツリとそんな謝罪の言葉が聞こえて来る。
そろそろと下げていた頭を上げると、飯島先輩はばつが悪そうに僕から顔を背けていた。しかし右手にはナイフを握ったままである。
だが、一度感情を爆発させた事で少しは収まったようだった。先ほどまでに比べれば幾分かその顔には血の気が戻っている。おそらく今このタイミングなら多少突っ込んだ話をしても大丈夫だろう。
「飯島先輩、やっぱり天夜先生と付き合ってたんですね」
僕の言葉に、飯島先輩が身体を固くしてビクリと震えた。しかしすぐにその力が抜け、コクリと小さく頷いて来る。
静先輩の前情報では特別な関係ではないという事だったが、やはりそういう関係だったようだ。静先輩の情報に言い寄られているのを拒否し続けているという形で引っかかったのは、おそらく飯島先輩の態度が原因だろう。
あの時の否定の仕方は少し大げさに過ぎる。あれほどまでに強く否定しなければならないのには、何かしら理由があると僕は踏んでいた。
その事を尋ねると飯島先輩はどう答えようかしばし迷っていた様子だったが、やがて大きく溜息を吐き出し、
「先生に口止めされてたの。二人の関係は誰にも教えちゃいけないって。周りがなんと言おうと、他人には私たちの関係は否定するようにって」
なるほど。それであれほどまでに頑なに否定したというわけだ。大方二人の関係がばれると一緒にいられないとかなんとか言って手懐けていたのだろう。
となると、もしかして飯島先輩は天夜先生が他の生徒にも手を出している事を知らなかったのだろうか。
「ううん。知ってたよ。でもね、それは先生なりのカモフラージュなの。私との事が周りにばれないようにってね、わざと他の子と付き合ってるんじゃないかって思わせてるんだって」
懐かしむように遠くを見ながら、飯島先輩が小さく笑う。
それは相手を心の底から信じている顔だ。誰が聞いても嘘だと分かるその言葉を、彼女は本当の事だと信じて疑っていない。むしろそれは自分のためだとさえ思っているだろう。
それは盲目どころじゃない。妄信、あるいは盲執の域だ。
「だってね。先生言ってくれたのよ? 世界で一番私の事が好きだって。他の誰よりも私の事を愛しているって」
それはきっと、言葉の重さがなくなるくらい何度も何度も繰り返し繰り返しささやかれたであろう言葉。耳障りのいい甘美な言葉。
それすらも真実だと思えるほどに、僕の目の前の人は相手に依存していたのだろう。
「私嬉しかった。先生の恋人になれた事。先生に抱かれた事。そして――」
そこで一度言葉を切り、飯島先輩はナイフを持っていない左手で自分のへその下辺りを愛おしげに撫で、
「先生の子供を授かった事」
「………………」
慈愛に満ちた表情で自分の腹を撫で続ける飯島先輩を見て、僕は思わずクロを見た。彼女はじっと飯島先輩のお腹を見つめていたが、やがて僕の方へ顔を向けてふるふると頭を振った。
つまりは、飯島先輩の中に彼女が言うような命の芽生えはないという事だ。
彼女がどの段階でその妄想に取り付かれたのかは分からないが、いまだに己の腹を撫で続ける彼女に僕は狂気を感じた。
妄執的な愛の果て。想いの対象を奪われた苦しみを補填するための記憶改竄だろうか。いずれにせよ飯島先輩はどこかが壊れてしまったのだ。
いや、元から壊れてしまっていたのだろう。そして今回で決定的なものが完全に壊れた。おそらくは修復不可能なほどに。
「私、この子を生むわ。先生が残してくれたものだから」
「……そう、ですか。それじゃあ、身体には気をつけてくださいね」
「うん。ありがとうシロ君。それにクロちゃんも」
「に」
僕は飯島先輩に一礼してその場を離れた。彼女の姿が見えなくなる直前、チラリとそちらの方を見てみたが、分かれた時と同様にその場に立ち尽くしたままぼーっとしているようだった。いや、ちがう。彼女は笑っているようだ。
焦点の定まらない目をした彼女は、現実には何も見ていない。だがしかし、彼女の瞳には愛しい存在が映っているのだろう。自らの作り出した虚像。望んだ通りの存在。実体のない幻影。
それが幸せな事なのかどうかは分からない。けれど、飯島先輩は笑っていた。誰もいないお腹をさすりながら、それでも確かに笑っていた。
◇
飯島先輩と別れてすぐ、僕はすでに教室の鍵を開けて待っていた宗也と合流し、問題の空き教室の中へ足を踏み入れた。
教室内には雑多な道具類の他に使っていない机や椅子などがごちゃごちゃと集められていて、なかなかに混沌としている。
「あそこに一つだけ除けられてるのが盗まれて立ってやつかい?」
「ああ。本当なら昨日中身を移し変えるはずだったんだけどな。あんな事があったからまだ手付かずなんだよ」
「そうなんだ」
僕は綺麗に並べられている投げられ君グレート七体から、ポツンと離れた場所に放置されている八体目に近寄る。
そっと抱きかかえてみると、これがなかなかに重い。が、引きずる分には特に問題はないだろう。教室内に引きずりこむ際には自分自身の体重をかける事も出来るのだから、犯人の体重が三十キロ以上であれば腕力はそれほど問題にはならない。
僕は持ち上げていた人形を元に戻し、窓枠の確認をする事にした。
もちろん調べる場所はダミー人形が落ちたと思われる場所の目の前にある窓だ。鍵を開けて窓を開けると、停滞していた室内の空気に流れが生じ、どこか埃っぽい匂いが漂ってくる。
「くちっ」
舞い上がった埃を吸い込んでしまったのか、室内を興味津々に物色していたクロが可愛らしいくしゃみをした。彼女はくしくしと顔を擦ると、再びその辺に転がっている物を手に取ったりつついたりし始めた。
とりあえず楽しそうだったので、僕は僕で改めて確認すべき場所へ目を向ける。
「……うん」
はたしてそこには思った通りの傷跡があった。細い物で擦ったような跡が何本も窓枠に残されている。ついと上を向けば、窓枠の上の方にも同じような跡がいくつも残っているのを確認出来た。
上についているものはダミーを引き落とす際に。下についているものはダミーを引っ張り込む際のものと見て間違いないだろう。
やはり全てはこの空き教室にからくりがあったというわけだ。
自分の仮定が正しかった事を確認し、僕は一人うむうむと頷き――なんとも言えない違和感を覚えて首を傾げた。
あれ? 何か変だぞ。
僕はもう一度窓枠に残された傷跡を確認する。そこには確かに細い物を擦り付けたような跡が何本も残されている。
何本も?
変だ。明らかにおかしい。なぜ擦った跡が何本もあるのだろう。普通に考えればこの跡は一本で十分なはずだ。
引っ張り込む際にピアノ線の位置が何度もずれたのだろうか。いや、それにしてはくっきりと残っている跡の数がおかしい。
ふむ。よく考えてみれば屋上に残っていた跡も一本だけではなかった。あれは複数の跡が固まっていたせいでギザギザに見えていたのではないだろうか。
だとすると、屋上でもここでもピアノ線は何度も何度も擦られた事になる。
つまりそれは、犯人はあの日以前に予行演習をしていたという事にならないだろうか。ぶっつけ本番ではなく、何回も人形を落として引っ張り込んでを繰り返し確認してから事を起こしていたとしたらどうなるだろうか。
考えてみれば、ダミーに使われた人形は二週間も前からどこかへ持ち去られているのだ。その間に予行演習を行っていても不思議ではない。
ん? 予行演習って言えば、確か平野の証言の中で気になる話があったな。
朝川さんの事情聴取の時、平野は友人から屋上から飛び降り続ける幽霊の話を聞いていたはずだ。もしあれが幽霊でも幻でもなく、犯人の予行演習だったとしたらどうなるだろうか。
それは金井昌子には不可能だ。それが出来たのはただ一人、ちょうど宿直だった春霞先生だけだ。
だがそれはそれで大きな問題が残る。こうしてこの場所に痕跡が残っている以上、屋上から落ちたダミー人形はあの日確かにこの空き教室に引きずり込まれたのだ。
しかしダミー人形が落ちた時に先生はグラウンドにいた。それは変えようのない事実なのだ。だとすれば、一体誰がこの教室に引きずり込んだというのだろうか。
まさか春霞先生と金井昌子の共犯か?
そうだとすればつじつまは合うが、動機が不明に過ぎる。それに向坂先輩が奥山宏美の件に言及して自殺した事の理由もまだ分かってはいないのだ。
これはあくまで可能性として、詳しくは静先輩の調べがつくまで待った方が――
「お? シロ携帯鳴ってるぞ」
「あ、本当だ」
思考に没頭し過ぎてポケットの中の着信音に気が付かなかったようだ。ディスプレイの表示は図ったかのように静先輩だったので、そのまますぐに通話ボタンを押す。
「はい」
『今、大丈夫ですの?』
「ええ。大丈夫ですよ」
『そう。金井昌子の足取りの調べがつきましたわ。部室まで来ていただけますかしら?』
本当に計ったかのようなタイミングだ。これで僕の中で生まれた新たな仮説がどう転ぶかが確定するだろう。
「分かりました。クロを連れてすぐに行きます」
『待ってますわ』
通話を終了し、僕は携帯をポケットにします。
「ん? もういいのか?」
「うん。ありがとう宗也。助かったよ」
「別にいいさ。ま、今度また何か差し入れでもくれるとありがてえな。昨日はせっかく食ったもの出しちまったしなぁ」
そういえば昨日は弁当の余りを差し入れとして持っていったんだったっけ。考えてみれば宗也が吐き気を抑え切れなかったのはタッパーの中身を全部食べてしまっていたからかもしれない。
「考えとくよ。さて、クロ――はあっちか」
教室内で首をめぐらせると、クロは引き戸の前でじっと戸枠を眺めているところだった。その様子から察するに気になる何かを見つけたようだ。
一体何を見つけたのだろうかと興味を引かれ、僕はクロの後ろに立って視線を合わせてみる。すると――
あれ?
そこには黒い線のような傷跡が刻まれていた。ちょうど糸のような細い物で切りつければこんな跡になるだろうか。それが僕の胸くらいの高さに一つと、かなり上の方にも一つ。それぞれやや右上がりなものとやや右下がりの傷跡だ。
よくよく見ればこちらも複数回擦られたような痕跡がある。ほとんど同じ位置のせいで分かりづらいが、間違いない。
何でこんな傷跡がこんなところにあるのだろうか。これは屋上の縁とこの教室の窓枠に残された傷跡と同種のものだ。関係のないものであるはずがない。
必然的に、この場所にもピアノ線は張られていたという事になる。つまりピアノ線は廊下に出されていた。
「あ、おいどうしたんだシロ」
宗也の声を無視して、僕は空き教室から飛び出した。右下がりの傷跡。あれがダミーを屋上から落とすまでのもので、右上がりの傷跡が引っ張り込むまでの傷跡なのだとすれば――
「……あった」
教室を出てやや左手へ進んだ場所にある廊下の窓。その窓枠にもやはり糸状のもので擦った跡がある。つまりピアノ線は教室の外どころか廊下を横切って外にまで伸びていたという事だ。
そして僕の目の前。窓ガラスから見える景色に存在するものは――
「に」
くいくいと裾を引っ張られ、僕はそちらへ顔を向ける。すると、クロがじっと僕の事を見つめてきていた。彼女は裾を引っ張るのをやめると、少し広げた状態で両手を僕の方へ伸ばして来た。一瞬僕はクロの意図が分からなかったが、その格好が抱っこをねだる子供の仕草だという事に気が付いて、
「ああ。うん、じゃあ後ろ向いて」
クロに背中を向けさせると、僕は彼女の両脇の下から手を入れてひょいと彼女を抱え上げた。
その身体は驚くほどに軽い。先ほど持った人形の方が重いのではないかと思うほどに。
「に」
「うん」
目的を果たしたクロを床に下ろしてやると、彼女は首の鈴を鳴らしながらトイレの前を通ってタンタンと階段を登って行ってしまった。先に静先輩のいる部室へ向かったのだろう。
「いきなりどうしたんだよシロ」
空き教室を施錠しながら、宗也が何事かと質問をして来た。
「いや、ちょっと分かった事があるだけ」
僕はその質問をさらりと流す。他愛のない事だと一笑に付すように。宗也は少し首を傾げたけど、それ以上は特に何も言ってはこなかった。
もう一度礼を言って、僕は宗也と別れ三階の部室を目指す。
僕の考えが正しければ、彼にとっては悲しい事になるだろう。だがそれでも、僕は僕のためにこの事件の真実を暴き出す。
別に宗也を傷つけたいわけじゃない。憎いわけでも、嫌いなわけでもない。宗也は僕の友人だ。交友関係の中では同性で最も親しい友人といっていいだろう。
僕は彼との絆を壊したいわけではない。
けれど、これは優先順位の問題だ。何を優先して、何を優先しないかという問題だ。
僕は自分の中の優先順位を明確に決めている。この順位だけは何があっても変わる事はない。少なくとも、彼女といる間は絶対に。
だからこれは僕の中では当然の事だ。呼吸をするのと同じくらい当然な事だ。二つの事柄を比べて、より優先順位の高い方を選択しただけ。ただそれだけなのだ。