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ラピスの心臓  作者: 羽二重銀太郎
開戦編
82/184

重たい雪 3

 重たい雪






   3




 冷たい水を顔に浴び、ユギクは目を覚ました。喉に苦痛を感じ、激しく咳き込む。


 居る場所は暗く狭い部屋のようだった。まわりは古ぼけた石壁に囲まれている。空気は淀み、微かにカビ臭さが漂っていた。


 ――手足が。


 ユギクは自由を奪われた状態で、椅子に腰掛けていた。


 目の前には簡易の寝床があり、そこには一人の女が背を預けて座っている。淡く輝くような黄緑色の髪をしていて、美しい容姿をした若い女だ。左手の甲に見える白濁した輝石を見つけ、ユギクは現状をはっきりと理解した。


 「私が誰か、わかりますよね」

 と、女が言う。


 「ッ――」

 話そうとしてユギクはまた、激しく咳き込んだ。


 「――ずっと、あんたをさがして、た……」

 喉の痛みに耐えつつ、枯れた声でそう答える。


 ジュナは満足そうに頷く。


 「ようこそ私の部屋へ。あまりおもてなしができる状況ではないのだけれど、無事にあなたをここへ招待できてよかった。上手くいくかは賭けでもあったけど、あなたはとても単純に、とても素直に欲求のまま動いてくれたから、思っていたよりも簡単に進めることができました」


 「ハメやがったな……」


 余分な食事を用意していたクモカリの態度から、手がかりを得たと思っていた。が、今にして思えば、まるで誘導されたかのように、これみよがしに差し出された情報だったようにも思える。現状から当たり前の推理をするのなら、罠だったのだ。


 「根拠もなく他人を見下ろしている相手ほど、だましやすいものはない。油断――と言ったほうが簡単なのでしょうけど」


 言葉通り、ユギクを含め、ジュナの捜索に参加する者達は、彼女をただ脆弱で守られるだけの存在だと思っていた。


 「いつ気づいた……うちが蛇の手の人間だって……」


 ジュナは笑み、

 「最初からですよ」


 ユギクは呼吸を止め、

 「……え」


 ジュナは傍らから紙束を取り出し、一枚ずつをめくって見せた。


 「ムツキにいる人たち、特に目立たない存在である彩石を持たない人たちの情報を集めてもらい、記録をつけました。人は一人で生きてはいない。他人とはなにも繋がりがないと思っていても、本当は色々な部分で関わりが生まれている。あなたの用意したユギクという人物には、あるべき関わりがなにも見えなかった。それは、嘘で作られた人物だから。周囲に語って聞かせていた出身や由来にも、小さな矛盾がたくさんあった。その道で生きている専門家なら、もう少し考えて言動をしたほうがいい。特に、出身地を同じくする人間がいないかどうか、よく調べておくべきでしたね」


 素人に説教をされているような気分になり、ユギクは密かに腹を立てた。


 「……好きに勝ち誇ってなよ、どのみちただじゃおかれないんだ。姿も気配も全然感じなかったから疑ってたけど、本当にいたんだ……バカだね、ムツキはもう毒蛇の巣穴と一緒なんだ、うちを捕まえたからって無事ですむなんて、甘いこと考えてんじゃねえぞ、この世間知らずのクソ女」


 楚々とした愛らしい少女の顔を捨て、ユギクは脅すようにジュナを睨み、嘲笑した。


 ジュナは清楚な態度を保ったまま、


 「ええ、あなたの言う通りね。けれど、毒蛇だって駆除する手段はある。天敵を送り込めば、蛇を巣穴から追い出すことだって可能でしょ。でも、今の私にはそんな力はないから、身を守るために出来る事はすべてやるつもりなの」


 ジュナは言って奥を見やる。背後から、それまでまったく気配を感じなかった、女が姿を現した。


 「お前だな……こそこそしてた飼い犬がッ――」


 女が無言でユギクの喉元に短剣の刃を当てた。その冷たさと伝わる鋭利な感触に、思わず背筋が震える。


 女は刃先で首筋を撫で、耳の根元でぴたりと止めた。


 ジュナは真顔でユギクを見つめ、

 「あなた達が用意している強攻策について、こちらも把握はできている。ただそれをされると、用意してきた守りに綻びが生じてしまうから、とても困ったことになってしまう」


 ユギクは痛快な心地で鼻を鳴らした。


 「だろうね? どのみち詰んでるのさ。こっちが本気になればあんたなんてとっくに捕まえてた、戦争まっただ中の深界なんて特殊な環境じゃなきゃ、とっくにさ」


 「もしもの話に意味はありません。私達にとっては今の状況がすべて。私は私のできる範囲で自分の身を守る。そのために有利を得られるかもしれないのなら、そのすべてを行動するつもりでいる。そして、今のこの状況はそのために用意してもらったもの」


 耳に当たる刃に、ぐっと力が込められた。


 無言で短剣を構えていた女が口を開き、

 「選べ――話すか、失うか」


 耳の付け根から一筋の血が零れ、首を通り、服の中まで滑り落ちる。


 ジュナは、

 「あなたを捕らえた事を、あなたの仲間へ伝えたい。ただ、証拠を示せなければ意味がない。でも、あなたを連れて行って見せていられるほどこちらにも余裕がない。だから本人だと伝わるように、身体の一部を届けるしかない――」


 淡々と告げられる残酷な内容に、ユギクは悟られぬようにこっそりと喉を鳴らした。


 ジュナは一呼吸を置いて続け、

 「――以上が提案された内容。だけど、私はもう一つの道も示したい。あなたの身体を傷つけない事と引き換えに、あなたの本当の名前を教えて欲しい」


 僅かにでも動けば耳が切り飛ばされそうだった。ユギクは身体が動かぬように身を強ばらせ、

 「なんだよ、それ……」


 「ユギクというのは本当の名前ではないのでしょう。裏であなた達にしかわからない互いの本当の呼び名があるはず。それを伝える事が出来るのなら、血を流さずにこちらも目的を遂げる事ができる、そう言っているのよ」


 ユギクは醜く顔を歪めてジュナを睨む。


 「ははッ――ほんと笑えるよ、うちらが仲間を人質にとられたくらいで手を止めるって? 本気で思ってるわけないよな。この飼い犬に聞いてみなよ、うちらは目的のために、情なんて甘ったるいものは持たないんだ、必要なら仲間だって殺せるんだよ。無意味な事をしてる暇があるなら、今のうちに降参するなり、最後の悪あがきに時間を使ったほうがいいと思うけどね」


 ジュナは愛らしい所作で肩を上げ、


 「実は、同じ事を言われました――でも、そんなに簡単にすべてを割り切れる人ばかりではないって、私はそう思う。あなたは若い娘で、とても可愛らしい人だから、あなたの群れ中に、あなたの身を案じている人が、もしかしたらいるかもしれない。その可能性を少しでも見る事ができるなら、試してみる価値はある。なにかをしなければ、なにも起こらない。だから――」


 ジュナが首を振ると、また鋭い刃先が耳を僅かに切り裂いた。


 「言うもんかッ、あんたの好きになんてさせない! やりなよ、拷問でもなんでも、すればいいだろ! どのみち生きて帰れやしないんだ、こっちも素人じゃない、それくらいわかってんだよ!」


 「拷問なんて、そんな恐ろしい事に興味はない。私は今、あなたに取引を持ちかけている。これはあなたにとって得しかない取引、あなたが名前を教えてくれなかったとしても、こちらはあなたを捕らえた事を証明する事ができる。でも、そのためには、せっかく私のために用意してもらったこの部屋を血で汚すことになる。痛みで苦しむ姿を見るのも嫌だし、弱ったあなたの看病をするにも、そんな事に時間を費やす余裕はない。だから、一言教えてくれれば、それでおしまい。あなたが言うように、あなたの群れがこの件を無視して動くのであれば、教えてもらったとしてもなにも問題はないはず。それに、もし本当にあなたが死ぬのだとしても、それまでに痛くて苦しい思いをする必要も意味もない。この取引を拒まれるのなら、こちらは無駄を省くために、きちんと用意をしなければいけなくなる。耳だけでは足りない、傷がついた身体の皮膚や、特徴がわかる手や足の指、目の色だって伝えないといけないし……」


 まるで値踏みをするような視線で全身を見られ、ユギクは抗いようのない怖気に背中を震わせた。その瞬間、ジュナはほんの微か、ほんの一瞬だけ、吹き出すような冷めた笑いを浮かべた。その表情は、ユギクの知る一人の人物を想起させる。


 「あんた……ヒネア様によく、似てる……」


 ジュナは微笑し、

 「そう? 私が叔母様と同じ立場にいたとしたら、もっと上手く、この件を片付けていたと思うけれど」


 手の甲の石は平民のもの。が、目の前にいる女は、見た目の特徴、そしてなにより、その資質において、ユギクの知る主の血脈を、そのまま体現しているかのような存在に感じられた。


 ――サーペンティア。


 たとえ不慮の誕生であっても、彼女もやはり、そうなのだ。


 彼女は血を見たくないという。だが、ユギクはジュナと対峙した僅かな時間で、すでに理解していた。必要であれば躊躇なくそれを実行する人間だと。


 聞かされた言葉の通り、痛みを感じることも、身体を切り落とされる事も、意味のないことのように思えた。


 目の前に在るのは、ただの失せ物ではない。ジュナ・サーペンティアであると頭が勝手に認識する。


 揺さぶっても、抵抗しても、ジュナの態度からは、その奥にある本当の感情がまるで見えてこなかった。完全に上位に在る者を見上げる感覚を覚え、ユギクはすっかり、主の家の人間を相手にしているような心地となり、気圧されていた。


 反抗への意義は、もはや消えていた。


 「…………名前、は」


 ユギクの名を捨て、ハイズリはジュナ・サーペンティアへの屈服を選択した。




     *




 相手方から文が届いた。その知らせをガザイが聞いたのは、戦場に向かった主を見送り、強攻策としてムツキの建物内を煙で燻す準備をしている最中だった。


 ――命乞いか。


 だとすれば手間が省けたうえ、万が一にも失せ物を死なせてしまう危険を冒さずにすむ。


 が、届いた文に書かれた内容を見て、ガザイは言葉を失い、硬直した。


 「ハイズリのやつ……てっきり、戦場に行ったものと」


 文を届けた部下が言う。封がされていない文の内容は、すでにガザイよりも早く知る者が多かった。


 ハイズリ、と確かに書いてある。その名を知る者は身内だけ。それに加え、文には艶やかな女の髪が貼り付けられていた。偽りはない、という細やかな主張のつもりなのだろう。


 文には、ハイズリを捕らえたことを知らせる事と同時に、これからガザイらがやろうとしていることを止めるように書いてある。逆らえば、人質に死をもたらす、とも。


 「どう、なさいますか」


 部下に問われガザイは、

 「どうもこうもあるか、我らの目的は任務の遂行、ただそれのみ。ハイズリは失態を犯した、すでに生死などないも同然。諸共に煙で炙るだけだ」


 ジュナは所詮、経験に乏しいただの娘なのだと思い知る。誰かを愛し、利他的な行いをしようなどという思考は、光の中を生きる表側の世界の人間が持つ感性にすぎない。


 影の中を生き、影の中で死ぬガザイ達のような人間に、仲間を利用した人質などという作戦が通用するはずもないのである。


 「支度を続けろ、手はずの通り各所の出入り口に厳重な見張りを徹底させ――」


 命令を伝えていたガザイは、部下の表情の違和感に気づき、言葉を止めた。はっきりとした顔で話を聞いていたはずの目の前の男が、まるで強い酒でも詰め込まれたかのように、目の焦点がはずれ、ふらふらと肩を揺らしている。その顔、態度はまるで、意思を失った人形のようだった。


 それは、突然に起こった。


 「ぎがァッ!」


 獣のような呻き声をあげ、部下の男が腰の短剣を引き抜き、ガザイに襲いかかる。


 また、同室にいた別の部下が、

 「……俺の娘を……返せェ!」

 そう叫びながら、ガザイへ掴みかかろうとした。


 不意を突かれ、ガザイは背中から地面に倒れ、肘を擦って後退する。

 「待てッ、なにを言って――」


 襲いかかってきた男に子などいないのだ。


 一瞬惑うが、すぐに原因に思い至る。部屋の奥、入り口に女が立っていた。このムツキに雇われているクダカという名の医師だ。だが、彼女もまた正気を失ったかのようにぼんやりと佇むだけ。しかし、その真後ろから、半分だけ顔を覗かせるウルガラの姿があった。その顔は、見た事もないほど怒りに満ちている。


 「火をつけたら、殺す。ハイちゃんを死なせたら、全員殺して、私も死ぬ」


 その宣言は囁くような小声だったが、腹の底まで響くような負の力が込められていた。


 ウルガラに操られた二人の部下は、ガザイを警戒したように正面を向けたまま、じりじりと後退していく。ウルガラと、その力に操られた三人は、静かに部屋を後にして姿を消した。


 倒れたガザイを、無事にすんだ部下の一人が引き起こした。

 「今すぐ追って始末を――」


 「やめろッ――」


 ガザイは強く制止し、


 「――ウルガラめ、あれほどの力を……不用意に手を出せば、派手な同士討ちになりかねん。気を鎮めるまであれには触れるな」


 ウルガラが持つ彩石の力は、他者の記憶をすり替える。その応用で自身の意に沿う行動をとるよう人を操るのだ。


 薬物の補助もなしに、同時に三人を操れるほどの力を秘めていた事を、ガザイは知らなかった。だが、さきほど発現させていた力はおそらく、火事場の馬鹿力の類なのだ。幼なじみとして、ウルガラがハイズリに懐いていたことはガザイもよく知っていたが、その身を案じ、ここまでの暴走をするなど、予想外の事であった。


 追撃を止められた部下が、

 「では頭領、この作戦は……」


 ガザイは顔を歪めて首肯し、

 「中止とする……このこと、口を閉ざすよう皆によく知らしめよ。ゼラン様の耳に入れば、無事に済まされることはあるまい…………くそ、なんたる失態か」


 この時、ガザイは戦場へ向かったムラクモ軍の大勝を切に願っていた。


 ゼランが目的の通り、敵の燦光石を打ち破ったのなら、この失敗を報告したところで笑って許される可能性は高い。が、万が一、そうでなかったとしたら。


 ガザイは床に落ちていた文を拾い、細切れに破き、すべてを腹の底へ飲み下した。


 予定を狂わされ、空いた時間のすべてを、ゼランへの言い訳を考えるために浪費しなければならない。それを思うと、目の下の皮膚が意思とは関係なく痙攣を起こした。




     *




 睨み合う大軍が白道の上を埋めている。


 白みを帯びた冬空の下、時折肌を刺すような突風が地上を吹き抜ける。


 視界には一点の曇りもなく、不気味なほど、辺りは静かだ。


 東を睨むターフェスタ軍指揮官、プラチナ・ワーベリアムが馬上から不動棒を高らかに振り上げる。棒の先で白道を強く打ち鳴らすと同時に、ターフェスタ軍の兵士達が一斉に足を踏み、靴音を鳴らした。


 左翼から右翼へ、なぞるように馬を進め、一定の距離を刻む度に不動棒を振り上げる一連の動作を繰り返す。その度に、兵士達の間から上がる足音が重く強さを増し、深界一帯に轟き、響いた。




     *




 ――これが本当に同じ軍隊なのか。


 ムラクモ軍古参の重輝士バレンは、視界に収まる光景を見て、感想を心の内で語る。


 プラチナの指揮下にあるターフェスタ軍の姿。先の戦いのせいか、群れの形は痩せて見えるが、その威勢は比べものにならないほど士気が高く、皆が集中し、怯えを窺わせる気配は微塵もない。


 一方のムラクモ軍は、先の戦いで狂鬼がもたらした経験から恐怖がすりこまれ、前にいる敵よりも周囲の灰色の森を警戒し、怯えた心を隠せずにいる者が多くいた。


 本来、指揮官の側にあるべきアガサス家の面々は、下級の輝士達に紛れるように身を置き、戦場の指揮官たるアスオン・リーゴールからは離れた場所に配置されていた。


 騎乗する輝士、また後列に身を置く晶士達の中には負傷を抱えて参加している者が多数いる。


 彼らと同じく、怪我を負った状態のまま戦場に連れ出されたバレンを、レオンとテッサがしきりにその身を案じ、世話を焼いていた。だが、毒を負って寝込んでいたテッサにしても、その身は未だ万全ではないのだ。


 遠目に見えるアスオンを見つけ、バレンは急ぎ馬を進めた。が、ゼラン・サーペンティアが連れてきた補充の輝士達が、素早く前を塞ぎ、近寄ることができない。


 「アスオン殿ッ、リーゴール司令官代理!」


 呼んでも、アスオンは顔を向けなかった。強引に前へ押しかけようとするも、補充の輝士達に押され、負傷をかかえたバレンは、たやすく身体の均衡を崩して落馬する。


 レオンとテッサが駆け寄り、バレンを抱き起こし、後ろへ移動した。


 「父上、ご無事ですか」


 「……お前達、この戦のこと、詳細を王都に持ち帰るまで、誰かがかならず生きて戻らねばならん。命を惜しめ、功を望むな」


 「命令に逆らうおつもりですか」

 深刻な顔をしたテッサが小声で問うた。


 「無策のまま、未知の強大な力を持った敵を相手にするのだ。勝利の道は霞んでいるが、敗北の道は幾通りにも見通せる。早々に撤退指示が下される可能性を考慮し、我々は突撃命令が出ると同時にシュオウ殿の隊と合流、その守護につく……命の恩義に報いるときだ」


 アスオンは司令官代理としての立場から命令を出し、ムツキに配置されている、ほぼすべての人間を戦場へ駆り出していた。例外は司令官とそれに近しい一部の幹部達、それに身動きができないほどの重傷を抱えた者達だけだ。


 その命令は酷く不合理ではあるが、無理を押し通すための軍律の抜け道などいくらでも存在する。ましてや、その主張に加担しているのがサーペンティアという大貴族の家柄の人間であれば、尚のことだった。


 表向き、ジェダ・サーペンティアの所属となっているシュオウ隊は、隊長であるシュオウ個人が雇う私兵達であることをバレン達はよく知っている。また、彼が隊の者達を大切に扱っていることもだ。しかしその隊の者達は、大勢が戦闘員ではないという事情も考慮されず、無理矢理戦場へ連れ出されていた。


 命の恩人が大切に思う隊を守る、その意思をバレンから聞かされたレオンとテッサは、気勢を上げて、同時に強く頷いた。




     *




 「まるで女神を盲信する信者の群れではないか」


 熱狂するターフェスタ軍の兵士達をみてオーデインは冷笑した。

 

 沸き立つ大軍の中にあって、カトレイの派遣軍は冷めた鉄のように動じることなく鎮まっている。


 オーデインは一人、冷徹に現状を評価していた。


 ターフェスタとカトレイが結んだ契約により、勝利を得れば特別賞与が発生する。大義を掲げて精鋭輝士達を派遣していたリシアとは違い、カトレイはただ、金を得るための商売として参戦しているのだ。売り手として、その指揮をまかされているオーデインの評価は、派遣軍の損耗を少なく、可能な限りの出費を減らし、より多くの儲けを引き出すことで得ることができる。


 志も意義も持たない、金で雇われた軍の士気は低く、つかずはなれずの位置から、契約に基づいた最低限の働きをすること以外に、兵士達の気持ちはないのだ。


 「まさか、戦場でワーベリアムの戦いを見られるとは思っていませんでしたよ」


 部下の言葉にオーデインは皮肉に片頬をあげて、


 「燦光石の力をこの目で見られる絶好の好機、せいぜい遠目から拝ませていただくとしよう」




     *




 「あれが銀星石……美人ではないか、華のある獲物も悪くない」

 望遠鏡を手に、ゼランは敵軍の指揮官の容姿を得意げに評価する。


 アスオンは、プラチナ・ワーベリアムの威風ある態度に気圧されていた。遠目に見えるその姿は、一見して美しいだけの若い娘にも見える。だが兵を鼓舞するその様たるや、自信に溢れる一つ一つの所作は、まるで歴戦の将軍そのものだ。


 「……勝てるのでしょうか」

 喧噪に掻き消されるすれすれの声で、アスオンは静かにこぼした。


 ゼランは敵陣を眺めて鼻を鳴らし、

 「見ろ、あの痩せた軍を――」


 正面から見えるかぎりでも、ターフェスタ軍の兵数が不足しているのが見て取れる。ゼランの言うように、隙間が目立つ陣の様子から、ターフェスタが万全の状態ではないことは明らかだった。


 ゼランは高慢に鼻を高くし、


 「思った通りだった。奴らは自軍の不利を燦光石で隠そうとしていただけ。もしワーベリアムの威名に恐れをなし、停戦の約束を交わしていれば、この勝機を逃していたにちがいない。戦争を生業とする臆病者達の言葉など、やはり聞くに値しなかった」


 ゼランは言って、アスオンへ左手を差し出した。


 意図を汲み取れず、アスオンは戸惑い、真意を窺う。

 「あの……?」


 「よくぞ愚か者共に惑わされずに、奴らを押さえてつけてくれた。この戦場を用意したのはリーゴール家の功績に他ならない。ここは紛れもなく、貴殿のための戦場だ。蛇紋石を継いだ後も、今日の日の事は覚えておくと約束しよう」

 

 アスオンは手をとり、

 「……はい。恐れ入ります、ゼラン様」


 戦場に轟くターフェスタ軍の音がぴたりと消えた。


 「連中、喚き散らすのに飽きたようだな、いよいよか」


 それは、アスオンは頷いたのと同時に起こった。


 「雪?」


 アスオンはその言葉を口に出し、空を見上げて手の平を向ける。


 それは銀色に輝く雪のような何かだった。晴天の空を覆い尽くすほど、深界に広く、ゆったりとした速度で、それは降りしきる。


 ムラクモ軍全体が、重たいざわめきに支配された。


 「これが、銀星石――」


 手の平の落ちた銀の雪を見ながら、ゼランが呟いた。


 「――目くらましのつもりか、風を支配する蛇紋石の足元にも及ばん、くだらん力だ」


 ――ちがう。


 ただの目くらましを生み出す力であるはずがない。降り始めた銀色の雪は、手の平に落ちても溶けることはない。そのうえ、微かにだが本物の雪よりも手に重さを感じるのだ。


 ――まるで。


 「金属のようだ……」

 背後に控える輝士達の間からそんな声があがった。


 アスオンは喉を鳴らす。紛れもなく、手の平に乗ったこれは得体の知れない未知の力。功名心の奥に押し込まれていた理性が、僅かに顔を覗かせて心へ訴える――慎重になれ、と。


 ――いまさらだ。


 平和的な交渉を求め、ムツキに訪れた使者の切り離された腕を思い出す。あの時、零れ落ちた血と共に、すでに後には引けぬ、第二の宣戦布告がなされていたのだ。


 ゼランが背後の大軍を振り返り、

 「騒ぐな! こんなもの、虚仮威しにすぎない――」

 抜剣し、剣先を虚空へ突き出した。


 剣をかざしたまま、ゼランはアスオンへ視線をやり、

「こちらは風蛇の精鋭隊で銀星石のみを狙う、他の敗残兵共の刈り取りはまかせたぞ」


 アスオンは頷きを返し、

 「歩兵を進め、戦闘を開始します。よろしいでしょうか」


 「貴殿の戦場だと言った、好きに戦えッ――」


 その時、アスオンはゼランの様子に違和感を覚えていた。いつも自信に満ち、強者としての振る舞いをするゼランの顔に、じっとりとへばりつくような脂汗が浮いている。よく見れば、手綱を握る手は微かに震えを帯びていた。


 「ゼラン様……ッ、戦場のご経験は――」


 言葉は届かず、ゼランは馬を蹴って駆けだした。


 「突撃!」


 合図と共に、両軍でもっとも早くゼランの部隊が突撃を開始する。アスオンは慌てて、歩兵隊への進軍開始を命令した。




     *




 ターフェスタの陣に報告が飛び交った。


 「ムラクモの輝士隊、多数が一塊となって向かってきますッ」


 「軟石兵よりも早く輝士が……プラチナ様!」


 焦りを滲ませるナトロに対しプラチナは、

 「乱れた戦場はむしろ、望むところ――」


 天より降らせていた銀雪の勢いをさらに強めた。銀雪は量を増し、さらに地上へ降り注ぐ。


 広域を銀色に染める降雪、銀星石はその領地を広げ、雪の落ちた一帯はすべて、石の主の支配下に置かれる。銀の雪は、溶けることなく戦場に降り積もっていく。


 銀雪を不動棒で吹き飛ばし、一カ所に寄せ集めた。集められた塊が震え、中から重く、嘶くような獣の声が聞こえてくる。銀雪の小山から、這いずるように四本の前足が現れる。赤い目を光らせる頭が現れ、その巨体を露わにした。


 巨体を奮う八本足の銀の馬。プラチナは颯爽とその馬に跨がり、

 「では、始めましょう――」

 戦闘開始を告げた。




     *




 「美しい――」


 天上から舞い散る銀色の雪を見て、オーデインは率直な感想を述べた。


 「――降り積もらせた金属の塵から物体を生み出す力……主の華やかさとは裏腹に、力として見る銀星石の、なんと泥臭いことか」


 名を冠した特別な輝石も、そこから生じる力には優劣が存在する。それが単純な殺傷力に繋がる能力であるほど、歴史と共に血塗られた逸話が数多く存在するが、ワーベリアム一族が継承してきた銀星石には、そうした恐ろしげな伝説はあまり残されていなかった。


 オーデインは景色に見とれる部下に向け、

 「よく見ておけ、この戦場の記録には価値が生じる」


 高みからの見物を、などと考えていたその時だった。カトレイの兵士達の間から、狼狽する声が上がり始める。


 「バル将軍ッ――」


 引きつった部下の声に、指し示された方向を見る。積もった銀雪の中から、鋭い槍が生み出され、カトレイの兵を取り囲むように幾百と伸びて迫る。


 オーデインは焦りターフェスタ軍の先頭を見た。プラチナは八本足の馬の上から目を合わせ、ただ静かに手にした得物を東の方角へ差し向けている。


 言葉はなくとも、その意は完全に伝わっていた。


 「閣下、背後から槍が迫ってきますッ――」


 積もった銀雪から生み出される槍は、まるで湖面に生じた波のように、前へ、前へと向かってくる。兵士達は迫る槍から逃れようと必死に距離を詰めていた。


 「先に行けと言っている、か――」

 オーデインの首筋に、大粒の汗が伝う。


 カトレイ軍の左右に、大きな音と共に銀色の壁が地面から伸びる。背後から迫る槍束と、左右に展開される頑丈な壁に、兵士らの惑いと怯えの声が一層大きさを増す。


 「閣下、このままでは逃げ場が!」


 オーデインは顔面をひきつらせ、

 「ええいッ! 全歩兵隊前進――前衛輝士隊は各個判断による遊撃――後衛隊は敵陣深部を射程に収めるまで前進、晶士を護衛しつつ道を切り開け!」


 命令が告げられると同時に、カトレイの兵士達は槍を構え、雄叫びを上げつつ走り出した。


 部下が不安げに、

 「閣下、このままでは我々も……ッ」


 背後から迫る銀色の槍は、広がる波のように今もその動きを止めていない。


 オーデインは歯を食いしばり、遠目にプラチナを睨めつける。


 「この私を露払いにするつもりかッ――」


 吐き捨てるように言って、じわりと前へ馬を進める。まるで格下の兵士の如く、突撃を強制されるようなこの行いは、将の位にあるオーデインにとっては耐えがたいほどの屈辱だった。


 オーデインは部下達へ振り返り、

 「出るぞ、敵歩兵を緩やかに攻めて数を減らし、迂回して本陣に帰還するッ」


 ――一定の成果を上げねば、後ろから刺し殺されかねん。


 馬を駆り、走り出した瞬間、違和感に見舞われた。


 ――重い。


 馬の歩みが明らかに遅い。オーデインの馬は選び抜かれた俊足の戦馬だ。特に白道のように平坦にならされた道では、他を圧倒できるほどの早さを発揮する馬だが、現状はまるで荷運び用の足の太い馬に乗って、泥の中を歩いているような心地がした。


 馬を走らせながら、足元に溜まった銀雪を見た。見た目の性質は雪と似ていても、ここに降り積もっているのは重たい金属の塵なのだ。戦場を駆け抜ける馬たちも、そしてそこを駆け回る人間も、銀色に輝く金属の雪に、まるで沼のように足を取られている。


 オーデインは敵軍から放たれた歩兵の群れを狙った。輝士の視点からすれば、彼らは数が多いだけで脅威とはなりえないが、数の差は戦場での有利と不利を生じさせ圧を生む。故に速やかにその数を減らし前進を阻む事が、輝士に求められる戦場での基本的な作法となる。


 先発させた麾下の兵は、すでに敵軍と衝突を始めている。オーデインは最初に生じた摩擦箇所に集うムラクモの輝士達を避け、散り散りに向かってくる片翼の歩兵隊を叩こうとしていた。だが、


 「閣下!」


 部下の声と共に、進む方向に幾本にも折り重なって生えてきた槍の壁が現れる。プラチナの仕業であると、即座に理解した。


 「ぐぬッ――」


 突然の壁の出現により、進みたい方向から、強制的に進行方向をずらされる。オーデインは歯噛みして状況をたしかめた。


 「また!?」


 声が聞こえ、また前方に壁が発生する。再びオーデインの隊はすれすれで壁を避け、方向転換をした。


 「正面に敵の輝士部隊!」


 その報告の通り、進路を変えられた先には、ムラクモ軍から先発していた輝士隊がいた。群れの数は十数人、早さと強さを備えつつ、少数で隊を成して戦場を駆ける輝士には珍しく、この部隊は不気味に大勢を束ねて一直線にターフェスタ本陣へと向かってくる。その先にいるのは、司令官たるプラチナだ。


 オーデインの目に、この部隊は一直線に大将の首を狙い、捨て身の突撃を仕掛けているように映る。衝突は避けたかったが、その意を察知しているかのように、プラチナにより創造される槍の壁は、方向を変えるための進路をことごとく潰すように地面から現れる。


 ここへ至り、オーデインは腹の底に凍えるような恐怖を感じた。


 ――操られている。


 まるで人形を用いて戦争ごっこをする子供のように、プラチナは銀星石の力を用いて、言葉や指示もなく、意のままに進む先を強制する。そこには自由な意思もなく、位への配慮もなく、ただただ、戦場という盤に置く駒として、意のままに動かされるだけ。


 行く道は、もはや戦場ではなく、プラチナという一人の人間の手の平の上なのだ。


 きれい事ばかりを吐き、まるで聖人のように振る舞うプラチナという人物に対し、オーデインはその実態を見誤っていた事を自覚する。彼女が派遣軍の仕事ぶりに不満と怒りを持っていることは知っていたが、戦場でここまで意趣返しをするとは思っていなかった。


 ――やるしかない。


 戦場のど真ん中で、背を向ければ敵に殺される。選択可能な活路は一つ、敵を倒して突破するのみ。


 勝機は見える。オーデインが率いる輝士部隊は選りすぐりの実力者が揃っている。数では劣っていても、それを覆せるだけの能力の差はあると思っていた。多少の損害は覚悟の上である。


 金で買われる軍隊を率いるオーデインの頭の中は、常に損得の勘定に占められていた。提供する戦力、失う兵数、兵糧の消費や装備の消耗にかかる諸費用等々――だが、この瞬間、オーデインは自らの意思とは反する戦いの場に引きずりだされ、その瞬間に思い描いた損得勘定を見誤った。


 群れとなった輝士達が正面からぶつかり合う。晶壁による守りと、晶気による攻撃。ぶつかり際に、より重たい側が相手を吹き飛ばし、勝者となる。


 彩石を持つ者達が持てる力を一瞬に集約する、その瞬間――オーデインの部隊は血みどろとなって崩れ落ちた。


 ――あたた、かい……?


 喉に温い感触が伝わる。オーデインは首に触れた。小さく割けた切れ目から、息をする度に泡を伴う血が零れ出る。


 ゆるやかに流れて見える景色の先に、無傷で通り過ぎていく青い軍服の輝士達の群れ、その後ろ姿があった。


 四肢を散らして崩れ落ちる馬や人。一瞬で壊滅した部下達は、絶え絶えの息で白道の上で苦悶する。時をおいて、遅れて駆けつけたムラクモの従士達が一斉に武器を突き立てた。


 鎧の隙間から冷たい刃を全身に刺され、オーデインは息を止めた。


 死の間際、二つの事を呪った。衝突した捨て身の輝士隊が、想像を絶するほどの手練れを集めた最精鋭部隊であったこと、そして、おそらくこの突撃部隊の力を計るため、オーデインを強制的にこの状況に追い込んだ、一人の女の事を。




     *




 戦場という渦中にあって、クモカリは恐怖と混乱の中でただじっと盾を構えて身を縮めていた。


 立っていられる者は強制参加、という無茶な命令を受けたシュオウの隊に属する者達は、戦場には不釣り合いな老人、それに荒事の経験がない下働きに従事していた者達までもが、全員戦場に駆り出されていた。


 戦闘訓練を受けた傭兵や若い男達が、頑強な盾を構えて、戦いに不向きな者達を守るように囲んでいるが、前進を命じられ、戦場の中程にいたり、陣を組んで固まりとなり、甲羅に籠もった亀のようにじっと動きを止めたこの隊は、戦場で浮いた存在となっていた。


 振り返ると、皆の怯えた視線がクモカリを捕らえて放さない。彼らが自然とそうした態度をみせるのは、隊長であるシュオウとクモカリが、近しい関係にあると知っているせいもあるのだろう。


 だが、クモカリは自身も抑えきれない激しい恐怖と戦っていた。化け物である狂鬼を相手に大斧を振るうことはできても、人間を相手に刃物を振り下ろすことなど、考える事すら恐ろしいのである。


 天上から降る銀色の雪を頭に乗せながら、ソバトがクモカリへ詰め寄り、

 「クモさんッ、このまま固まってたら敵の餌食にされちまう!」

 盾を構えながらそう叫んだ。


 クモカリは大きな身体を盾の中に収めたまま、

 「耐えるしかないわ、あたし達が散らばったらだめなのよ、みんなを守らないとッ――」


 給仕や掃除、洗濯をしていた者達、牢番をしていた、よぼよぼの老人オガロクまでもが、この戦場で身を寄せ合っている。クモカリはここにいるはずだった一人の少女の事を心配していた。


 ――ユギク。


 朝から、彼女の姿を見た者はおらず、戦いの支度を急かされて、ムツキを出発する間際、クモカリはユギクがどこにもいない事に気がついた。


 居所がわからないユギクを心配する一方、


 ――逃げられたのなら。


 命を賭けた無謀な戦いへ連れ出される前に、自力で逃げ出すことができたのだとしたら、それでいいとも思っていた。


 「来るぞッ……輝士に目をつけられた!」


 ソバトの報告を聞き、クモカリは重ねた盾の隙間から先を覗き見た。黄土色の軍服を纏う三人の輝士隊が、集団として足を止めるクモカリ達の方へ駆けてくる。


 盾の後ろで守られている者達が、危機を察知して震え、悲鳴をあげはじめた。


 クモカリは、

 「みんな集まって! 盾を構えて! やるしかないわ……」


 戦い慣れた年配の傭兵達は、盾を持ちつつ、片方の手で短槍を構えて迎え撃つ用意をしている。


 銀色の雪に混じって、各所から兵士達の悲鳴や怒号が絶え間なく鳴り続けている。人と人とが殺し合う戦場に始めて立ち、クモカリの盾を構える手は、激しく震えを帯びていた。


 「くるぞッ!」


 誰かが叫び、か弱い娘達が悲鳴をあげた。


 ――シュオウ。


 心の中で、いるはずのない人物に助けを求める。


 隊の男達が声をあげ、盾を二列に折り重ねて構えた。ゴトゴトと盾がぶつかり合う音がした直後、横合いから青い軍服を纏うムラクモの輝士隊が割って入る。


 まるで隊を守るように前に躍り出た三人の輝士隊を見て、黄土色の軍服を纏う敵の輝士隊は、急な方向転換をして別々の方へと散っていった。


 「無事か」


 馬上から声をかけてきたのは、ムツキでは高位に属する重輝士、バレン・アガサスだった。左右にはバレンの二人の子が控えている。


 クモカリは僅かに腰を浮かせ、

 「あの、はい……」


 クモカリも、そして周りにいる傭兵達や、ソバトらも驚いていた。輝士がわざわざ、彩石を持たない戦場の捨て石を守るために、駆けつけてくれるなどとは思っていなかったのだ。


 バレンは頷いて、

 「これ以上前へ出る必要はない。できるかぎり防御を固め、内にいる者達を守るのだ。この隊は我らアガサス家が守護につく。私の指揮に従え」


 クモカリは強く首肯し、同意を告げた。




     *




 「ゼラン様、さきほど破った輝士隊、率いていたのはおそらく、カトレイの指揮官級です。証明を得れば御身の功となりましょう」


 白道を駆けながら、護衛として併走する精鋭部隊の一人がそう告げた。


 ゼランは虫でも遠ざけるように手を払い、

 「かまうな、そんな小粒に用はない――」


 ゼランの頭の中は銀星石を狩る事のみで染まっていた。燦光石を打ち破れば、それはまさしく希代の英雄として名が残る歴史的な大功となる。当主の石を得れば、それを引き換えに領地の明け渡しや莫大な額の賠償金の獲得も期待できる。


 銀星石の討伐という手柄の大きさ、そこから得られるものはまさに、想像を絶する。


 そしてなにより、


 ――後継の座を確たるものに。


 次代の蛇紋石。その比類なき第一継承者としての立場を固めるため、これほどの賞杯は他にはないのだ。


 銀星石を持つプラチナは、ゼランにとっては幸運な事に、戦場へのこのこと現れたうえ、奥に隠れているわけでもなく、最前列に立って健気に弱小な兵達を鼓舞している。


 きっとプラチナは理解していないのだろう、とゼランは思った。突撃をかけるこの部隊が、広大なムラクモという国の中にあって、特上の実力者を束ねた集団であることを。


 父が不出来な末弟のためにと用意させた部隊編成の経緯は不快だったが、現状でこの精鋭部隊の指揮権を手にしているのは、まさに降って湧いた幸運だった。


 前を行く輝士の一人が速度を落とし、ゼランに声が届く位置まで距離を縮める。


 「ゼラン様、銀星石の能力は不気味です。様子見のため速度を落として距離を保ち、二手に分かれて出方を窺いましょう」


 「だめだ! 一体の強敵を討つため、我らは束の矢となって銀星石を倒す。命令だ、このまま突撃を敢行しろ!」


 一瞬の間を置き輝士は、

 「……はッ」

 と承知を告げた。


 一点集中で突破を計る。ゼランの号令のもと、部隊はさらに速度をあげた。




     *




 瞬くこともなく、茫洋とした深界の戦場を流し見る。

 プラチナは空中を鷲掴みするように、突き出した右手の指を折った姿勢のまま静止していた。


 静寂を保つターフェスタ軍の先頭で、一報が上がる。


 「准将にご報告ッ――オーデイン・バルの部隊が壊滅、先発のカトレイ軍は劣勢、中央の戦線を押されつつあります」


 実質的に、オーデインが死んだ事を告げる知らせが上がっても、沈黙を保つプラチナに合わせたように、ターフェスタ軍には一切の熱は起こらない。


 「敵、蛇の紋章を掲げた輝士隊、真っ直ぐこちらへ突っ込んできます、あの部隊はおそらく……」


 棒を肩に置く副官、ナトロが告げる。


 「サーペンティア」

 プラチナはそっと呟いた。


 銀雪はなおも降りている。白と灰に染まった世界で、プラチナは右手を下ろし、味方の軍を一望した。


 「予定通りに、主力部隊を二手に分け両翼へ展開。晶士隊は遅れて中央へ。各々、指揮をよろしく頼みます――」


 指示をとばし、不動棒を振り掲げた。


 「――全軍へ告げる、進撃、開始ッ!」


 ターフェスタ軍から、怒号に近い雄叫びが一斉に上がった。直後に単騎で飛び出したプラチナの背を、ナトロが必死に呼び止める。


 「先行しては狙われます、護衛をッ――」


 プラチナは振り返ることなく、

 「無用ッ!」


 細い腕で、重たい不動棒を片手で軽々と掌握する。プラチナの並外れた膂力りょりょくは、燦光石をその身に継いだ者が受ける恩恵の一つ、長寿や不老のように、受け手となる側の資質により大きく影響を受ける能力である。


 一身に戦場を駆け上がる。幻想が創造した八本足の馬は、銀雪に足を取られる事もなく、豪速で白道を突き進んだ。目指す先は、集団となって突撃をかけてくる蛇の紋章旗を掲げた輝士の部隊だ。


 輝士の集団は真っ直ぐプラチナを目がけて向かってくる。彼らの目的、狙いは至極わかりやすい。


 ――浅はかな。


 心中、敵に向けて叱咤の言葉を吐く。


 彼らは功名に我を忘れているのだろう。名を持つ石には、それだけの価値はある。


 輝士の集団の中心に、くすんだ薄緑色の髪を持つ輝士の姿が見えた。思わず、神へ感謝の言葉を口ずさむ。


 プラチナは一人、相手は十数人の輝士の群れ。敵の輝士達は、実力者で固められたオーデインの部隊をたやすく打ち破っている。だが、身を案じたナトロの忠告を無視したのは、決して敵を過小評価しているからではない。


 勝敗の行方など、初めから見えていたのだ。


 全力での疾駆、その最中に右手で虚空を掴む。


 「……集塵しゅうじん


 小さな子供が嗜む砂場での泥遊び。水で固めた砂を集め、形を創り出す、銀星石の能力はその延長にある。能力発動のため、金属に似た性質を持つ塵を広域に降らせ、積もらせた塵を集めて物体と成す。


 輝士の集団と自身との間に形を創造する。硬い塵が粘土のように寄り集まり塊と成った。すかさず馬を反転させ、後ろ足で塊を蹴り砕く。砕かれた塊は金属片を撒き散らし、散弾となって輝士の集団を強襲する。前面に展開していた輝士達は、破片を浴びて馬と共に崩れ落ち、後列の輝士達は左右に忙しなく散り始めた。


 散ったムラクモの輝士達を素早く捉える。最初の一人の横っ腹を、不動棒で強烈になぎ払った。咄嗟に晶壁が張られるが、繰り出された不動棒の一撃は壁を突き破り、輝士の体を易々と弾き飛ばす。


 倒れた輝士の後ろ首を叩き、気絶へと導く。


 他の輝士達が、プラチナへ晶気による攻撃をしかける。が、プラチナは不動棒の先を一打、地面に叩きつけ、左右に美しい装飾を施した銀色の大盾創り出し、攻撃のすべてを防ぎきった。


 輝士としての力量差は、赤子と大人ほどもある。


 もはや群れとも呼べぬ状態となった輝士隊に対し、オーデインにしたように、地面から壁や槍の障害を発生させ、進行の自由を奪い去る。戦場では主に、馬の足を主たる武器の一つとしている輝士に対して、枷をはめたに等しい利を得る。


 プラチナは孤立した輝士達を腕力で次々と打ちのめし、ねじ伏せる。その様はまるで、脆弱な生き物の群れに紛れ込んだ一匹の猛獣そのものだった。


 誠実で忠義に厚く、慈愛に満ち、信心深い性格を持つプラチナという人物に対し、持ち得る燦光石と合わせ、その身を玉座に――王にと密かに望む者は、ターフェスタの内外で多く存在する。


 本来のプラチナという人間が持つ資質、人物像を正しく知る者は少ない。だが身近にあって、日常的に触れあってきた一部の者達は知っていた。プラチナ・ワーベリアムが生粋の武将であることを。


 元は三叉槍さんさそうである不動棒は、流血を嫌うプラチナの意により、刃が取り外されている。愚直なまでにただの重たく丈夫な棒が、ムラクモの精鋭輝士達を着実に無力化していった。


 一方的な攻防の果て、突撃をしかけてきた輝士隊が攻めの姿勢を捨て、自陣へと引き返し始める。プラチナは顔を引きつらせ、背を向けて逃げる一人の輝士へ向け、馬を走らせた。


 ――薄緑の髪、蛇の指揮杖。


 ボライトを殺めた者を示す特徴を見つけ、確信へと至る。


 プラチナはまた虚空を鷲掴み、逃げる男の馬の足元に、的確に障害を生み出した。足を取られた馬は転げ、男は戦場の渦中に無防備に落馬する。


 粛々と、馬上から男を見下ろす。怯えた顔、震える口で、男は尻をつけたまま必死に積もった銀の雪の上を這いずった。


 「……ゼラン・サーペンティア……ですか」


 微かに、怯えた目を向けてくる男は首肯した。


 腹の底から、押さえられぬ熱が湧き上がる。反射的に不動棒をゼランの右肩へ穿ち、そのまま右腕を立て続けに強打した。一撃の威力は、硬い白道に易々と穴を開けるほどのもの。その強打を複数回、右腕に受けたゼランは、骨と肉をずたずたにされ、痛みに悲鳴を上げた後、ぐったりとして身動きを止めた。


 「ゼラン様ッ!」


 側面から声がするのと同時、空気を切り裂く鋭い刃音が聞こえ、プラチナは急速に馬の身を半回転によじらせる。次の瞬間、鋭い風刃が右腕に装着した籠手にざっくりと切り痕を残した。


 意識を失ったゼランの元に、三騎の輝士達が駆けつける。一人が盾となって立ちはだかり、二人がゼランを抱えて後方へと走り去って行く。


 プラチナは素早く、立ちはだかった一名を打ち払い、ゼランの後を追おうとした。が、右腕に痛みを感じて確認すると、籠手の下から自身の血が零れていることに気がついた。


 ――我を、忘れた。


 感じる痛みと共に自省する。


 血の滴る腕を垂らし、天を仰ぎ見る。プラチナは深い呼吸を繰り返し、ゼランを連れて去って行く輝士達から、視線をはずした。


 入り乱れる両軍の輝士達の前に躍り出る。果敢にも、プラチナに戦いを挑む輝士隊を、力と技でねじ伏せていく。


 戦場の中央は、プラチナの独壇場とかしていた。


 戦いを挑む者はもはやない。輝士達や彩石を持たない兵士達は左右へ散って行き、返り討ちを警戒して戻ってくる者もいない。怯え、惑う敵軍の兵達へ、左右両翼に展開していたターフェスタ軍の主力が襲いかかる。数で明らかな劣勢であったターフェスタ軍は、混乱状態に陥ったムラクモの輝士を、次々と仕留めていった。


 リディア・ワーベリアムが率いる晶士隊は、一塊となって、プラチナによって切り開かれた戦場の中心部へ到達していた。


 「敵に先手を取られます!」


 晶士隊を警護する輝士隊から声があがった。


 轟音と共に、巨大な水球と巨岩が、東から空へ打ち上がある。


 プラチナは空に向かって銀の馬を跳躍させた。直後、自身の身体を後ろへ滑らせて馬を降りる。着地の瞬間、乱れた髪をかき上げ、空へ舞い上がった馬へ右手を向けて拳を握った。馬は悲鳴にも似た冷たい音を奏でた後、柔軟に形を変え、その姿を巨大な盾へと変化させる。降りてくる銀の雪を吸収しつつ、その大きさをさらに増し、先に到達した巨岩を防ぎ、砕き割る。散った石塊が砂のように舞い、辺りの視界を鈍らせた。


 だが、まだ二撃目が残っている。


 やや遅れて、発光する巨大な水球が向かってくる。狙いは正確、強い発光を帯び、凝縮された重たい水の塊だ。下敷きとなれば、プラチナを含め大勢を圧殺するに至る威力を秘めていた。


 天空に張り巡らせた巨大な盾と水球が衝突した。ばり、と盾がひび割れる耳障りな音が一帯に響く。


 プラチナは歯を食いしばり、眉間に皺を寄せた。視界に入る降り積もった銀の雪を生え伸びる槍と化し、まるで打ち寄せる波のように、左右から自身の前へとかき集める。両面から同時に衝突した無数の槍は、そのまま巨木のように空へ伸び、上空の巨大な盾を幹のように支える。数瞬の後、盾は水球の威力に負けて砕け散った。だが、水球も同時に形を失い、ただ雨のように砕けた水滴となって地面を濡らす。


 プラチナは振り返り、

 「前進!」

 と晶士隊に命じる。


 晶士隊は速やかに奥へと進み、

 「配置整いました、敵陣、最奥へ届きます!」

 報告したリディアがプラチナへ頷いて見せる。


 プラチナは頷き返し、

 「中央及び両翼へ――」

 掲げた不動棒を東に差し向け、

 「――放てッ」


 ターフェスタ軍から放たれた晶士の砲撃が、ムラクモ軍の深部を蹂躙する。その轟音が鳴った瞬間、戦場の勝敗は決した。




     *




 なおも降りしきる銀雪が、じっと本陣に身を置くアスオンの肩や髪に積もっていた。


 中央を抜けてきた晶士を擁すると思われる部隊に対し、ムラクモ軍は晶士の砲撃で先制した。二発の轟音が響くのと同時、戦場は霞に覆われ、結果を確認することができずにいた。


 アスオンは部下達へ、

 「砲撃の成果はどうなっている、結果の報告をッ」


 しかし、アスオンもわかっていた。未だどこからも成果を知らせる報告はあがっていないのである。その代わりに、


 「銀星石が中央を突破、すでに制圧されているとのことッ――」


 アスオンはその報告を受け、青ざめた。


 「制圧……?! なにをやっている……中央に配置した遊撃の輝士隊はどこにいった」


 「わかり、ません」


 そこに人がいなければ、そこで起こっている事もわからない。アスオンの脳裏に、無数の不安が駆け抜ける。


 ――ゼラン様。


 戦場で誰よりも早く、中央を駆け抜けていったゼラン。だが、銀星石が健在あるとすれば、作戦は失敗したということになる。


 「ゼラン様はご無事なのか? 誰か姿を確認した者はッ」


 問うた相手も、他の誰も、答える事が出来る者はいない。


 「アスオン様、視界が――」


 一人が言った。曇っていた先の視界が、徐々に鮮明さを取り戻す。アスオンは先に見えるものを見上げて絶句した。


 ――大樹?


 それはまるで枯れた冬の大樹だった。戦場の真ん中に、いつのまにか地面から太い幹が生えている。


 これが、銀星石の力の成せる技なのだとすれば、

 「まさか――」


 「空を!」

 誰かがそう叫んだ。


 空気を押し潰すような重たい音が耳朶を埋める。天空を飛翔する巨岩が、アスオン率いる本陣に直撃した。


 爆音が鳴り、騎乗する馬ごと身体を吹き飛ばされる。悲鳴が聞こえ、どこからか千切れ飛んだきた人の腕が、アスオンの顔面を強打した。




 「――スオン様――司令官代理!」


 気がつくと、アスオンは肩を支えられ、必死に呼び起こされていた。


 「あ……あ、あ……」


 どこが痛いのかも、もはやわからない。全身を打ち、自分のものか他人のものかもわからない血に塗れている。


 「我が軍は壊滅的な損害を受けました。全軍の秩序は崩壊、すでに独自に撤退を始めている者達もいます。アスオン様、指揮官としての正式な命令を!」


 惨い死に方をした人や馬の死体が、どこを見ても視界に収まる。生き地獄のような光景を前にしてアスオンは、


 ――逃げないと。


 「て……った――」


 命令を最後まで告げるより先に、アスオンは意識を手放した。




     *




 本隊が傷を負えば兵は動揺する。左右へ展開していた部隊が、士気を喪失したムラクモ軍を次々と打ち破る快報が届き始める。まもなく、東方から退却を告げる音が深界に鳴り響き、勝利を確信したターフェスタ軍からは、歓喜の雄叫びがそこかしこで上がり始めた。


 プラチナの下へナトロが破顔して駆けつけ、

 「敵が逃げていきます! 大勝ですッ、このままとどめを刺しましょう、プラチナ様、追撃のご命令を――」


 プラチナは言葉を遮るように不動棒で白道を打ち鳴らし、

 「追撃は禁止、全軍この場での停止を命じます」


 ナトロは表情を曇らせて歯を剥き、

 「ですがッ――」


 そこへ、黄土色の軍服を纏うカトレイの輝士が現れた。プラチナの前で下馬し、一礼する。


 「バル将軍の戦死を確認いたしました。序列に基づき、私が兵団の指揮を引き継ぎます」


 その輝士は重輝士の階級にある事を示す階級章をつけていた。


 プラチナは重輝士へ頷きを返し、ナトロへ視線を向ける。


 「両軍は死闘の末、痛み分けとして本拠へ帰還することになった。この戦場に勝者はいません」


 言葉を聞き、ナトロは何かに気づいたようにはっとして、カトレイの指揮官を顔を窺った。


 プラチナは横目で重輝士を睨めつけ、

 「いいですね」


 重輝士は渋い顔をするが、すぐに頷き、

 「承知、いたしました……我が軍は死傷者を多数出し、壊滅的な状況です。急ぎ負傷者の治療にあたるため、先んじての帰還のご許可を願えますか」


 プラチナは僅かに視線を落とし、

 「ええ……許可します」


 一礼し、カトレイの指揮官が去った後、プラチナはナトロへ指示を投げる。


 「速やかに負傷者を収容、生存しているムラクモの負傷兵も回収します。捕虜として丁重に扱うよう、全軍へ徹底を」


 承知を告げたナトロが去り際、

 「あの男……見かけませんでしたね」


 プラチナは頷き、ナトロは自身の部下達へ指示を与えに向かった。


 静かに控えていたリディアが、腰から下げた水筒と手巾を持ち、プラチナへ差し出した。


 「おからだを大切になさってください……」


 頬は微かにこけ、目の下は暗く色を落としていた。疲労が全身に張り付く。油断をした瞬間、今にも膝を折ってしまいそうだった。


 リディアは血の滴るプラチナの片腕に応急処置をし、また別の負傷者の下へと向かう。


 プラチナは、未だ余熱の燻る戦場を俯瞰した。降雪は止み、後には白道を覆い尽くす銀雪が一帯を覆い尽くしている。


 受け取った水筒に口をつけ、空を仰ぐように乾いた喉を潤した。口を濡らした水筒の水は、微かに蜜を含み、ほんのりと心地良い甘みが、疲れた身体を微かに癒やした。


 落ちてきた重たい雪の最後の一片を手に乗せ、プラチナは天を仰ぎ見、涙を溜めて、弔いの言葉を空へと贈った。











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12月28日、書籍版ラピスの心臓3巻が発売されます。

合わせて1巻、2巻、3巻の電子書籍版も同時に発売されますので、是非購入のご検討、よろしくおねがいします。

本の内容、詳細については活動報告に記事を載せてあります。


【予告】

次回、シュオウとその仲間達の動向を中心にしたエピソードになります。

投稿は来年1月に出せるよう、執筆進めてまいります。

詳細な日にちの予定がたってから、また改めて活動報告にのせたいと思います。


とても寒い日が続いています。

皆様の無事と健康を祈りつつ……どうかよいお年をお迎えください。


それでは、また!


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小説の表紙
― 新着の感想 ―
[良い点] プラチナ様のご活躍が、描かれて何よりです。 この力、シュオウの能力に対しても有効なのでは。両者の対決はあるのか… ゼラン瀕死も生き残ったか… 可哀想な末路を期待。
[一言] りょ、呂布だああああああ
[良い点] ジュナがすごく良い! [気になる点] 兵器としては優秀だけど政治能力はgdgdなプラチナが今後どのように終戦させるつもりなのか気になります。 今のままだと、この戦いは勝っても負けてもターフ…
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