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ラピスの心臓  作者: 羽二重銀太郎
銀星石攻略編
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流転 6

流転 6






 揺らぐことのない強い視線から、思わず目をそらしたくなる。だが、同時にこの相手に見つめられていることに、不思議な安堵を感じる気持ちもあった。


 シュオウ――その名を持つ男がいま目の前にいて、セレスの胸ぐらを掴み上げている。


「なぜ、ここに……?」


 望んでいたわけでもなく、訪れた刹那の出会いの末に、その存在はセレスの運命を大きく異なる方向へねじ曲げた。


 劇的な記憶と共に刻まれた顔と名前、その後に聞き知っていた彼の人生を思い、その存在がいま目の前に在ることに、まるで現実味が得られない。


 シュオウは口を震わせるセレスを見ながら、

「必要なことをやるためにここにいる」

 短く答え、上半身を斜めに傾ける。


 促されるように視線を送ると、消えかけていた世界に音が戻る。


 怒号や悲鳴が轟く一帯で、しかしその様相は変化を見せていた。


 武力で民衆を圧倒していた兵士たちが、その勢いを失いつつあるのだ。前進を続けていた兵士たちは押し戻され、その先には異彩を放つ南方人たちが、武器を手にデュフォスの放った兵士たちに反攻を仕掛けている。


 再び目を合わせたシュオウが小さく頷く。


 セレスは、

「よかった……」 


 弱き者たちを守ろうとしている者たちがいたこと。その手が届くまで、時間を稼ぐ事ができたことを思い、セレスは安堵の気持ちを吐露する。


 心配していた者たちに救いの手が差し伸べられ、暗い現状に一筋の光明が差し込んでいた。


 役目を終えた――その安堵を見透かしたように、シュオウは強くセレスを凝視する。


「まだなにも終わってない」

 シュオウは厳しい口調で言って、その視線を先にいるデュフォスに向ける。


 セレスは首を振り、

「言った通り、僕にはもう力が――」


 シュオウは首を傾け、掴んでいたセレスの胸ぐらから手を離した。


 背中が地面に倒れる衝撃を覚悟して目を閉じたセレスは、すぐに驚いて目を開く。


「……?」

 体は倒れることなく、自身の力によって上半身が支えられていた。


「すぐに掴んでいた手が軽くなった。まだやれるのに、なんで途中で止めようとする。やりたいことがあったんじゃないのか、だからそうなるまで、一人で戦っていたんだろ」


 呼吸は整い、震えは止まる。シュオウを見上げ、奥歯を噛んで頷いた。


 シュオウは再び手を差し出し、

「だったら、立て――」


 向けられる声は硬く、表情は険しい。しかし、差し伸べられた手を掴んだ瞬間、まるで溺れた水中から助け出されるかのように、強く全身を引き上げられた。


 勢いのまま前のめりに立ち上がり、後ろを振り返ろうとした時、


『前だけを見ろ――』


 背中から聞こえてくる声に導かれるように、全身を強く固定する。


『息をしろ――』


 深く吸い、そして吐く。


 人々の匂い、街の匂いを感じながら、周囲を抜ける風を我が物として呼び集める。


 ――まだ。


 集めた風を全身に纏い、凝縮して大鎌の形へ昇華する。打倒の意志を込めて、見つめる先にいる一人の人物を凝視した。


 ウィゼ・デュフォス。もはや彼に対して特別な感情など微塵もない。それはただ、やりかけの義務であり、終わらせる価値のある使命だった。


 ――終わってない。


 セレスは爆風を残して前方へ跳び出した。


 視界の奥にいるデュフォスが、慌てて輝士たちに指示を送っているのが見える。彼らに対策をとられていることをわかっていながら、最大の速度を維持して目標との距離を詰めるには、直線を進むほかにない。


 セレスは大勢の前で何度も手の内を見せてきた。その結果、数に勝る相手側に対策をとられるのは必然のことである。


 来るとわかっていれば待ち受けられる。それを知りながら、しかしセレスはあえて愚直にこれまでと同じ方法を選択した。


 ただ真っ直ぐ、標的に向かって突き進む。先ほどと同じく、輝士たちがデュフォスの前面に展開し、両翼からセレスを待ち受ける。


 デュフォスは手足のように輝士たちを使い、勝ち誇った顔で顎をあげた。


 待ち構える輝士たちを目前に控え、その場で急遽地面を踏みしめ速度を落とした。その勢いのまま、手にしていた大鎌を手放し、回転をつけて投擲する。


 驚愕する輝士たちの横を通り抜け、晶気の大鎌が回転をつけながら空中を突き進む。


 大鎌の鋭さは本来、直接手元で風の晶気を行使し続けることで得られるものである。投擲することに特化させたものではないその大鎌を手放せば、威力が落ちることは必然だった。


 しかし、セレスはこの方法をあえて選択した。


 待ち受ける敵を回避して攻め込むほどの余力はなく、残された体力はあと僅か。無理に近づけば罠にかかり、それをどうにかくぐりぬけたところで、デュフォスの晶気に囚われる。


 セレスの力が本領を発揮するのは、敵に気取られる前に仕留めることであり、現状で打てる最後の一手は、やはり不意をつく戦法しかない。


 大鎌は空を切り裂きながら豪速でデュフォス目がけて飛翔する。その威力は先へ進むほどに減少を続けるが、達すれば致命傷を与えるには十分な威力があるはず。


 それが迫りくるのだと、気づく頃にはすべてが遅く、その一撃は完璧な不意打ちとして機能する。


 大鎌は空を斬って回転を続け、デュフォスの眼前に迫る。それに気づいた時、デュフォスは蒼白となり、顔の前に交差させた両腕を突き出した。


 直撃の寸前――


「ッ?!」


 大鎌は空気に飲まれるように消失し、跡形もなく消え去ってしまう。


 手元から離れた晶気、それが対象に届くまで、威力を維持するだけの力は、もはや残っていなかったのだ。


 晶気は多くの要素に干渉する。特に重要なのは、それを行使する個人の体力、それに精神力といった曖昧な要素も加わる。はっきりとそれを証明する手立てはなくとも、瓶に溜められた水のように、それを流し続ければいつかは空になり、晶気を操る力は確実に枯渇する。


 そうとわかっていても、人生の中で己の限界を知る者は少ない。


「はは……」


 まさに、目に見える限界を迎えた瞬間を目の当たりにして、セレスは膝を落とし、引きつった顔で笑みを浮かべる。


 怯えて縮こまっていたデュフォスが状況を悟り、髪が張り付くほどの汗を拭って、恐怖していたことを隠すように胸を張りながら馬を進ませ、馬上からセレスを見下ろした。


 左右を輝士たちに囲まれながら、セレスは膝をついたままデュフォスを見上げ、

「もう少しで、あなたを倒せたのに」

 そう言いながら、濁りのない微笑みを浮かべる。


 デュフォスは怒りを露わにセレスを睨み、

「そんなにおかしいか? 散々無駄な手間を掛けさせ、結局お前はなにも成せずに死んでいく。哀れな敗者として、そうやって虚勢を張りながら死んでいけ――」


 視界を闇が侵食していく。鼓動が律動を乱し、体が音もなく悲鳴を上げ、世界は濁りのなかに飲まれていく。


 ――今度こそだ。


 なにもかもを出し切った。それはいっそ清々しく、一切の未練を浄化させ、ただ安らかに、笑みを浮かべてその時を待ち受ける。


「存在そのものが、お前のすべてが癪に障る……ッ」


 薄らいでいく視界のなかで、デュフォスが手元に晶気を造り出す様が見て取れる。


 処刑人がターフェスタ随一の権力者、冬華六家の長であるならば、これほど贅沢なこともない。奇妙な満足感を胸に、セレスは抵抗することなく、その場にじっと留まった。


 死を迎えるこのとき、恐怖はなく、もはや目を閉じる必要もない。


 デュフォスがセレスに向け、晶気を放った。前方から強い冷気が迫り来る。終焉の時を待つその一瞬に、セレスは過去の出来事を思い返していた。


 強い恨みと失敗の記憶に塗れた人生で、不思議と、この瞬間に脳裏をよぎるのは、一人の少女と山中の労働に明け暮れた、あの何気ない平坦な日々のことだった。


 ――楽しかったよ。


 過ぎていく風を感じながら、


 ――ありがとう。


 その言葉を胸に抱く。


 放たれたデュフォスの晶気は耳障りな高音を奏でながら、セレスの胸元のすぐ目の前にまで迫る。


 あと少し、あと一瞬のその時、セレスの体は、なにものかに突如真横へと蹴り飛ばされていた。


 直後にデュフォスの晶気は空中のなかに飲まれるようにして消えていく。


 地面に突っ伏したまま、力を振り絞って顔を上げたその先には、力強く直立する、シュオウの姿があった。


 鋭くデュフォスを睨むその横顔を見つめたまま、セレスは限界を迎え、冷たい地面に顔を落とし、深く、闇の奥底へ向けて、意識を手放した。




     *




 記憶のなかにある暗い顔の男とは、まるで別人のような安らかな顔で横たわるセレスを見つめる。


 シュオウはその生死を確かめる暇もなく、割って入った集団のなかで、その統率者をじっと見据えた。


「お前を知っている……」

 声を歪ませ、統率者らしき男が言う。


 見覚えのある彼の姿からはまるで別人のように痩せ衰えた姿をしているが、彼は間違いなく冬華六家の隊長ウィゼ・デュフォスである。


 デュフォスは倒れたセレスを一瞥した後にシュオウを睨み、

「なぜ邪魔をした」


 シュオウは鋭く視線を返し、

「この男はもう抵抗する力を失っている」


「だからなんだ! そいつは上官に反抗したうえ、公国の輝士や兵士を幾人も殺めたのだッ」


 シュオウはセレスを一瞥し、その視線を後方へ向ける。


「俺には、そうする必要があったように見える」


 視線の先に、すでに事切れた民衆たちの亡骸が、いくつも道に転がっている様子が見える。


 この結果を招いたのであろう張本人を前にして、

「この男は、誰かが命じた愚かな決定を、止めようとしていただけだ」

 シュオウは静かに視線を送った。


 デュフォスは鼻頭に皺を寄せ、


「誰にものを言っている……対等な立場に立っているつもりか? 知っているぞ、私が不在の間、殿下に取り入って不相応な地位を得たらしいが、なにを得ようと公国において臣下の序列の最上位に位置するのはこの私だッ。許可なく割って入ったことを悔いてひざまずき、許しを請え! きさまの引き連れる部下たちに私の旗下に加わるよう、今すぐ命じろ!」


 激高するデュフォスに対して、シュオウは静かに首を振り、

「そうするつもりはない」


 デュフォスは軽く手を突き出し、

「ふ、言うだろうと思っていた――」


 直後、シュオウの足元に白く輝く発光現象が発生する。それがデュフォスの晶気による現象だと理解し、シュオウはあえて奥へと踏み込んだ。


 次々と現れる白い光は、地面の上に紋様を描きながら広がっていく。それはまるで意志を持った蔓のように伸び広がり、前へ進むシュオウを追いかける。


 向かって来る、という行動を予測していなかったのか、デュフォスは明らかに狼狽した様子を見せた。


 並外れた動体視力で視る世界を淀みなく駆け抜けながら、シュオウはすれ違いざまに輝士の剣を抜き取り、対象との距離を素早く詰める。


 名門であれ、優れた晶気の使い手であれ、場数を踏んでいない者は、はっきりとそのことが所作に現れる。デュフォスを含め、この場にいる輝士たちのほとんどは、まるで戦い慣れていない様子が見て取れた。


 同じような服を着て、同じように輝士という称号で呼ばれていても、シュオウが見てきたアリオトの輝士たちやボウバイトの輝士たちと比べて、彼らは明らかに異なる趣を滲ませている。


 彩石を持たない身分であるシュオウが、単身で飛び込んできたことに慌てふためいたまま、シュオウの突き出した剣がデュフォスの直前にまで到達した。


 あと僅か、あと少しのところで、しかし剣は白く発光する晶壁によって弾かれる。


 デュフォスの顔に勝ち誇った油断が現れた直後、シュオウは剣を捨て、さらに一歩を踏み込み、晶壁の張られていない側面から、デュフォスのベルトを掴んで引き落とす。


 均衡を崩されたデュフォスはあっけなく馬から落ち、地面に強く体を打ち付けた。


 すかさず、デュフォスの腕に手を伸ばそうとしたその時、


「デュフォス様をお守りしろッ!!」

 輝士たちが声をあげ、シュオウを狙って晶気を放つ。


 放たれた晶気は主を傷つけないよう加減がされていた。微細な調整を加えられたそれらを寸前で避けている間に、否応なくデュフォスとの距離が開いてしまう。すかさず、輝士たちがシュオウを標的として、晶気を手元に顕現させた。


 多数に狙われている状況で、シュオウは複数の道を組み立てる。


 先手を譲り、放たれた晶気のすべてを回避した後に輝士を一人ずつ倒す道。または、デュフォスの身柄を確保し、盾として利用する道。


 一瞬にうちに組み立てたいくつかの道を頭のなかで並べ、もっとも勝算の高い道を選び出す。その視線をデュフォスに向けた直後、


「なんだ、お前――?!」


 シュオウを狙っていた輝士の一人が落馬し、地面に体を打ち付けた。また別の一人が、首元を押さえ血しぶきを上げながら、地面に倒れ伏す。


 両翼から突如シュオウの加勢に現れたのは、ロ・シェンとビ・キョウの二人だった。


 ロ・シェンは腕を組み、倒した輝士の胸に片足を乗せている。乗せた片足は晶気の力で見た目からは想像もつかないほどの重さを生み出し、輝士は呼吸が出来ず苦しげに手足をばたつかせた。


 ビ・キョウは強靱な握力を利用し、その手のなかにちぎり取った輝士の首の肉片を握り、滴る血と共に地面に強く投げ捨てる。


 シュオウは両者に向け、

「勝手に持ち場を離れるな」


 ロ・シェンは口元を曲げ、

「――雇い主を失えば、我らの立場が面倒なことになるのでな」


 ビ・キョウはふっと笑みを浮かべ、

「それに、多勢と衝突しても消耗戦になるだけだ。ならばいっそ首魁を仕留めるのが手っ取り早い」


 デュフォスは這うように後退し、他の輝士たちがそれを守るように、シュオウたち三人の前に立ちはだかる。


 戦い慣れた二人が側に付き、勝利へと至る道は大きく一つの道へと結束していた。


 じわりと後退するデュフォスたちと、獲物を仕留める猟犬のように彼らを睨むシュオウ。両者は互いに次の一手を模索し、どちらから動くか、水面下での攻防が繰り広げられる。が、その時――


「ッ?!」


 一帯に轟く角笛の音が鳴り響く。デュフォスがいる場所の後方から、一団となって兵士の群れが次々と前へ押し寄せる。


 先頭を行く輝士の手には軍旗が掲げられ、赤い軍服を着込んだ輝士たちは、その威容を遺憾なく見せつけるように背筋を伸ばして馬を進める。


 デュフォスは、

「ふはッ、天はターフェスタを――私を見守られているのだ」

 現れた軍勢を見て破顔した。


 シュオウにとっても、彼らは見慣れた存在だった。硬く閉ざされた堅牢な門を背負い、赤錆色の猛牛が描かれた紋章旗が、風を受けて力強くはためいている。


「ボウバイト……」


 この状況下で、現状の有利をすべて無にしかねない存在。無傷の軍勢を率いるボウバイト軍をその目に焼き付けながら、シュオウは側に控える二人と視線を重ねた。




     *




「あの短気な婆さんの軍隊だな」


 隣に並んだロ・シェンの言葉に、シュオウは小さく頷いた。


 ビ・キョウはボウバイト軍の陣容を眺め、

「あれに攻め込まれれば、後ろはひとたまりもない」


 ロ・シェンは表情を曇らせ、

「退くしかないな」


 しかし、

「だめだ――」

 シュオウは後ろに視線を流し、即断する。


 後方に控える多くの民衆は避難を終えていない。そこには未だにデュフォスの意志の元に武力を奮う兵士たちが入り交じる。このような混沌とした状況でボウバイト軍が加われば、民衆を逃がすことなど到底できるはずもない。


 ロ・シェンは重たくシュオウを見やり、

「ならどうする……戦えばただではすまんぞ」


 答えを出す間もなく、ボウバイト軍のなかからエゥーデ・ボウバイトとその副官、アーカイドが進み出る。


 彼らを見て、シュオウは密かに首を捻った。


 ――ジェダは。


 ジェダは自らの意志でボウバイトを足止めに向かった。しかし、彼らは何事もなかったかのようにここにいる。


 目で見える状況だけでは収まらない心地を抱いたまま、シュオウはその場に留まったまま状況を観察することを選択する。


 デュフォスは揚々とエゥーデを出迎え、


「ご無沙汰しております、ボウバイト将軍。この場でお顔を拝見できたこと、このウィゼ・デュフォス、なによりの喜び」


 エゥーデは常の仏頂面で頷き、

「見違えたぞデュフォス卿、別人のように痩せ衰えているではないか」


 デュフォスは笑みを消し、恥じ入るように上げた腕のなかに顔を隠した。


「このような姿を晒す無礼をお詫びしたい。恥ずかしながら賊に囚われ、捕虜として過酷な日々を耐えておりました。そのうえ、自由の身になった途端に、都内はこの有様です……」


 エゥーデは虚空を見つめて溜息をつき、

「私もこの目で見てきた。史書をあさってもこれほどの大過を探すのは難儀するだろう。痛ましいかぎりだ」


 デュフォスは頷きつつ、

「将軍がここにおられるということは、大公殿下は……?」


 エゥーデは眉間に皺を寄せて即答を避け、なぜか強い視線をシュオウへ向ける。直後にまぶたを深く落とし、


「この未曾有の事態を鎮めるため、我がボウバイトは全軍をあげて介入する運びとなった。指示を仰ごう――」


 その言葉を聞き、デュフォスはぎらつく目を輝かせ、シュオウに向けて指をさした。


「目の前にいる賊どもを討伐し、武力を持って上街に流入した罪人たちを一掃して、前線を押し上げ城へ至るまでのすべての道を完全に制圧する。ただちに号令をッ。ターフェスタ大公の御名の下に、叛乱に加担する者たちすべてを成敗するのだ!」


 高らかに告げたデュフォスの言葉のあと、場はしんと静まり返る。


 なんの反応も示さないエゥーデに、デュフォスは大きく首を傾げ、

「将軍……? 聞こえなかったのでしょうか、私は――」


 エゥーデは険しい表情で、

「指示を仰ぐと言ったのは卿ではない――」

 エゥーデはシュオウを強く睨めつけ、

「――准砂将シュオウ、我がボウバイトになにを望むか、早く言え」


 デュフォスはぴたりと息を止め、

「……は?」


 エゥーデの視線を追い、その場に呆然と立ち尽くした。











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>怯えて縮こまっていたデュフォスが状況を悟り、髪が張り付くほどの汗を拭って、恐怖していたことを隠すように胸を張りながら馬を進ませ、馬上からセレスを見下ろした。 ダ、ダサい。 ところどころでの百刃門の…
サーサリアはどうしているかなあ!?
大勢は決したな。 民衆を守るために都を手中に収めたシュオウに対し、民への慈悲と主君への忠誠で揺れる銀星石様の出方が気になるところ。 あと死に損なったセレス君はもう手にかけた犠牲者たちへの罪悪感と後悔に…
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