攪乱 2
攪乱 2
物悲しさと陰鬱さが日常として一体となっていたターフェスタ城内は、まるで春を迎えたように暖かな空気が蔓延していた。
城で働く者たちに前触れもなく出された慰労手当により、そこかしこから、ご機嫌なやり取りが聞こえてくる。
場の空気はそこにいる主の機嫌に左右されるが、それを証明するように、大公の私室に繋がる長い通路には、軽やかな歌声が響いていた。
呼び出しに応じてドストフの下に向かう冬華六家のエリス・テイファニーは、その歌声を耳に入れて身を固くした。ターフェスタ大公の性格をよく知る者にとっては、常にない機嫌の良さは凶事の前触れのようにも聞こえるからだ。
「失礼いたします、殿下」
部屋に入ると、踊りながら歌劇の一節を歌うドストフと目が合った。
「おお、エリスか、遠征の支度はどうなっている?」
エリスは目にかかった前髪を耳にかけ、
「はい、手空きの者におおまかな指示を伝え、基礎の準備に取りかからせてあります。部下たちを招集し、到着までの経路、式典と祭礼の支度、同行者の選定など、これから諸々の詳細を詰めていきます。そのため、敵地占領の件を彼らに伝えることをお許しくださいますか」
ドストフは機嫌よく首を振り、
「わかったわかった、必要であればお前の判断にまかせよう」
その声は小気味よく弾んでいる。
エリスはそっと唇を濡らし、
「遠征隊の人員についてですが、かかる費用を減らすために、現地に向かう道すがらに各地の旅人や町人などを募って隊列に加える、という案を検討しています。そうすれば、向こうに到着する頃には威厳を保てる程度の人員を負担を抑えながら確保できるでしょう」
ドストフは突然の通り雨のように笑みを消し、
「……その件についてだがな、小兵を集めたところで見てくれは知れている。やはり、戦勝を決めた大公としては、それなりの軍を率いて彼の地に入りたいものだ。深界で一戦交えられる程度の規模でな」
無茶な言いように、エリスは肩を落とした。
「そのような軍を確保するだけの余裕は……すでに出せるだけの兵を集めて戦地に送り、各地の領主たちからも、可能な限り援助を引き出しました。これ以上カトレイ兵を増員しようとすれば、かかる費用は膨大なものなります、現状でそれだけの負担に耐えられるかは……」
ドストフはむすっとした表情で、
「……カトレイを雇えとは言ってない。一時率いるだけのはりぼての軍隊だ、見栄えがすればそれでいい。上を見ず、下を探せばいくらでもあるだろう」
「殿下、申し上げにくいのですが、それすら多額の資金が必要となります。大軍の遠征を賄おうとするのなら、必要最低限に確保してある食糧を切り崩すしかありません」
ドストフは鋭く視線を尖らせ、
「金ならある、必要な分だけ民から取り立てよ」
「民の暮らしは度重なる徴税によって逼迫しているとの報告があがっております。これ以上の取り立ては――」
ドストフは強く足を踏みならし、
「民は何事もなく暮らしているッ、冬を越すために常に余裕をもって蓄えをしていると知っているのだ。余りを少しずつ集めたところで、今日明日にでも死ぬわけではあるまい」
戦争にかかる費用を埋めるためにかけられた重税は、民に過酷を敷いている。
平民たちの暮らしというものをほとんど理解していないエリスでも、税の取り立てを厳しくしてから、市中の活気が消えていることは理解していた。
「失礼ながら、民への徴税を強化するよりも、先に手をつけるべき所があると存じます。ここにいたるまで、兵や物資の提供をほとんど求めていない地――バリウムです」
エリスは覚悟を決めてドストフへの諫言を口にした。
バリウム、その名を冠する〈北門メラック〉の近辺に広がる領地は、ドストフの妻の弟、ショルザイ・バリウムが治める地である。
ここまで語気を強めていたドストフは、バリウムの名があがった途端に、わかりやすく肩を縮めた。
「バ、バリウムはな……」
バリウムはドストフの泣き所の一つである。頭の上がらない妻の生家であり、過酷な人質生活を送らせたことで負い目のある義弟が治める領地であるからだ。
エリスは常になく声を張り、
「バリウムは国内でも上位の豊かな地。求めれば遠征の往復に必要な人馬や資金の調達に十分な役目を果たすことが出来るでしょう。殿下のお心一つで、私が直接交渉に出向いてもかまいません」
ドストフはぎょろぎょろと視線を彷徨わせ、
「……いや、いや。バリウムは昨季、流行病で多くの家畜を失っている。要求に応えるだけの余力はないだろう」
それが偽りの言葉であることを、なによりドストフの不安定な視線が物語っていた。
「ターフェスタは銀星石をも配下に置く、神の恩寵を受けし偉大なる国家です。その主君たる殿下が求めることに、領主は応じなければなりません。あの倹約なボウバイト家すら身を切って殿下を支えている現状で、どうしてバリウムだけが黙って見ている事が許されましょう」
情に訴え、説得するように言うが、ドストフは耳のまわりを飛ぶ虫を払うように、手を振り回した。
「ええい、それ以上言うな。バリウムに触れぬ理由は言った。私はその前から大公としての意を伝えている。我が領民たちから税をとれ、ほんの少しだ、一人から藁を一掴みとったところでそれがどれほどの苦しみを生むという。今後一切、私の意見に反論することは許さぬ。文句を言った者がいればただちに報告するよう周知させておけ、いいなッ」
ドストフは腕を組み、体を斜めに反らした。話を終えた、と態度で伝えている。
エリスは吐き出しかけた溜息を飲み、
「承知いたしました、殿下……」
思いを殺し、主の命に同意を告げた。
*
大公との面談を終えたエリスは、城内に割り当てられた執務室の中を忙しなくうろつき、うつむきながら唇を噛みしめた。
「テイファニー卿、大公殿下はなんと……?」
室内に集められたエリスの部下たちから、心配する声があがった。
エリスは自分の執務机の上に行儀悪く体を預け、腹の奥に貯め込んでいた重い溜息を吐きだした。
「東方の前線で我が軍が勝利を収めたとのこと。敵地、ユウギリを陥落させたそうです」
エリスの説明を受け、集う部下たちが一斉に歓声をあげた。
エリスは険しい表情で部下たちを睨めつけ、
「静かに――この件は殿下の意思により公表を控えている段階です」
忠告を受け、沸いていた空気は一瞬にして冷ややかな冷気に満たされた。
一人が手を上げて、
「大公は件の司令官の凱旋を待って発表するおつもりなのですか」
エリスは首を振り、
「いいえ、大公はご自身で占領地に向かわれる。私はその遠征隊の指揮を命じられました」
「おお、それはいい――」
互いに視線を交わす部下たちは、一様に肯定的な雰囲気を漂わせていた。
和やかに今後の話を進める者たちの中で、一人がそれを制した。重輝士の身分にあるレフリ・プレーズである。
片面をそり上げた長めの髪を結い、男性的な魅力を秘めた逞しい体と、端正ながら鋭さを秘めた相貌が人目を惹く男だ。プレーズは同僚たちを諫めるように手を突き出し、
「慌てるな諸君、テイファニー卿の顔にある憂いを見て取れないのか」
自信からくる気取った態度が目立つが、プレーズは有能な男である。エリスはその洞察に頷いて、
「彼の言う通り、私たちは呑気に戦勝を喜んでいられる立場にはありません。殿下は遠征隊に相応の格をつけるよう望まれている、その規模は――」
話を聞いた部下たちは青ざめた顔で絶句した。エリスの口から語られたドストフの要望は、ほとんど実戦に派遣できるほどの軍に匹敵する規模であったからだ。
「無茶だ、今からそんな――」
部下の一人が呟くと、他の者たちが後に続き、
「今ですら相当な無理を通して派遣軍を維持している状態ですよ」
「金よりも人を集めるほうが難題だ。各地の領主たちにもさんざん協力を仰がせてきた、これ以上寄越せといっても……」
次々と繰り出される愚痴や不安が、雑音となって室内を埋め尽くす。各々が意見を交わし合い、空気が混沌としてきた状況下で、プレーズが声をあげた。
「バリウムに義務を要求するという件については?」
エリスは渋々と頷き、
「お伝えしましたが……」
プレーズは結末を察し、
「卿のご苦労をお察しする」
エリスは暗い表情で、
「遠征隊の人員は徴兵で賄い、足りないぶんは傭兵を雇い入れるほかにないでしょう」
プレーズは顔を顰め、
「この国に、これ以上、高価な金庫番を雇う余裕があるとは思えませんが」
カトレイの傭兵軍を指して言う。
エリスは首肯し、
「質が落ちるのは覚悟のうえで、少額でも請け負う者たちを集めるしかないでしょう。それで、一時の見栄えは整う――」
エリスは部下たちに視線を送り、
「――あなたたちは徴税官への指示を詰めて、目標とする資金を確実に回収できるよう、差配を管理するように。手のあいている者たちで遠征に必要な人員と物資を計算します。プレーズ重輝士、あなたには」
プレーズは、
「デュフォス卿奪還任務を引き継げ、では?」
言って、得意げにあごを高くする。
エリスは目を細め、
「察しの良いこと。調査は大詰めを控え、あと一歩のところまできている。この期を逃せば、また別の場所に隠されてしまうか、最悪の場合は……」
プレーズは視線を強め、
「おまかせを――と言いたいところですが、簡単には引き受けかねる要件です」
「おい――」
周囲からプレーズの態度を諫めるような声があがるが、エリスは手を上げて場を鎮めた。
「上官からの命令を断るのですか」
プレーズは大袈裟に手を上げ、
「冬華のご身分であられるテイファニー卿の命令に逆らうなど恐ろしいことです、が、それ以上に怖いのは、冬華の長であるデュフォス卿奪還の任務を引き受け、その身柄を無事に確保できなかった場合でしてね」
プレーズは指先で自らの首を斬るような仕草をしてみせた。
エリスは唇を噛んで、
「命を賭けろとまでは――」
「上辺ではそうおっしゃられようと、この任務の結果は大きな責任が伴います。責任者としてそれを引き継げといわれるのなら、相応の褒美をご用意いただきたい」
「褒美……?」
プレーズはこの時を待っていたとばかりに胸を張り、
「空位となった冬華の椅子の一つに、卿の権限をもってプレーズ家を推薦していただければ光栄の至り」
見守っていた者たちが一斉に声を荒げてその要求に釘を刺した。
「調子に乗るなレフリ・プレーズッ」
プレーズは白い歯をぎらつかせて笑み、
「ならば貴公が代わりにやるか? 監禁場所を探り当て、兵を動員してデュフォス卿を無傷で奪還する、言葉で言ってみれば簡単なことだな? だがもしも……もしも失敗すればどうなる、栄えある冬華の一席を己の責任によって失した場合、はたして大公はお許しになられるであろうか、兄弟や子らの出世はどうなる? 私の代わりにやりたければ今すぐ手を上げてみるがいい」
プレーズに文句を言った者たちは、急に怒りを鎮めて黙り込んだ。エリスの直轄の部下である彼らの大半は文官としての適性を持つ者たちだ。一方のプレーズは武官としての色が強く、武闘派で荒事への対処も得意としている。エリスが奪還任務を引き継がせる気になったのも、そうした事情を加味してのことだった。
エリスはプレーズの前に進み出て、
「わかりました。デュフォス奪還の成功と引き換えに、殿下に対し、プレーズを冬華に昇格させるよう進言すると約束します」
プレーズは破顔して一人で拍手をし、
「素晴らしい、よくぞ言ってくださいました。ここにいる全員が証人となった。卿がご不在の間、奪還作戦の指揮は、このプレーズにお任せください」
周囲の冷めた視線をものともせず、プレーズは宮廷作法を用いた大袈裟な辞儀をしてみせた。
*
打ち合わせを終え、一人城内の通路に出たプレーズを、エリスが呼び止めた。
「プレーズ、よくも言ってくれましたね」
プレーズは野心的な笑みを返し、
「昇格についてですか」
「皆の前で条件をひけらかせば、この件はすぐに漏れ伝わる、先に足場を固めたつもりかもしれませんが、冬華への承認を決定できるのは大公殿下のご意志のみ。簡単に望むものが手に入ると期待しないことです」
「栄えある冬華の称号を受ける親衛隊はばらばら、腹心の元宰相は馬糞拾いに墜とされ、現在のターフェスタで大公がまともに耳を貸すのはテイファニー卿くらいしかおられない。現状は急を要すほどの人材不足でしょうが、私にとってはこのうえない好機なのです、それを逃すつもりはありません」
エリスはプレーズの手首を強く掴み、
「口だけではなく、必ずデュフォスの身柄を無事に確保しなさい。失敗すれば地位も名誉も、すべてを剥奪し、囚人の身分にまで落としてみせます。冬華の力を使えば簡単なことですからね」
プレーズは自身の手首を掴むエリスの手に、片方の手を覆い被せた。
「求めたものの大きさの分だけ、その反動は強くなる。いいですね、だからこそやりがいがある」
両者は視線を交わした後、エリスのほうから手を離し、身を引いた。
エリスは触れられた手を手巾で拭い、
「引き継ぎをします、作戦の詳細を――」
プレーズはエリスの前に手を突き出し、
「結構です。失礼だが卿のやり方は丁寧にすぎる。廃坑に隠れ住むネズミを相手にしながら、まるで一頭の獅子を狩ろうとしているようだ。仕事を引き継ぐ以上、ここから先は私のやり方でやらせてもらいます」
エリスは寒さに耐えるように腕を抱え込み、
「……下手に追い込めばやけを起こすかもしれない。犯人たちには、人質に盾としての価値があると思わせておくべきでしょう。あなたはいったいどんな手段をとるつもりですか」
「ネズミを潰すのなら、猫をたくさん集めるのが手っ取り早い。伝手のあるギルドを使って兵を集めます。よければ紹介しましょう、質は悪いが安く、身軽な連中を集めてくれる。殿下が望まれる遠征隊の体裁を整える頭数をそろえるのにも適任だ」
不要である、と一喝したい心を抑え、エリスは不本意ながらプレーズの提案に耳を傾けた。
身元も出所もたしかではない傭兵たちを集めるのにかかるおおまかな費用を聞くが、現状に苦心するエリスにとって、提示された額は、抗い難く魅力的な数字であった。
*
その後――
「湿気た街だぜ」
ターフェスタの中央都に入った強面の男が、静まり返った街並みを見て呟いた。
男の名はボ・ゴ、〈骨食い〉の名を冠したギルドを運営する者であり、ギルドが直営する傭兵団の団長でもある。
骨食いの女副団長ティモは、ボ・ゴと肩を並べ、門をくぐる団員たちを見て顎をしゃくった。
「団長、奴らに飲み食いさせねえと」
ボ・ゴは岩のようにごつごつとした顔に、べろりと長い舌を伸ばし、
「好きにやらせとけ、支払いはお偉い大公様が全部持ってくださる」
ティモはガラガラと喉を鳴らしながら笑い、
「てめえら、団長のお許しが出た! 自由行動だ!!」
疲れた様子の団員たちから一声に歓声があがった。
不潔な出で立ちで異臭を放つ集団が、束になってターフェスタの市中に散っていく。渇いた血をそのまま残した獣の革で全身を覆う集団は、まさしく人々が印象に抱く蛮族そのものの姿であった。
副団長のティモは開ききった目でボ・ゴを見やり、
「俺たちはいい店で食おうよ」
「ふ、まあ上にいきゃあそれなりのもんが食えるだろう」
ボ・ゴは背後から次々と街に流れ込む部下たちを見つめ、
「……こんなに連れてきたか?」
ティモはだらしなく口をあけて後ろ頭を掻き、
「途中で適当に拾ってたらいつのまにかさ。金の心配はいらないんだろ?」
ボ・ゴは呆れた様子で肩を叩き、
「ま、そういうことらしいがな」
団長、副団長を筆頭に、骨食いの幹部たちは集って街の中央通りを馬で進んだ。
「なんだよ、真っ昼間なのにどの店もろくに開いちゃいねえじゃねえか……ッ」
ティモが声を裏返して不満げに言った。
「人が、見えねえな」
あまりにも閑散とした街中を見て、ボ・ゴが静かに様子を語る。
ここはターフェスタの王都と言って相違のない、大公の御座である中央都だ。当たり前の状況であれば、大通りには商人や人々が行き交い、普通の話し声が通らないほど活気に溢れているはずである。
だが、通りを埋め尽くしていたはずの市場で物を売る者はおらず、買い物に出てきた住民たちの姿も見かけない。
ボ・ゴは口元を歪ませ、
「くそ、聞いてねえぞ、こんなつまらねえことになってるとはな」
その時、道の脇から一人の少年が姿を現した。酷く痩せた様子で、よろよろと袋を担いで歩いている。少年は近づいてくる骨食いの面々に気づき、呆けた顔で呆然とその場に立ち尽くした。
ボ・ゴは馬上から少年に向け、
「おいぼうず、ここはいつもこんなに静かなのか?」
少年は乾いて割れた唇を開き、
「……うん」
ティモが下卑た笑みを浮かべ、
「その袋の中は食いもんか?」
少年は怯えた顔でティモを見つめ、
「……ち、ちがう」
ティモは馬を下りて少年に歩み寄り、
「嘘つくな、大事そうに持ってるじゃねえか。いいから見せてみなよ――」
少年が手に持つ荷物に手を伸ばした。
「嫌だッ」
怯えながらも抵抗した少年に、
「ざけんなよガキが!」
ティモは機嫌を損ねて力一杯に袋を奪い取った。
反動で少年は勢いよく地面に倒され、排水口の角にゴツリと鈍い音をたてて頭をぶつける。
へらへらと笑いながら奪った袋の中を見たティモは、途端に表情を暗くした。逆さにした袋から出てきたのは、質の悪い薪木のくずだった。
「つまんねえ……」
「おい、ぼうず」
ボ・ゴは倒れた少年に声をかける。が、少年は薄らと目を見開いたまま、微動だにしない。
気づいたティモが少年の鼻に手を当てるが、
「……やべ、息してないよ」
ティモは恐る恐る振り返り、
「団長、どうしようか……?」
ボ・ゴは一瞬考え込み、
「……ほうっておけ、どうみたって貧民だ、誰もきにしやしねえだろう」
ティモは一瞬にして笑みを取り戻し、
「だな!」
血走った眼を全開にした。
骨食いの一団が去って行ってしばらく後、大通りに横たわる子どもを抱いて、泣き崩れる女の姿があった。
まばらに様子を見に来る者たちに混じり、司祭のエヴァチは、冷たくなった小さな手を握る。
「家のために薪を探してくると言って出て行ったきり、戻らなくて……私のせいで……私のせいで……ッ」
半狂乱に涙を流す母親が、エヴァチを見ながら、繰り返し後悔を口にする。
エヴァチは慰めるための祈りの言葉を口にしかけ、痩せ衰えた子どもの遺体に手を置き、嗚咽した。
「…………ッ」
エヴァチの伏した顔の奥には、激しい怒気が渦巻いていた。