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第2話|夜明け前の記録
夜明け前の建物は静かだった。
窓際の温湿度計は、
室温18.1℃、湿度42%。
外気との差は5℃ほどある。
ナースステーションの蛍光灯はまだ半分しか点いていない。
モニターの表示が規則的に更新される。
脈拍、血圧、酸素飽和度。
記録用端末を開く。
三日前のログを並べる。
体温は0.004だけ下がっている。
誤差の範囲内。
廊下の端で、車椅子のブレーキが小さく鳴る。
申し送りの声は抑えられている。
夜勤の表情は変わらない。
西の窓から入る光はまだ薄い。
太陽の角度は低い。
カーテンの裾がわずかに揺れる。
点滴の滴下速度を確認する。
設定値と実測値の差は0.007。
許容内。
端末に入力する。
更新。
保存。
指先が乾いている。
アルコールが蒸発するのが早い。
廊下の時計は6時58分を示す。
交代の時間が近い。
モニターの数値がまた一つ更新される。
何も変わらない。
更新だけが続いている。




