記憶
俺は、保健室で考え事をしていた。
そして、今保健室だと言っただろう?
なぜわかったかというと、理解したからだ。
いや、理解してしまった。
俺は、高光ひかるという人間に、憑依してしまったのだ。
そのおかげで、記憶を入手できた。
俺は、ずっと知りたかった。世界の何もかも。
俺は、その記憶もありがたく感じたが、佐藤裕介に、こんなに親しい間柄を、盗んでしまったことに少し罪悪感もあった。
ただ、俺はもう俺ではない。
俺は、俺であり、高光ひかるでもあるのだ。
そして、この世界の情勢もわかった。
魔王が来る前までは戦争ばかりしていたあちらの世界とは違って、こちらは結構平和な事。
そして、電子機器という発明にも、とても驚いていた。
ただ、どこかで安堵していた。
この世界で魔法が使えないのは、この世界自体が魔法を使えなかったことで、科学でものすごい発展を遂げたからだ。
そして、この世界を知りたい。
俺は、知識欲に飲まれていった。
俺の両親は、共働きで比較的裕福で、俺は公立の小学校から私立の中学校に受験してきた、ということ。
そして、俺は、中2という位に分けられる年齢らしい。
この世界は、あちらの世界と、日や年などはほぼ同じなのだった。
ただ、秒単位まで、科学で定義されていたのは驚きだったが。
そして。
最後に。
記憶で、一番大切な事。
俺は。
高光ひかるは。
土恋美玖に。
恋をしてしまった事だ。
*
俺はその後、保健室の先生にありがとうございました、というと、迎えにきた両親に駆け寄った。
「大丈夫?」
心配そうに母が語りかけてくるが、
「大丈夫だよ!」
と返すことができた。
その時、俺は、とても嬉しかった。
ひかるの記憶のおかげで、コミュ症が改善できたのだ。
そして、家に二年間通った道のりで両親と共に返り、
早めに睡眠することにしたのだった。
布団の中では、元すべてを知りたかった最強魔法使いが、恋ってこんな感じか、とドキドキしていた。
ひかるの記憶では、二年間ずっと顔を見ることしか出来ず、数えるぐらいしか話したことがない美玖のことを想って。




