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私たち離婚しますから


「奥様、おはようございます」


翌朝、エイミーは昨晩とは打って変わり、蝶番を吹き飛ばすほどの元気さで寝室の扉を開いた。

「おはよう、エイミー。いい朝ね」

「はい、とってもいい朝です」

 正直、天気はそれほどよくはなかったけれど、私とエイミーは雲に隠れた太陽の代理をかってでるような笑顔で笑い合った。

 

「さあ、奥様。今日はとびきり綺麗にしなくちゃいけませんよ。見てください、この日のためにとっておきの髪飾りをご用意しました」

「素敵、葉っぱのモチーフなのね」

「しかも、ここです、ここ。ピンの部分がこんなに太いんです。これならいくらお転婆な奥様で曲げられませんよ」

「ねえ、やめて。落として曲げちゃっただけよ。もうあんなドジはしないから」

「お気になさらないでください。そういうところも含めて奥様の魅力ですから」

「やめて、違うってば、もう」


 ああ、朝から楽しい。

やっぱり人生において希望は大事だ。これがあるだけでいつもの日常がキラキラと輝いて見える。


すっかり諦めていた新事業に復活の目が出た、その事実は私の背中に特大の翼を与えていた。ちなみに、エイミーがこんなにはしゃいでいるのは初めて朝の支度を仰せつかったからではなく、

「ああ、今日は本当にいい日です。何せ今日は奥様とジュリアン様の初の朝食デート記念日」

 私が初めてジュリアンに朝食に誘われたからだ。


「どうですか、奥様。私の言った通りでしょ? やっぱりジュリアン様は奥様にぞっこんなんですよ」

「やめてよ、そんなことないわ」

「いいえ、ございます。あのジュリアン様が女性をお誘いになるなんて。メイド一同今夜は祝杯をあげるつもりです」

「あ、それは本当にやめた方がいいかも……」

期待させて申し訳ないが、私が今日朝食に誘われたのはエイミーが想像する様なものでは全くなく、むしろ真逆の趣旨で……。

「はい、できました! どうしましょう、最高にお綺麗です。これでジュリアン様のハートをばっちり頂いちゃいましょう」

「そうね、ばっちり慰謝料を頂かなくちゃ」

「慰謝料?」

「なんでもないわ。じゃあ、打ち合わせに行ってくるわね」

「打ち合せ? 朝食デートじゃ?」

「……ごめんね、エイミー」

「なんで謝るんですか!」


本当になんと謝ればいいことやら。

私達離婚しますから。



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