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心象

作者: 冬代 無月

 十月上旬、五時の空。

 日暮れ、夜の帷が空を繕いかけるのを見ると、いつも思う。

 冬が来たと。


 遠くに見える軒を連ねた家々が、まるで影絵のように暗く、空模様も相まって退廃的な印象すら抱かせてくれる。


 心の中で、嗚呼いいな、いつ見ても落ち着くと呟く。

 こうして取り止めのない言葉と感嘆を漏らすのは不思議と楽しいもので、いつになってもやめられない。


 この時期、帰路を歩んでいる時間が至福の一時だと感じる者は、他には居まい。仮に居たとしたら、その人物もきっと変人なのだろう。


 長いようで短い帰り道も終点、見慣れた住居が見えてきた。

 柵を開け、一寸先まで続く石畳を踏み締める。仄かな灯りに照らされた扉を前に、慣れた手つきで鍵を取り出し、差し込んだ。


 扉を開けた先に目に入ったのは、薄暗い廊下。

 少しだけ年季が入り、寂しさも感じさせるその廊下を前に、玄関でいつものように靴を脱いで、木製の下駄箱の上へと鍵を乱雑に置いた。


 照明も付けず、ひんやりとした廊下を足早に、誰も居ない居間へと向かう。

 たどり着いた居間はやはり暗かったが、窓辺にかろうじて斜陽が差していた。その様子に、思わず郷愁を感じてしまう。


 感慨深く思うのも程々にし、深く吐息を洩らしてから、ようやく照明を付けた。

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