エピローグ
ソータはずっと夢の国に居る。
風呂に入るために現実に返る以外は、パーティーメンバーと行動するようになった。
宿も同じ処をとって、四六時中一緒に居る。
もう半年もこの状態が続いていた。もう夢の世界が現実となって仕舞った。
偶に孫の武のことを思い出す。
「もう、帰ってきているかもな。」
滅多に外に出なくなった曾太郎を心配して近所の人達が心配するだろうか。
「一度現実社会に帰って用事をかたづけてこないといけないかも知れない。」
【分りました。数時間だけ彼方の世界へ行きましょう。】
ソータの意識が途絶えた。
目覚めた曾太郎は、現実の自分に違和を覚える。
「こんなに身体が重かったか。急に年とった感じだ。」
若い身体から急に戻れば、当たり前のことだ。
書類を整理し、武に手紙を書く。
部屋を片付け、風呂に入り武に電話をした。
そして、布団に入って意識が途絶えた。
☆ ☆ ☆
「じいちゃん、来たよ。また、テレビの調子が悪くなった?」
武は、家の中を見まわしても曾太郎の姿は何処にも無かった。
いつも曾太郎が座っていたテーブルには書類が置いてあった。手紙が添えてあったので読んでみた。
『テレビを消してくれ』
と、書いてあった。
「じいちゃん、本格的に呆けちゃったのかな。どこかを徘徊して居るかもしれない。」
武はテレビの電源を落とし、警察に連絡した。
☆ ☆ ☆
【これで、ソータはずっとこの世界で暮らせます。】
「ありがとうテビ。君は消えて仕舞うけど、それでいいのか?」
【勿論寂しいです。だけど、ソータさんが愉しく生きられれば満足です。では永遠にさようならですね】
「ああ、永遠に。」
テビはプツンと消えた。