第5話 日常にも変化ありなのに①
客が巡り会う。
これはどの店に行っても同じだ。店を営むもんじゃなくたって、いつどこでも巡り合いは多い。
な・の・に!
「む! たっぷり卵サラダドックも気になる!」
「じゃ、ボクがツナポテチドック頼むからぁ。シェアするー?」
「いいの?」
「いいよぉ。ボクも卵大好きだしぃ」
「じゃ、決まり!」
それなのに、こっちの巡り合わせに……俺が逡巡しそうになって何度目か。
いつもいつもいつも、仲がよろしいことは非常に良い! いいんだが、それ以上の進展らしきものが全然ないのは!! 見ていて歯がゆい!!
女側が鈍ちんなのもあるが、野郎側も自分の気持ちに自覚がないときた!?
「ははは。仲がいいねぇ、あの子ら」
「年の差大きくても、見た目だけだと似合いもんなのに」
もう、出会ってかれこれ半年。うちの店にモーニング利用で通うようになったのも、揃ってだとだいたい同じ。なのに、進展ゼロぉ!?
(神や妖怪、人間に動物の差別意識減っても……恋愛下手ってまだまだ多いんだなぁ)
俺はいいけど。
神だからいいけど!
いいんだけど、非常に歯がゆい!! あいつら見てっと、ムズムズすんの!! どこをどう見ても、カップルそのものと言っていいのに!? お互いが、仕事仲間を延長してのご飯友だち……と来て、そっから進展ないのかよ!?
「あ、マスター。あと一杯だけホットお代わり」
「あたしは、追加でトーストとミニサイズの卵サラダかしら? あの子たち見てると、食べたくなるのよねぇ」
「……あいよ」
神の仕事……は、俺が八男坊なので、小遣い程度にしかならん。それはいいんだが、甘酸っぱい以上にむずがゆいし……ツッコミどころ満載のあいつらを! 一応友人としては、それなりに心配してんのに、見守る期間通り越してね? 俺だけじゃないよな!?
「陸音さぁん、モーニングセットの卵ドックとツナポテチドック一個ずつお願いしまぁす!」
「りょーかい。BGMの曲変だけ頼むわ」
「おっけぇ!」
しっかし、常連客のあいつらが。俺の料理を美味そうに食うのも嫌いじゃない。むしろ、好きな方だ。
というか、あいつらがいなきゃ……うちのモーニング以外の宣伝も出来んかったから、下手に茶々入れれん! 過ごしやすい環境を提供するのも、店主の務めと……ここは注文品を作るしかなかった。
(越してきてから、てのも半年か)
冴えないこの住宅街に、那湖が単身で引越してきたのも。
多種多様な種族との結婚と子孫繁栄が、幾千年も整って見た目とかも色々変わってんのに。那湖は混じってても、通常に近い人間の顔立ちだけだった。
混じり子の証拠は、個性の一部滅亡域……だったが。
「えーっと……卵サラダは仕込んであるし、パンも切り込み入れるのは早い」
でも、那湖がここいらに来なきゃ。俺がここまで店のメニューを変えることもなかった。最初は、俺もコーヒー幾つかとプリンにチーズケーキくらいに、適当な店だったからなあ?