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第21話 出会いは突然?ではなくて

 那湖ちゃんとの出会いはあんなだったけど……実はちょっとだけ違う。


 彼女があのアパートに越してきたばかりの頃に、引っ越しのトラックが帰ったあたりで見かけてたんだ。疲れた顔の、100歳くらいの女の子。


 形が人間だけど、混ざりが普通だから身分証ではそうしているだけかも。造形の歪さがボクほどないから、整い方は合格点。


 見かけたときに思った感想はそんなとこ。あとは、在宅ワークがメインなのか……他で見かけても私服ばっかり。使い回しのシャツとズボンばっかりでもったいない。


 うちの中古在庫とかなら似合いそう……次の気にかけ方はそんなとこだった。


 直接の対面があんな形になるとは思っていなかったけどねぇ?



「……半年、か」



 気が合うのは、陸音さんとこでほとんど毎朝モーニングとやらで相席して……シェアする仲まで発展したからわかる。


 恋とか愛とか聞かれると……正直言ってわかんない。モヤモヤすることはあっても、多分『お気に入り』を少し独占されたことへの嫉妬程度。


 今以上の関係を求めても、ボクにはわからない。


 二百年くらいは生きているけど、戦争の遠ざかった日常は心地が良過ぎて感覚が鈍る。あの時代は横取りどーのこーのの、ただのいざこざだけだから血で血を洗うってワードは比喩表現だもんね。


 それこそ、じーちゃんやばーちゃん世代の方がはっきりひどかったらしいし? ボクら若い世代の戦争なんて、ただの喧嘩程度。


 話題は逸れかけたけど、つまりは。



「平和過ぎて、陸音さんみたいに『本気』の恋が出来ないぃ」

「俺に言うな。弱いくせに飲みやがるし」



 そう。絶賛、ボクは今酔っ払いなのでぇ……陸音さんに愚痴ついでの言い訳大会をしているんですぅ。陸音さんも彼女さんが主催した会に顔出しできないから……ディナータイムが終わったら、ボクと残りモノでつまんでた。


 ボクはボクで、なんか『つまんないから』って理由で缶チューハイ買っちゃったんだよねぇ。普段、ほとんど飲まないのに。



「だってぇ……那湖ちゃんとのご飯持ってかれたんでぇ」

「……お前さぁ? やっぱ那湖んこと好きじゃないのか?」

「……わかんないですぅ」

「縁も繋ぎも最高でもか。近過ぎても、少し離されてもダメなのかよ?」

「女の子同士の交流に文句ないですよ……ただ、つまんない」

「あ〜……自覚あるのかもわかんないのか。でも、日常は崩したくねぇの?」

「はぁい! 今が楽しいぃ」

「結局どっちなんだよ!?」



 毎日が楽しい。先が怖いから嫌。


 理由は多いかもだけど、ボクは那湖ちゃんとご飯でも仕事でも気が合う今を壊したくない。ときどき本性で絡まったのをほどいてくれて助かる。


 愛とか恋とか、ボク……多分、自分でわかりたくないのかも。それはそれでもいいんだ。日常がお気に入りだから!!



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