第16話 小さなお祭りに?
言い出しっぺは、なんと綺洞さんからだった。
「ボクらで出店してみないー?」
いつものモーニングで、メンバーにソウちゃんが定着してきて一週間くらいかな? 綺洞さんが珍しくお誘いをしてきた。『表舞台に立つ』側の仕事を!
「ほーほー、夏祭り??」
あたしが越してきたのが半年前だから、もうそんな季節まで来たのか。早いけど、お祭り大好き! けど、なぜ出店側にあたしをお誘いするんだろ? メンツ的に、いつも買い食い側なのに?
「飯はうちも出すが、たむろすんだろー? こっち手伝う気ないなら、そっちもそっちでやんな」
「おいおい、結局は陸音さん発案!?」
「いんや? こいつも毎年出店すっから、お前さんについては初耳」
「およ?」
ではでは、純粋に仕事のお誘いなのかな? それはそれで嬉しいので、もちろんとハイタッチ。
「ハンカチとかバンダナの染め物体験かなあって。那湖ちゃんには、助手さんとシルクスクリーンの型選び手伝ってほしいなあって」
「おぅけぃ、おっけー!」
「ん? シャツ、入れナイんですカ? 料金上げてモ」
「考えたけど。送料込みの値段と、パック料金差し引いても」
「「あー……」」
「染め物限定だと、速乾出来んもんな? インクの種類少ないんだっけか」
「すぐ帰るって、パターンもあるしねぇ」
なので、ちょっとお高めで情報漏洩も気をつけつつ……らしい。たしかに、それだとTシャツはお値段張るから難しいところだ!
「よーし! スケジュール調整は、まず食べてから!」
今日のモーニングはホットサンドにしたから、冷めるとおいしさ半減だから食べるに限る!! 飲み込んでからオレンジジュースのひと口はたまんないのだよ。
スマホでカレンダー確認したが、祭り当日はまだ予定がナッシングだった!!
「……あぁあ〜。私、その日……イベントの仕事」
「あにゃぁ」
最近、またちょっと売れてきているソウちゃんはホールほどじゃなくてもハコでの仕事があるらしい。完全に顔出ししてないから、こうしてご飯も食べれるんだって。それは事務所の入社のときの絶対条件にしたそうな。
プライバシー侵害を防ぐためにと、家族会議でも決定事項として言われたらしい。神様系が居たら、祟られそうだから大声では言わないよ!!
「んじゃ、奏歌には客の練習台になってもらえばいんじゃね? 食いもんはしょーがないが、そっちはなんとかなんだろ?」
「たしかに!」
「お金! 払いマス! ちゃんと、作りタイデス!!」
「いいよぉ。んじゃ、奏歌ちゃんには黒系の服着て来て? 染液は水性使うけど、念のため」
「ハイ! お祭り気分に、ユカタ使うデス!! 男用の声での収録、使うのアルので!」
「おー、よかったねぇ!!」
実は、あたしの例のデザイン。『SOWAKA』じゃない別アーティストじゃないスタイルでの音源発表が決まったから……それに使ってもらえるんだって。
綺洞さんと知り合いのプロデューサーさんの案だから、あたしも今回は商業向きにして預けたんだよね?
練習日だけど、型も選ぶってことで早い日にちに決まった。