第11話 うれしいはずの日常なのに
ボク、うれしいはずなのになぁ?
仲良しの那湖ちゃんに、珍しく女の子の友だちが出来ることが。ぺちゃくちゃって感じに、はしゃいでメニューを見ているのはかわいい風景のはずなのにぃ?
「……なんか、つまんないぃ」
「やさぐれんな。んで、なんで本性で店のイスに絡んでんだよ!?」
「あれぇ?」
うっかり、本性で何かに絡みつくのはいつも通りでも。ボクはボクで、いつも通りじゃない。
お気に入りをあげたりするのは、たまにはある。だけど、あの位置は。とられると、なんかムカムカというかモヤっとしちゃう。つまないんだよね??
とりあえず、絡んだのは陸音さんには外してもらえた。
「……別に混ざってもよくね?」
「…………口挟めるぅ?」
那湖ちゃんが、子犬のようにきゃんきゃん話しながらだけど。向こうの女の子は、なんか……ものすごくうれしそう。かわいい顔はしてるけど、好みかと言われても別に。
ただ、那湖ちゃんが楽しいのは、ちょっと面白くない。
「ボリューム……多い! 悩ム!!」
「あたし向けに調整してもらってるんだ! メニューのはふつうめだけど!!」
「コレ! チリチーズドック、お願いシマス!!」
「あたし、いつもの卵サラダドックぅ!」
「あいよ。……那湖んとこ行けよ」
「んー」
お仕事の邪魔はしたくないから、仕方ないけどイスを寄せて那湖ちゃんらの間に座った。なんかプレイヤー系の端末で、音楽を流そうとしているとこだったけど。
強めにボリュームを上げてなかったけど、ボクにも聞こえてきた。
スッキリした音調で、アルトっぽい音程……男の子にも聞こえるが、多分歌い手は女の子。
歌詞に具体的な言葉はないけど、民族音楽に聞こえるようで違う音楽。好きかと言われれば好きなほう。というか、聞いたことがあるような?
「おお! 音源入ると、さらに本格的ぃ!!」
「……大ゲサ。素人、の編集」
「いやいやいやぁ?」
「へ? これ、キミが歌ったの〜?」
「あ、ハイ」
外見に寄らずと言うけれど。ふんわり砂糖菓子タイプの女の子が、性別偏りに近い歌い方をするとは。たしかに、これは意外……と言うか、聞けば聴くほどこの歌い方って。
「SOWAKA? の音源に近い??」
「え!?」
「綺洞さん、知ってるのぉ?」
「あ、うん。うちの店のBGMにたまに」
「あ」
「エェエ!?」
インディーズじゃないけど、と音楽プロデューサーをしている知り合いからもらった音源。うちの店にBGM少ないから、結構な頻度で流していたのに……まさかこんな身近にきてくれるとは。
SOWAKA、じゃなくて奏歌ちゃんって女の子は赤面症なのか……めちゃくちゃ顔が真っ赤にぃ。陸音さんがメニュー持ってきても、全然直らなかった。
「ソウちゃぁん? とりあえず、ごはん来たよー? 食べよー?」
「…………ユーちゃん、のバカぁ」
「……えぇと、ごめん? まさか本人とは」
だとすると、ボクの一方的なすね方はよくないかも。気づいたけど、たしかに那湖ちゃんをとられて面白くないとは思いました! 気に入ったおもちゃじゃないけど、友だちを独占されて面白くないって……百年は生きているのに、我ながら大人げない。
そして、ボクのモーニングはツナチーズホットサンドだ。




