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肩をゆすられて目を開けると、粗末な荷馬車が通り過ぎるところだった。いつのまにか寝てしまっていたらしい。
周囲はまだ薄明るく、街の門は開いてさほど経っていない。
荷馬車は荷台に積まれた荷物の高さの割にずいぶん重たげで、速度が出ないようだ。
距離を置いて後をついて行くと、一時間もしないうちに道の窪みに車輪を取られ、進まなくなっていた。荷馬車に追いつき、ディアンが馬を止めたのに従い、アルノーも馬から降り、馬車を押す手伝いをしようとしたのだが、人の気配に乗り手二人はじりじりと後ずさりし、馬車を捨てて逃げた。ディアンはすぐに一人に飛びかかり、足を押さえて倒した。アルノーは走りもせず、近くにあった石を拾うともう一人の男に向かって投げた。石は男の頭に当たり、男はバランスを崩して倒れた。
ディアンが取り押さえた男をアルノーは通りすがりに殴って気絶させ、頭を痛めて倒れた男の元へ向かうと手慣れた様子で縛り上げた。そしてその男を引きずりながらディアンの元に戻ると、もう一人も縛り、二人を道の端に置いた。
荷馬車を覆う布を取ると、積まれてあったのは古びた箱だった。手前の箱の蓋を開けると、石が詰まっていた。石の重みだったか。それなら逃げる必要はないはず。アルノーはその奥の箱も開けたが、石は表面だけで、石の下に敷いてある布をめくると、その下には武器が隠されていた。
「大当たりか。俺が騎士隊を呼んで来よう。…ラコーニに戻るよりはオルランディの方がいいな」
アルノーは縛った二人を荷台に乗せ、その上から再び布をかけた。ディアンは荷馬車が目立たないよう、その先にあった古びた建物の影に移動した。
アルノーは馬車の進行方向の先にあるオルランディ領へと馬を走らせ、その間ディアンは武器と男たちを見張っていた。三時間もしないうちにアルノーは制服を着た数人の男と共に戻ってきた。王城の騎士隊だった。武器を探して領の境界にある小屋を捜査していたところだったらしい。
馭者二人は、農民のような服を着てはいたが農民ではなく、騎士隊に問い詰められるうち、ラコーニ子爵に雇われた者であることを自白した。
「子爵のところで馬車も服も用意されていた。農民のふりをしてオルランディ領まで運び、山の中に荷馬車を捨て、馬は好きにしていいことになっていた。積み荷は石だと言われてた。その下に武器があるなんて、何も聞かされていなかった」
「その割に走って逃げてたじゃないか」
「そ、それは…俺たちが、…お尋ね者だからで…。馬までもらえて、こんなおいしい仕事はないと思ってたが…。」
二人の所持品を調べると、石を運ぶだけにしては破格の報酬を得ていた。武器かどうかはともかく、見つかるとやばいものを運んでいた自覚はあったのだろう。
「これは、確認する必要があるな」
騎士隊の小隊長がこの件に興味を示し、アルノーとディアンも同行してラコーニ子爵邸に行くことになった。