6話「今まであったものが足元から崩れ去っていく」ライアン視点
【ライアン視点】
秋祭りから一週間が経過した。
僕は生徒会の仕事と勉学が忙しく慌ただしい日々を過ごしていた。
ある日の早朝、母上の部屋に呼び出されるまでは……。
僕は母上の部屋を訪れ「学校があるので放課後ではだめですか?」と母上に伝えると、母上に「今日は休んでも構いません」と言われた。
僕は「生徒会の仕事があるのに……」と思った。
しかし側室である母上が、王子である僕に学校を休めと言うのだ……よほど大事な用件があるのだろう。
「おかけなさい。
長い話になるわ」
僕は母上に促され、応接用のソファーに座った。
母上はテーブルを挟んだ向こう側のソファーに腰掛けている。
「ライアン、明日から生徒会の仕事はしなくて結構です。
学園が終わったら真っ直ぐ城に帰ってきなさい」
母上は機嫌が悪いのか、目が笑っていなかった。
母上の目からは怒りのオーラすら感じた。
「母上それはどういうことですか?!
来月には文化祭、再来月には体育祭を控え、生徒会は猫の手も借りたいほど忙しいんですよ!
それなのに生徒会の仕事をせず真っ直ぐ帰宅しろとおっしゃるなんて……!」
会長の僕が生徒会を休んで、真っ直ぐ帰宅するなんてありえない!
「あなたには生徒会を辞めてもらいます。
あなたには学園を卒業するまで、王子の仕事に専念してもらいます」
「はっ?」
僕の口から間抜けな声が出た。
王子の仕事……?
そんなものあったのか?
あったとしたら、今まで誰がその仕事をやっていたんだろう?
「ガイ・クッパー男爵令息、ロズモンド・カルシュ男爵令息、ミリアにも生徒会の引き継ぎが終わりしだい、生徒会を辞めていただきます。
もっとも彼らには生徒会だけではなく、学園も辞めていただきますが」
母上のおっしゃっている言葉の意味がわからない。
僕だけでなく、ミリアとガイとロズモンドが生徒会を辞めさせられるなんて……!
「母上はなぜそんなことをなさるのですか!?
母上だって、僕が『身分の上下で人を判断しない社会』を作ろうと必死になっているのをご存知でしょう?
そのために下位貴族や平民でも、成績が良ければ生徒会に入れることを証明したのです!
そして彼らは僕の期待に応えて一生懸命生徒会の仕事をこなしてくれました!
そんな彼らを退学に追い込むなんて!
母上は、僕のしてきたことを無に帰すおつもりですか?!」
僕が今まで必死に努力してきたことを、母親に壊されるとは思わなかった。
「『身分の上下で人を判断しない社会』という言葉だけは立派ね。
現生徒会メンバーよりも成績の良い上位貴族を生徒会に入れなかったのは、あなたのその理想を実現するためかしら?」
「ぐっ……それは……!」
確かにミリアやガイ達より、成績の良い上位貴族もいた。
だけど僕は生徒会会長の権限で、彼らを生徒会に入れなかった。
理想の生徒会を実現するために……。
いや、聞こえの良い言葉を言うイエスマンな下位貴族だけで固めたかったというのもある。
僕は成績がよく見目のよいミリアを、生徒会の華としてどうしても加入させたかった。
成績の良い上位貴族は、平民のミリアを生徒会に入れることに反対した。
だから僕は彼らを生徒会のメンバーに選ばなかった。
手すら握らせてくれないソフィーナと違って、ミリアはプレゼントさえ贈れば、キスもそれ以上のこともさせてくれた。
そしてミリアはいつも僕のことを「すごい! すごい!」と言って褒めてくれた。
そのへんもお小言が多いソフィーナより、ミリアの方が可愛らしく見えたポイントだ。
結婚はソフィーナとして、ミリアは妾として離宮に住まわせる予定だった。
「下位貴族の生徒も一生懸命生徒会の仕事をこなしているだけだったら良かったのですが、彼らは第一王子の権力を笠に着て、学園で横暴な行いを始めた。
そして、あなたは彼らの行いを咎めなかった」
日が経つに連れて、ガイたちが偉そうな言動が見え隠れするようになった。
だが彼らは生徒会の仕事を真面目にやってくれたし、僕には従順だったので、多少のことには目をつむっていた。
「改革には多少の犠牲は必要で……」
「その犠牲になった成績優秀な上位貴族の生徒の親は第二王子派に付きました。
あなたがしたことは、『身分の上下で人を判断しない社会』という名目のもと、第一王子の権力を笠に着て横柄な態度で振る舞うモンスターを生み出したに過ぎないわ」
「ぐっ、それは……!」
「かわいそうに、彼らもあなたの目に留まらなければ、平穏な学園生活を送り、無事に卒業して、家督を継ぐことができたでしょうに……」
「ミリアとガイとロズモンドは、これからどうなるのですか?」
「ガイ・クッパー男爵令息とロズモンド・カルシュ男爵令息は、家から勘当されました。
彼らは学園を退学後、炭鉱に送られ強制労働させられるわ。
男爵たちは自分の息子より、己の地位を選んだのね。
息子を切り捨てたところで、上位貴族に歯向かった男爵家がこれから生き残れるとは思えないけど……」
「ミリアは……? 彼女はどうなりました?」
男爵家の令息がその仕打ちなら、平民のミリアはいったいどんな目に……?!
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