番外編③「ウェディングドレス」電子書籍化記念
【ソフィーナ視点】
「十だ。これ以上は譲れない」
「三です。こちらもこれ以上は譲れませんわ」
フリード様と意見が対立したことなど、今までにあったでしょうか?
しかし、これだけは譲れないのです。
「そんな三着だなんて少なすぎるよ!」
「三着も着れば十分です!」
二月のある日、私はフリード様と結婚式の打ち合わせをしていました。
三月は私の卒業式、その翌日は私とフリード様の結婚式。
卒業式と結婚式の準備で予定がパンパンに詰まっています。
クラスメイトの中には卒業後、実家に帰られる方もいます。その方たちは結婚式に参列したあと帰ることになります。
卒業式に参列する方、結婚式のパレードを見に来る方などで、帝都の宿屋は予約でいっぱいです。
帝都の警備に当たる兵士達は、警備に抜けがないか最終チェックに入っています。
結婚式当日には沢山の出店が並ぶようで、地方からは食材が次々に運び込まれています。
お城でも披露宴で出す食器や料理の準備が進んでいます。
そんな中、私達は今日、式で着るウェディングドレスを決めています。
フリード様が帝都にいるデザイナーに型の違うウェディングを十着ずつ発注した結果、お城の中はウェディングで溢れてしまいました。
私達がいる部屋も、所狭しとドレスを着たマネキンが並んでいます。
「Aライン、ベルライン、プリンセスライン、スレンダーライン、マーメイドライン、エンパイアライン、ミニ丈、ロングトレーンドレス、セパレートドレス……ウェディングドレスの型だけでこんなにあるのに、三着しか着てくれないなんてあんまりだよ。めそめそ」
フリード様が顔を手で覆い泣き出してしまいました。
「もう泣かないでくださいフリード様」
「じゃあ、全部のデザインの型のドレスを着てくれる?」
「着ません。厳かな雰囲気のあるロングトレーンドレスと、大人っぽいデザインのマーメイドラインのドレスと、可愛いらしい雰囲気のプリンセスラインのドレス、この三着で十分です」
「三着では君の美しさが表現しきれないよ! せめてもう一着!」
彼が瞳をうるうるさせ、私を見つめてきます。
「捨てられた仔犬みたいな顔で懇願しないでください。もう仕方ないですね。あと一着だけですよ」
私はフリード様の泣き顔に弱いのです。
そう言うとフリード様の表情がぱっと明るくなりました。
先ほどまで泣いていたとは思えません。
「ソフィーナの着るドレスを俺が選んでもいいかな? お願い!」
フリード様の綺麗なお顔で頼まれると断りづらいです。
他の三着は私の希望を通してもらったので、一着ぐらいフリード様の好みのドレスを着るのも良いかもしれません。
「わかりました。フリード様が選んだドレスを着ます」
「本当?! 約束だよ!」
彼は私と指切りをすると、ドレスの山の中に消えて行きました。
比喩ではなく、かくれんぼができるのではないかというぐらい、部屋の中はドレスを着たマネキンで溢れています。
「ソフィーナ! このドレスを着て!!」
数分後、戻ってきたフリード様が手にしていたのは……マイクロミニ丈のドレスでした。
「フ、フリード様! そのドレスはスカートの丈が短すぎます!」
膝上丈のスカートすら履いたことがないのに!
そんなに短い丈のスカートを履いたら太ももを隠せません!
フリード様にならともかく、他の方にそんなはしたない姿を見せるわけにはいきません!
「真っ赤になって可愛いね。心配しなくても大丈夫だよ。このドレスは二人きりの時に着てもらうから」
「それならまぁ……」
フリード様と二人きりの時にマイクロミニ丈のドレスを纏う……それは、それで危険な気が……。
でも私達は結婚するわけですし、初夜とはそういう……ゴニョゴニョ。
「ソフィーナ、頬が真っ赤だよ。何かいけないことでも想像していたのかな?」
「そんな想像してません!」
いけないことなんてちょっとしか想像してません。ほんとにほんのちょっとだけです。
「ああ、ソフィーナはどんな表情をしても可憐だな。早く三月にならないかな。君と一日でも早く結婚したいよ」
彼は私の頬に手を当て、私の唇に自分の唇を重ねました。
私も一日も早くフリード様のお嫁さんになりたいです。
――終わり――
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まほりろ
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