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ホラー短編シリーズ

ドアを開けたのは

作者: リズ

 私はホラーというジャンルが好きだ。

 特にゲームや映画、動画投稿サイトにある心霊写真や心霊スポット探索系の動画なんかは平日、休日問わず閲覧するくらい好きだ。

 夜、部屋を真っ暗にしてヘッドセットを付けて見るホラー映画の臨場感が大好きだ。

 

 まあ私の好みの話は置いておきます、あまり今回の話には関係ありませんので。


 何年か前、まだ寒い季節の事。

 私はその晩休日初日と言うこともあり、ネットの友人と夜遅くまでオンラインゲームを通話を繋いで遊んでいた。


 嫁が勤務に疲れ果てて眠っていたので、できるだけ大声は避けていたのだが、FPSや対人ゲームだとどうしても声が出てしまう。

 トイレついでに寝室を覗くと、嫁と我が家の愛犬のトイプードルが嫁の腕枕で寝ているのを見て和んだ。


 しばらく、なんてものではない。

 その日は珍しく徹夜でゲームをしてしまい、流石に寝るかと言う話になり、皆通話ツールからログアウトしていった。


 徹夜とは言え、時間は朝の三時頃。

 まだ夜中である。

 寒い秋の終わり頃の朝だった。

 徹夜の影響か、私は眠気が一向に来なかったので、ダウンロードしていたゲームでもするかと再度ヘッドセットを装着してそのゲームを起動した。


 そのゲームと言うのが幽霊の痕跡を探り、どんな幽霊がいるかを当てるホラーゲーム。

 知ってる人ならこの説明だけで「ああ、あのゲームか」と言わしめるゲームだと私は思っている。


 しばらくそのゲームをプレイすること数十分。

 スピリットボックスというアイテムを使ってゲーム内で「アピールしてください」と呟く午前4時頃。


 傍から見ればそれがホラーな気もするが、問題はこの時起こった。


 当時、私のPCはリビングの隅に置いていた。

 リビングと廊下を結ぶ出入口のすぐ横だ。


 視線はPCのディスプレイに向いていたが、リビングの出入口のスライド式のドアがスッと少しばかり開いたのがハッキリ見えた。

 

 驚きはしなかった。

 我が家の愛犬はそのドアを開けることが出来るからだ。


 その時も愛犬が私のPCを置いているテーブルの足元に置いている水を飲みに来て、引き戸を開けたのだと思い「どうした、水か?」とそこにいるであろう愛犬に声を掛けながらヘッドセットを外して足元を見たが、愛犬の姿は無かった。

 

 「あれ? おらんやんけ」


 愛犬がいないことを不思議に思い、ドアを全開すると、廊下の突き当り、寝室の前に愛犬がちょこんとお座りして尻尾を振っていた。


 「なんや、やっぱりお前やったか。

 おいで、時間も時間やし、ご飯あげるから」


 私のおいでに反応したのかご飯と言う言葉に反応したのか、愛犬は嬉しそうにチャッチャッチャッチャッとフローリングの廊下に爪が当る音を響かせて走ってきた。


 そしてエサを食べ、水を飲み終わると愛犬は再び眠る為にチャッチャッチャッチャッと足音を響かせながら嫁の眠る寝室へと向かっていった。


 まったく、嫁にばっかり懐きおってからに。

 そんな事を思いながら私はリビングのドアを閉めて再びゲームをするために椅子に座り、ヘッドセットを装着する。


 ゲームを再開した私はしばらくして、ふとあることに気が付く。  

 私はドアが開いて直ぐにヘッドセットを外した。

 

 もし、愛犬がいつも通りドアを開けてから寝室に戻ったとして、寝室は廊下の突き当り左側の部屋。

 六畳間の和室の隣の寝室までの距離がある。

 足音が聞こえないはずがない。

 我が家の廊下はクッションフロアではなく、至って普通のフローリングだ。

 一戸建ての我が家は築20年をそろそろ越える。

 人が忍び足で歩いても体重でギッと音がする廊下。

 ドアだけ開けて寝室まで音もなく戻るのは嫁や愛犬には不可能だ。



 さて、では足音も無くリビングのドアを開けたのは一体誰なのか。



 私は考えるのを止めて幽霊の正体を探るゲームを眠くなるまで続けた。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] あのですね、私はこういうのは弱いのです。
[良い点] さりげないホラー!こーゆーのが一番怖いですっ!
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