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お嬢様お目覚め編

見渡す限りの穏やかな海、温暖なこのエルレ海は内海で荒れることが一年を通してほとんどない。


2日前から主家が所有する商船の視察のため乗船している。

エドはこのギレ家に仕える執事である。もう使えて16年になり、ちょうどお嬢様エレーナ様のお歳と同じである。


この春に執事長として任命され長年の仕事が評価された気がして嬉しかったし、ギレ家の家政、行事全般を取り仕切る立場となり身の引き締まる思いであった。


この視察は、かなり儀礼的なもので、日中は実務上の船長である副船長から説明を聞き、運搬物の見学や招待客や同門貴族との商談や談話が行われて、夜は宴会が催される。


当主が代々船長に就いてきているが、実際の乗ること少ない。

この、数少ない船長の乗船機会のうちの一つである。次期当主の成人祝いと顔見世である。


時期当主といっても、現在の当主のレオパルド様はまだ40歳を少し過ぎただけであり、船長交代はまだまだ先の話である。

ただ、今回の成人の乗船式はいくつか異例のことがあった。まずは次期当主のエレーナ様が女性党首になるということであり、この15代続くギレ家でも女性当主は第四4代のシシーリ様がただお一人だけである。


したがって、通常は女性が乗ることの殆ど無いこの商船に女性が乗ることになった。側使いも含め4名である。そのための準備たるや調度品の調達だけでなく、船内の改修まで行い1年を要した。大掛かりなものとなった。



そして、もう一つが、そのエレーナ様が乗船初日に倒れたことであった。幸いにも宴会も終わり、招待客の多くが自身の船に引き上げた後であったため、大きな騒ぎにはならなかった。しかし、エドは執事長としての初の大任ということで、今回の視察乗船には念入りに準備をしてきたし、幼いころより面倒を見てきたエレーナ様の社交界への顔見世ということで張り切っていただけに、この状況には肝をつぶす思いである。


そして、翌朝に聞こえた悲鳴(怒声?)エレーナ様の部屋は艦橋にあるのだが、成人の乗船式には同門貴族たちも乗船しており対面が悪いため、乗組員や側使えが使用する艦尾にある一室に運び込まれ寝かされている。


誰も近づけてはならないと旦那様が指示を出され、エレーナ様のお部屋は、海に面した一室を当てられその隣が、執事エドの部屋、そして迎いの部屋が副船長(実質船長)ブレッドが未明の悲鳴を聞きつけ顔を見合わせていた。いくら執事と言えど、女性の部屋に無断で入るわけにもいかず

「どうされましたお嬢様?」「入ってよろしいか?」とひとまず聞いてみた。

「・・・は、入らないで」と幾分の間がありお嬢様がお答えになった。とりあえず無事な様子で一息つくことができた。

「どうされました?」再度聞くが今度は返答がない。


副船長とドアの前で顔を見合わせる。

この男、幾分顔には眠気が残っているようだが、目はしっかり覚醒している。

あまり口数の多い男ではないが、30過ぎで副船長までなったのである。腕は確かで、若い頃は外海でも経験を積んでいたらしい。髪はくすんだ金髪で収まりの悪いものを無理やり帽子に押し込んでいる。


しかし、今朝は飛び起きたまま出てきたため、頭髪は外の穏やかな海とは反して荒海のようにうねっている。

「ひとまず、側使えエッタを連れてきましょう。彼女ならお嬢様のお召し替えを担当しておりますし適任でしょう。」ブレッドにこうは言ったものの、なぜ適任なのか自問する。どうやらまだ頭は回っていないらしい。

「そうでしょうな。」副船長は引き結んだ口をなんとか開きそう答えた。


「それでは私がエッタを連れていきますので、ブレッド殿はここで様子をうかがっていただけますか?」これは副船長のブレッドのほうが、ほかの船員に対しても支持を出せる立場であるし不測の事態にも対応しできるだろうと判断したのである。


しかし

「いやいや、それは執事のあなたのほうが適任でしょう。私が連れてまいります。」ともう行ってしまった。どうやらこの男にとって、この手の展開は苦手らしい。


ブレッダが足早に去って行くのを見送り、それでもじっと居ている訳にもいかず、もう一度入室の可否を訪ねたが、同じで断られた。


暫くしてエッタが小走りにやって来た。

ブレッダは旦那様にこのことを知らせに行ったとのことであった。

エッタは長いオリーブ色の髪を一結びにして、同じ緑の瞳をやや潤ませている。


お嬢様より2歳上のおっとりした性格で快活なお嬢様と並ぶと仲の良い姉妹のようで、実際にお嬢様も姉のように慕っていた。


「副船長様から大凡うかがております。」エッタは薄い頬を紅潮させながら言った。落ち着いた性格に珍しく、焦りが見て取れる。


「私がエレーナ様にお話しても良いでしょうか?」

そのために呼んだのだから当然だが、敢えて決まりきった内容を口にすることで自らを落ち着かせる。


「ああ、もちろんだ。よろしくたのむ。」エドもエッタとの人となりを十分把握しているので無粋なことは言わない。10歳以上下の人間だが冷静さと自制において、かなり高い評価をしており、仕事でも信頼している。


エッタが静かに、話かける。「お嬢様、エレーナお嬢様、エッタでございます。」

「・・・・」やはり中からは返事がない。

「入りますね。」エッタが、ほっそりとした指をゆっくりドアにかける。


「入れ・・・」その時、かすかに声が聞こえた。声は低く乱暴な語気を幾分含んでいた。

エッタとエドは、違和感を感じながらも中に入る。


部屋の中では、エレーナがベッドに腰を下ろして座っていた。藍色の滑らかな髪は、なだらかな肩に沿うようにやさしく下に伸びベッドまで緩やかな流れを作っている。

いつもであれはその顔には金色に近い活力にあふれた瞳があるのだが、今はうっすらと開かれてどこか遠くを見つめているようであった。


普段は快活で明るいお嬢様と今の雰囲気にエド、エッタの二人は普段感じることない、ピンと張りつめた雰囲気に初めは困惑したが、今では圧倒され飲まれ声が出ない。


しかし、エドはエレーナの座る姿勢に違和感を覚えた。あろうことかベッドの上で足を組んでいるのである。

性格が快活であるが故に、エレーナが幼いころには目に余る部分は、しっかりと指導してきたエドにとっては、久しぶりに頭に血が上るような感覚であった。また、これが声出す助けにもなったが、くじかれることになった。

「何ですか!お嬢様その座り方は!そ・・・」勢いよく口を開けたが、言い切らぬうちに

「静にせぇ・・」くぐもったような声が響き、エドの頭は一気に冷めていった。エドは言葉自体を聞き取ることができなかったが、その語気に意味を悟った。


「エレーナ様」

二人だけのときにしか使わない。優しい声色でエッタが声をかける。

「もう少しだけ」エレーナの声にいつもの調子が戻っていることに二人は気が付いた。

「もう少しだけ、待ってもらえる。」そう言った後、エレーナは長く息を吐きながらゆっくりと目を開けた。

その目はしばらく中を彷徨いながら、何かを探しているようであったかが、すぐにエッタとエドの方向に焦点を合わせた。

しばらく見つめたままで、珍しいものを見たように見つめている。

「大丈夫ですか?どうなさいました。」とエッタがやさしく問いかける。


はっとしたように瞬いた瞳には、大きな金色の瞳がくっきりと見えた。


「ええ、大丈夫よ。驚かせてしまってごめんない。

やや間をおいて、答えた。勢いよく答えたエレーナの声はやや上擦って、言葉ほど大丈夫そうには聞こえなかった。


「ええ、良かったですわ。」エッタがそう言うのを聞いたエドは、自分なら真っ先に何が起きたか聞き出そうとしてしまうだろうと思った。ここはしばらくエッタに任せたほうが良いだろう。と考えた。


「それにしても、驚きましたわエレーナ様」 エッタが努めて明るくそう言う。

「ごめんない。エッタ エレーナの声には落ち着きが戻っているようであった」。その変化を感じてエッタが続ける。

「そうね、もう大丈夫そうね 宜しければ何かあったのか話してくださいますか?」

「ごめんなさい。今はまだ・・・」少し目線を落としてそう答える。


「ええもちろん、お話しできるようになってからでかまいませんわ。」エッタが明るく返す。

そこまで来てから、エドも重ねる「本当に大丈夫なのですね?それに旦那様もご心配なさいます。訳をお箸していただくわけには・・・」


「エド様、お嬢様にはお時間が必要なようです。時が来れば必ず話してくださいますので」まるで妹を守るようにエッタがしっかりとエドのほうに向きなおって告げた。細身の体が、今は大きく見える。

ドアノックする音が響く、「ブレッダです。入ってもよろしいか?」


エッタのオリーブグリーンの瞳が、二人の眼を見る。「ええ、構いませんよ」

「ご無事でよかった。」ブレッダはそういうと軽く帽子のツバに触れる。先ほどまでと異なり帽子にボリュームのあるくすんだ金髪を収めている。


「旦那様がお呼びでございます。」ブレッダそういうと少しエドのほうを見てから「仕事がございますので、失礼させていただきます。」と告げた。執事長と側使えがいるのである自分がでしゃばる事はないだろうとのこの男らしい考えから出た発言であった。


「お持ちになって」エレーナが声をかける。「朝からお騒がさせして申し訳ございません、それで父上は起きたばかりのご様子でしたか?」

「滅相もございません。旦那様も昨夜の宴席もありましたので、まだお休みの様子でございましたが・・・」ブレッダは不思議そうに答える。

「ありがとう。お仕事のお邪魔をしてはいけないわ。もう下がって頂いてよろしいわ。」

ブレッダはまたツバに触れて部屋を出て行った。


ブレッダの大きな足音が離れていった。

「うう~ん、お腹が空きましたは、エッタ簡単なものを用意してくださらない?」エレーナはそういいながら伸びをした。豊かな胸が一際目立った。


「お嬢様、お聞きになりませんでしたか?旦那様がお呼びですよ」エドがすかさず入れる。

「あら、お父様ももうひと眠りしたいところよ。」軽くエレーナが答える。


「簡単に食事を済ませてから参りましょう。そのほうがいいわよ。」

「かしこまりました。すぐにご用意いたします。」エッタももう言っても無駄だと悟ったのか部屋を後にした。


「エドもご心配をお掛けしてごめんない。もう随分良くなったわ。ありがとう。」と微笑みながら言っているが、もう下がれと言われているようで、エドも何も言えずに部屋を辞した。


エドも朝に悲鳴を聞いて飛び起きてから、何も身支度をほとんどせずに来ていたので、旦那様に面会する前に時間が必要であることはわかっていた。

隣の自室へ戻ると、軽く顔と体を拭く、丁寧に髪をまとめて身支度を済ませる。水は船旅では貴重なため僅かしか支給されないが、そこは商船を営む家のものである心得ておりわずかな水でしっかりと貴族の身なりに相応しい様相に仕上げた。エドは トレードマークの口髭を仕上げているとエッタの声が聞こえてくる。

船それも使用人や乗組員の階層であるので、防音など望めるものではない。悪いとは思いながらも、聞こえてくる声に耳を傾ける。


「まあ、あまりお召し上がりにならなかったのですね。お口に合いませんでしたか?」

_驚いたようなエッタの声が聞こえた_。通常の船旅なら保存食ばかりで塩辛いしはっきり言えばろくなものではが、この乗船式に限ってはほぼ貴族の食事のとして遜色のないものが出る。

新鮮とは言えないまでも、野菜や果物も用意されていた。おそらくエッタの用意したものパンや果物、塩豚のローストなどいつもと変わらないものであろう。

_お腹がすいた。_と仰っていただけにエドは違和感を覚えた。

「やはり、まだお体が悪いのではないだろうか?」との思いが口に出た。


朝の用意が一通り終わったところで、エドも食事を取るため給仕室へ行き固焼きのパンと塩豚のロースト、茹で卵とチーズ簡単な食事を摂った。その後、食後のお茶の準備をしてからエレーナ様の部屋に向かう。


普段なら旦那様とエレーナ様は揃って朝食を取り食後のお茶との流れがあるが、この2日間ほどはできていない。旦那様はおレーナ様を時期当主とお決めになってから以前のようには溺愛なさらなくなった。

溺愛の表現は主人に対して失礼であるが、ともエドは思うが、それ以外の適当な表現が出てこなかった。


しかし、愛娘とのお茶の時間をこよなく愛しておれる様子で、エドとしてもそれが痛いほどよくわかるため、今日は腕に寄りをかけてお茶を淹れるつもりである。


おおよその貴族の家では、朝食後のお茶の時間が設けれており、お茶は執事朝が淹れるものとされ、美味しいお茶をいれらる執事を持つことも一種のステータスとされている程である。このギレ家もこの時間に一日の予定の確認を行う。このこと自体は実務を行う中級貴族以下では珍しいことではないが、エドの場合は、主人と一緒にお茶を飲むことを許されていた。他家の執事が合うことが少ないが、このような話を聞いたことがない。


エドはこの主人とお茶を共にすることに誇りを感じていた。自身が必要とされ認めれられていると感じることができた。それゆえに、この朝のお茶の時間を主人にとって有意義な時間いするべく責任を感じ、最大限の配慮をむけていた。

茶器類や茶葉、お湯のチェックを終えて、エドは少し勇足になっていることを、自覚しながらエレーナの部屋へ向かった。


河原でおじいさんが何か大きなものを洗っている。

しばらくすると、それは子供の遺体を洗っているのだと気づいた。不思議に音は聞こえない。黙々と女の子の死体と、その弟だろうか体についた煤のと血液の混ざり合った黒いものを洗っている。

「ああ、悪いことした」声がした。それが自分からででたものだと気づくのにまがあった。


近くに行こうと思って歩こうとしたが、動く事ができない。足元を見ると、足が一本腐っているように、血の気がなく膨れ上がっていた。そして自分は戸板に寝かされていた。


「もう、仕舞いか」自然と言葉が出た。

「殿さんにも、藩にも悪いことをした。」なぜか言葉が出てくる。

さっきまで、子を洗っていた爺さんのこっちを向いている。霞んでよく見えないが、それは爺さんではないことに気がついた。

自分だ。それも随分若い。しばらくお互いを見つめ合う。

「ありがとう」と聞こえた。深々とお辞儀をしているのが見えた。が、かすみがひどくもうみることもなくそのまましろい光の中に消えていった。モヤにしては明るすぎ思わず目を閉じる。



「・・・ナサマシッ・・」遠くに声がきこえた。しかしすぐに遠くなり静寂が訪れた。こりゃ多分死んだなと思った。


今度は随分と暑い、それに随分と湿気がひどい故郷の長岡も夏は随分と蒸し暑いが、そんなものではない。どうも天国や極楽ではないようで

、当然といえば当然でこれだけ妻や藩に迷惑をかけてきたのだから覚悟はできていた。しかし地獄は蒸し暑くそれに磯臭いのだろうか?どうもおかしい。目を開けてみる。


しかし、夜だろうか室内は薄暗く、見通しは聞かないがどうやら室内のようだ冊風景といえばそうだが室内は板壁に覆われて照明らしきものが一つあるが火はともされていない。

部屋自体は狭い6畳もないかもしれないが窓が一つと扉が一つある。外は漆黒で何も見えないがどこにいるかはわかる。船だ!!揺れと波の音には経験がある。銅銭を売りさばきに乗ったものだ。その時はこんな穏やかな揺れでなくもっと激しい揺れで船酔いには悩まされた。


「助かったのか?」と思った。


それにしても人気がない、ここはどこなのだろうか?どれほど寝ていたのだろうか。あれほどの傷だった足もどうやら何事もないようで、あるべきところにしっかりついている。しかしまあ、おそらく寝静まった時間であろうから、わざわざたたき起こすこともなかろう。


それに見ず知らずの場所であるから、もう一度、寝て起きたらまた別の場所でも一向にかまわない。


この男にとって自身のために慌てるなど思いもよらないことであり、目的のために命と身体を燃やすことことと極端なまでの行動主義がまさに陽明学徒が奇人危険人物の学問と呼ばれるのである。しかし、翌朝このさすがのこの男も悲鳴を上げることになった。いや男ではなかった。

目を覚ますと、どうやら同じ場所に寝ていた。床から上がろうと体を起こそうとすると、髪が随分と伸びていることに気が付いた。おかしい月代をしていないしろ、腰まで伸びていることはどうゆうわけだろうか?それにしても胸が息苦しいし、なぜか重い・・そう思いふと胸に手を当ててみる。

「!?うわっ」思わず声に出てしまった。もう少し触れてみる。「なんと・・・見事だ」今度は両手でかなりの大きさであることがわかった。吉原にかなり通っていたがここまで見事なものは、なかなかお目にかかった事がない。


そして、意識をさらに下の方に向ける。股間のあたりの存在感がない。

恐る恐る手を伸ばす。

「うわーー!」なぜか叫んでしまった。


やはり、ついていなかった。千切れしたわけではない明らかに女性のものだった。

「どうなさいましたか?お嬢様」と聞こえた。そう聞こえただけで実際は全く聞き覚えのない言葉であったが、なぜか意味がわかった。


どう声に出せばいいのか分からずに、必死に記憶を探る。何か心当たりのない記憶がある。見たところ南蛮のような建物や人が映し出された。

見覚えのない人物に、懐かしさや安心感を覚を感じる。全く胸が悪くなりそうな感覚だった。


「あの・・」小さく女性の声が聞こえた。

「今度はなんだ?ええいうるさい!!」と声には出さずに思った。

「ごめんなさい。私にもなんだかよく分からないの、突然意識が遠のいたと思ったらなぜか水の中にいて、あなたが現れた。」と女はいった。


「ええい、うるさい。。。ん、言葉にしていないぞ。」また声に出さずに思った。

「ええ、そこは私の体ですもの、それで・・」また答えるが、随分と小さくしか聞こえない。


どうやら、この体の元の持ち主らしい。突然女性になったのだ、このくらいのことでは驚かない。意識をさらに集中していく、深く深く潜っていくような感覚がある。目の前に大きな湖があった。


おそろしく済んでいて波一つない。湖面を覗き込むと一人の女性がいた。困ったような表情でこっちを見ている。髪の色と体型からしてこの体の持ち主なのだろうが、何かを伝えようと口をひらいれいるが全く聞こえない。


水中に手を伸ばして女を抱き上げようとしたが水中っでは何も触れることはできなかった。水面が乱れ女の姿が波とともに、掻き消えてしまった。


呆然としていると、ドンっドンッ!「お嬢様、どうなされた!?」と男の声で我に帰る。また、あの狭い部屋にいた。

このまま大騒ぎになると良くない。と考えた。状況が飲み込めるまで、なんとか取り繕わなければ・・・しかし、言葉が分からない。しかし意味はわかる。


こうなれば、一か八かだ。と大丈夫と意味を心の中で繰り返しながら

「・・大丈夫・・」となんとかいった。聞いていてもやはり耳慣れない言葉であった。

本当に伝わっただろうか?


そうすると外の焦ったような音が静かになり、ひそひそと声を潜めて相談するような声に変わった。


どうやら、伝わったようであった。ふーと一息つき一人の足音が遠ざかるのを聞きながらもう一度意識を内側へ向けて集中していった。


なんとしても、あの女と話さなければ、強く感じながら。


最後までお読みいただきありがとうございます。初めて大好きなエレーナの話を書きました。書き始めるとエレーナに触れられずに進んでしまって話が長くなってしまいそうだなぁと思っています。


稚拙な文章ですが、暖かく見て頂けますと嬉しいです。もちろんご指摘なども歓迎です。

次回は当主レオポルドの登場です。





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