表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスボス魔王に転生したら...  作者: ねっちゃん
第一章
7/12

7話 マザー・ユーリ

大幅に改変しました


ライカを連れたルシエルが居間にたどり着くと、そこではメルシエル夫人と見知らぬ女性が楽しげに談笑していた。彼女達はルシエルに気づくと、あら、と声を上げた。


「やっと書庫から出てきたのね?ユーリ、紹介するわ...私の子、ルシエルよ」

「エリザの...」


エリザというのはメルシエル夫人の愛称だ。そのため、ユーリと呼ばれた女性が夫人と相当に親しい仲なのだとわかる。


「はじめまして、メルシエル伯爵が長子、ルシエル=メルシエルです」


ルシエルは無邪気な笑みを浮かべる。だが、彼の顔はユーリを見た途端、ピシリと固まった。


(な、なんで...)


ルシエルは自身が酷く動揺していることがわかった。


「あら、まだ小さいのにしっかりしているのね」


鈴の鳴るような声で、百合の花のような笑みを浮かべ、ユーリがルシエルに笑いかける。

...叫ばなかったのを褒めて欲しい。

それくらいに目の前で笑うユーリの顔は、


ルシエルが前世で大好きだったリリウムにそっくりだったのだ。

他人の空似というレベルではない。


「ルシエル?そこに立っていないでこちらに座りなさいな」


夫人の声で我に返ったルシエルは、言われるがままに夫人の隣に座る。すると、ライカが紅茶を入れ、ルシエルの前に置いてくれた。

乾いた口を潤すために、ルシエルは一息で紅茶を飲み干した。


「ルシエル、ルベルム男爵の奥方、ユーリ=ルベルム夫人よ。私の学園からの親友なの」

「はじめまして、ルシエルくん」


そう言ってユーリはまた花が咲くように微笑んだ。


(リリウムのお母さんだ)


リリウムのエピソードにチラリとだけ登場したリリウムの母親。

リリウムが生まれて間もない頃、友の家を訪れた帰りにモンスターに襲われ、亡くなっている。

そう作中では説明されていた彼女が生きている。

そんなことを考えていたルシエルの脳裏にふと何かが引っかかる。


本編開始時、ルシエルの年齢は20歳だった。

ファンブックで公開された際、結構若いんだなと思った記憶がある。それから、リリウム。彼女は17歳であると、作中で言及されていた。

今、ルシエルが3歳であることを考えると...


(リリウム、もう生まれてるんじゃ...)


「そうだわ!ユーリ、あなた体調は大丈夫なの?」

「えぇ、心配をかけてごめんなさいね。もう大丈夫だとお医者様にもお墨付きをもらったわ」

「え...ユーリ様はなにか病気だったのですか?」


考え事をしていて、2人の話を完全に聞き流していたルシエルだったが、気になる話に思わず口を挟んでしまった。

デリケートなことを聞いてしまった、と焦るルシエルにユーリは安心させるように笑いかけた。


「病気ではないから大丈夫よ...半年ほど前に出産してから体調が優れなかったの」

「確か...リリウムちゃんよね?娘だなんて羨ましいわ〜」


夫人の言葉にルシエルはばっと顔を向けた。

そんなルシエルに気づかなかった2人は会話を続けていく。


(リリウムはもう生まれてるのか...)


「ええ、私の自慢の娘よ。でも、ルシエルくんだって可愛いじゃない」

「ルシエルは可愛いには可愛いよだけど...この子書庫にこもりっきりなの」


外で一緒に遊びたいのに、と残念そうに嘆く夫人に対して、ユーリは楽しそうに笑う。


「そうね。エリザは運動が好きだものね。ルシエルくん、もっとエリザと遊んであげてね」

「...善処します」


ルシエルがそう言うとユーリはコロコロと笑った。


「それじゃあエリザ。私もう帰るわね。今日はありがとう」

「ええ、私も楽しかったわ。落ち着いたら、次はリリウムちゃんも連れていらして」

「も、もう帰るんですか?」


リリウムがも生まれてるなら、ユーリがモンスターに襲われるのは、この帰りである可能性が高い。


(どうにかしなくては...)


とっさにルシエルはユーリの袖を掴んだ。


「ルシエル。あなた、ユーリのこと気に入ったのね」

「ありがとう、ルシエルくん。でも、ごめんなさいね...もう帰らなくてはいけないの」


ほら、離しなさい、と夫人がルシエルの手を離そうと触れたその時だった。


玉のような涙。


まさしくその通りの涙がルシエルの目からぼたぼたとカーペットへと落ちる。

普段全く泣かないルシエルが泣いていることに驚いた夫人は慌ててルシエルに駆け寄った。


「ど、どうしたの、ルシエル?そんなにユーリと一緒にいたかったの?」


泣くルシエルと慌てふためくメルシエル夫人にとんでもなく混沌とした空気が部屋を支配する。


「ルシエルくん、目を痛めてしまうわ」


目を擦りながら頷くルシエルにユーリはま白いハンカチを渡し、エリザに声をかけた。


「ねぇ、エリザ?今日泊まっていいかしら」

「もちろん!でも...」


リリウムちゃんは大丈夫なの、と言外に聞く夫人にユーリは大きく頷いた。


「実はね、お義母様から休息も兼ねて泊まってらっしゃいて言われていたの。でも、まだリリウムも小さいから、今日はやめようと思っていたのだけれど...」


ユーリは親友に微笑みかけた後、彼女に似た子どもを見た。


「エリザ?今日は一晩中喋り倒すわよ」

「いいわね!ユーリとのお喋りは何年ぶりかしら…」


キャラキャラと騒ぐ彼女達。

まるで女学生に戻ったかのようだ。

部屋が一気にかしましくなる。


ルシエルはその様子を何かを決意するかのように見つめていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ