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テルマエ・伯爵邸

アーサー王子がやってきた。

そして毎度おなじみのイズモ・ダイスケとナンブ・リュウゾウの一戦を見逃して口惜しがっている。

とはいえ、大の字になるまで死力を尽くして闘った二人に、「もう一番」とも言えず、伯爵さまの取り計らいによりその場は全員で風呂となった。


いま一度言おう。

私たちの中で貴族関係というのはナンブ・リュウゾウだけだ。

それ以外の親衛隊士たちは、私もふくめてみな庶民である。


それがアーサー王子もふくめて、全員で湯に浸かろうというのだ。

同じ釜の飯を食う。

そして裸のつき合いというのは、もはや同志同胞の間柄である。


それをアーサー王子と……。

まさしくこれは爆弾発言と言おうか、それとも爆弾伯爵とでも言えばいいのか。

早い話が共に風呂というのは、神にも等しい王族の股間に、我々と同じモノがぶら下がっているのを見ることになるのである。


そうなるともう、王室の威厳もへったくれも無い。

いいのか伯爵さま?

いいのかアーサー王子?


「うむ、余もみなと湯殿を共にするのは学生寮以来だ。楽しみであるぞ」


そういやアーサー王子、学生寮の風呂場では取り巻き連中がガードしてて、ロイヤル・スティックを見せないようにしていたっけか?

まあ、ロイヤルな一品だ。

拝見して目が潰れても困る。


なにしろロイヤルだからな。

ということで、案内役の方に導かれ、伯爵も王子も庶民たちも、ゾロゾロと湯殿へ向かった。

もちろんイズモ・キョウカとコゲ茶色、さらには女性忍び軍団は女性専用の湯殿である。


私はナンブ・リュウゾウのお付きの者として、寮のような部屋で暮らしている。

そこは北領地で、三男坊に似合いの、それほど豪華ではない……というか庶民的な湯屋のような風呂場である。

ちなみに男爵さまの本邸の風呂場は使ったことが無い。


従者専用の風呂しか入ったことが無い。

何が言いたいかというと、貴族風呂初体験ということだ。

みなで全裸となり、戸をガラリと開けて湯気の向こうを透かして見れば、まず板の間ではないことに驚かされた。


タイル張りである。

それも床一面びっしりとだ。

さらには広い。


親衛隊三〇人プラスアルファが一斉に入っても、まだまだ余裕がある。

もしかしたら、学生寮の風呂よりも広いかもしれない。

その広い湯船に滾々と、獅子像の口を通した湯が流れ込んでくる。


「おう、明るい風呂じゃのう、兄者」


「まあな、そこら中にランプが灯してある。贅沢な限りじゃわい」


ナンブ・リュウゾウとイズモ・ダイスケだ。

両者を比較してみよう。

イズモ・ダイスケは堂々たる体躯。


大柄な骨格で筋肉も隆々と盛り上がっている。

そして茂みの中から、ゴロリとしたモノが下がっていた。

巨漢に相応しい立派なビッグ・ボーイ・ブルーズだ。


対するナンブ・リュウゾウ、小柄ながらも引き締まった筋肉。

もしかすると出会った頃よりも筋肉の陰影がくっきりとしているかもしれない。

そして手足の短さを感じるが、逆にそれがより逞しく見える。


あまり逞しさを感じないのは、茂みの中のリトル・ボーイである。

まあ、自分の主なので、これ以上のコメントは差し控えておく。

そして王子のロイヤルな差し料はというと、私と大して代わり映えのしない、面白くもおかしくも無いモノであった。


まあ、王子とて人間なのだ。

貴族の息子に仕えていれば、いまさら王族を神の眷属などとは思いもしない。

故にその差し料が七色に輝いているとか、毒蛇のように勝手に動くということが無いのもわかる。

しかし私がそれぞれのモノをサラリと流し見しているのに対し、アーサー王子のお供として同行してきたバキ少年は、ウットリするような眼差しで王子の裸体を眺めている。


「どうしたんだい、バキくん?」


バキ少年はナンブ・リュウゾウなどよりも手足は長く、少年としてはあまりにも発達した筋肉である。

脂肪の絞り込み具合は、ナンブ・リュウゾウを遥かに凌いでいた。


「い、いえ、なんでもありません! ヤハラさま……」


そうは言うものの、やはり王子を見る眼差しは恋する者のそれに等しい。

まあ、無理も無い。

王子はそれだけ美形であり、線も細いのだ。


むくつけき戦闘集団の中で生きてきたであろうバキ少年にとって、王子はよろめくほどに美しい美の化身に映るのかもしれない。

戦場に出る者の習わしとして、『女食って半人前、男も食って一人前』というのがある。

子をもうけなければならないロイヤルな一族に衆道は御法度なのかもしれないが、バキ少年は戦士であり庶民なのである。


このくらいのよろめきは許してあげてもらいたい。

なにしろ身分と倫理観の違う、実ることのない初恋なのだから。

我ながら上手いことまとめた、と一人納得していると、身体を洗っているナンブ・リュウゾウが言う。


「ヤハラどの、さっさと身体を洗って湯に浸からねば、そなたのハトが風邪をひくぞ?」


ハト。

ちょっとした隠語だ。

男子の証明とかけて、ハトと読む。

そのココロは?

どちらも豆を突っつく。




お後が宜しいようで。


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