下賤の皇子
アクションって絶対漫画のがわかりやすいですよね。
1852年、フランスでは王政が廃止され、共和制へとシフトしたが国は混乱状態にあった。そんな中で台頭したナポレオン3世は民衆や商人らに人気を博し、第二帝政を築き上げた。国は、新たなスタートを切ろうとしている、しかし、王族はまだ遺っていた!
これは、ある一人の王族の冒険譚である───
「よし!資材はそこにおいておけ!」「ウィッス!」「隊長!この町もかなり完成に近づいて参りましたね」「あぁ、陛下はやはり只者ではない。パリの街並みを、丸ごと変えてしまうなどとはな!」そうである。パリ市街は元々中心のエッフェル塔に向かって直線道路が幾つもあるものではなかった。この町で何度となく起こった反乱の経験から、彼は、民衆の掌返しを簡単に鎮圧できるよう考えたのである。とは言え、彼は民衆には絶大な支持を得ているので彼の統治下ではその心配はないだろうが。ナポレオンが行ったことは都市の整備のみではない、他国の戦争にも介入し、戦果を収めてきた。偉大なナポレオン=ボナパルドの甥という、血統の点もあり、彼を評価する者も多く優秀な将校、巧みな外交官、一人で何千もの敵を蹴散らしたとされる懐刀が二枚。すでに人脈面でも地盤は固まっており、震度4程度では揺らがないほど今の地位は堅固なものであった。だからといって、彼に悩みがないわけではなかった。「ルイ殿下は...今頃どうしておられるのでしょうか...」「隊長、ルイ殿下とは?」部下に尋ねられて我に返った。「あぁ、すまない。勤務中に。...かつて陛下には弟がいらっしゃったのだ...とても勇猛な将であり、陛下も大層信頼していたのだが...我らが起こしたクーデターの際、彼は姿を消してしまったのだ。あれから15年が経った。どこか異界の地で、療養なさってくれればよいのだがな...」「隊長!気を取り直してくださいよ!」「そうですよ!あなたはこれからの時代を作る人間です!」「あなたがそんなんでは、成せるものも成せません」
...部下に諭されてしまった、俺はこんなにも慕われていたのだな。「わかった、確かに、大切なのは未来だ。我々で、よりこの国を豊かにするのだ!」「「ハッ!!」」
視点が変わってパリ郊外。
「あんた、ドジらないよう気ぃつけるだよ~」「大丈夫!卵買いにいくだけだから心配いらなぁいー!」
と、思っていた矢先、早速やらかしました。
「おい兄ちゃん!俺の服に生卵食わしちゃってよぉ~?絵でも描いてくれるんてんのかい~?」「ごめんなさい、うちの鶏が卵産まなくなっちゃって」「エ?お前鶏のせいにすんの?そいつもう人間でいうヨボヨボの婆さんなんだろ」
どうしようどうしようどうしよう。お金ったってさっき貰ったお釣りも落としちゃって無一文だし
「どうやら反省の色が青色でも手段ってぇのはねぇらしいなぁ、変わりにお前を緑色に塗ってやるよ俺の拳でなぁ!」
「ブラァ!」地面に突っ伏した。「アレェ!?ここ誰か助けれくれて、この人が倒れるシーンじゃないのぉ!?」「お前ェェェ!俺をどんな風に見てんだバカヤロー!もう許さねぇぞ!!本気でぶっ飛ばす!!」ヤバい、今度こそ死んだ...バケットたらふく食べてから死にたかったな...「お...「やれやれ、素直に助けてって言えりゃいいのにさ」言い終わっている頃には、男は額を抑えて既にうずくまっている。その側には銅銭が太陽光を反射してとても眩しい。救世主はコインを投げた先にいた、短剣をもった15歳ぐらいの少年。ポカンとしていたが「いやちょってまって!あんたそれなら先に助けてよ!全部見てたんじゃないの!?」「舐めやがってこのクソガキ!」レベル差はあるが二人揃って彼に怒りが向く。男が殴りかかる。少年は立ったままだ。
ただこう言った。「降参するか?」言い終わる頃には喉元に剣先がギリギリついてない。時が止まった、これはみんなが動かないだけなのだが当然といえば当然、誰もこの攻撃を目視できなかった。神速。ヤクザは恐る恐る出した右手を戻している。震えている。理由は恐怖、そしてもう一つ。「キャァァァァァ!」「うげぇぇぇぇぇ!こ、こいつ漏らしてやがるぜ!」「餌を横取りされて脳が固まった鼠みたいな顔じゃねぇか、この若いの」民衆の声で意識を取り戻したダサいヤンキーは上の顔からも水を流しながら「お、お、おマエ覚えてやがれうわぁぁぁぁぁぁん」地面をマーキングしながら去っていく去っていく。やはり最初に私が見込んだ通りの男だった。それにしても、気になるのはこの少年。さっきまでは焦ってよく見なかったが、服は庶民の者なのに対し、剣をもっている、更に言えばそれも錦だ。一般階級とは到底思えない。とりあえず男に対面し、言った「一発目で来なさい!何で二発目!?なるべくは怪我したくないよ!」「それが人に助けてもらった態度か!命はまだあるし俺はブラァ!って言って倒れたお前っていう面白いものがみれたしwinwinだろ」平然と言ってのけたので周りで見ていた人達は爆笑と拍手で彼を歓迎した。その一方で「おい、完全に一般市民にお株奪われちゃったよ!やっぱ1発目ってのがよかったんだって」
「お前もこれ面白そうだからちょっと待とうって行ったじゃん!全部俺に責任押しつけんな!」...元救世主役だった兵士たちは、たちまち人気者と化した小剣士をちょっと妬んだ。「よくよく考えりゃ、剣って民がもっちゃダメなんじゃ...」「あっ、ほんとだ。俺隊長呼んでくるわ」
未だ腑に落ちないお使いと神速剣士の元に兵士たちが集まってきていた。無論、この隊を率いているのは街並み整備に当たっていたさっきの隊長である。「...なんすか?」「話は聞いた。よく民衆を我々に変わり、護ってくれた。礼を言わせてくれ。しかし、その剣を使うこととは話が別だ。我々が押収させてもらう。」隊長が言い終わる前には顔が膨らんでおり「やだよーだ!これは俺の、大切なお守りだ。渡すわけにはいかねぇよ!」
そういい終わる前には隊を背に走り出した。負けじと追いかけ出す兵士たち「クソ!俺らがホントはベタ褒めされるところだったんだ!」「また婚期逃したじゃねぇかチクショー」こいつらプライドと闘ってるんだけど。あのガキそれに関して何も悪くないんだけど。「ハァ...」情報量が多すぎる。疲れたから今日は帰ることにしよう。...何か忘れている気がするが、まぁいいや。
少年と兵士の鬼ごっこはまだなお続いていた。
くだらないことで争えていたので、国内はまだ平和だったのである。「隊長、曲がりましたよ!奴は別の道に出るつもりです!」「慌てるな!あそこは袋小路だ。念の為、別の道に抜けられてもいいようにさっき部隊を半分に分け、警備に当たらせている。...今回は別働隊、お前らは休日だな」道は把握済みだ。工事に当たっている以上、どこからどうつながるかもわかっている。どんな早技でも、逃げ場がないなら数の暴力で押し切れる。
「...と考えているんだろ?甘いぜ」しまった、後悔した。整備用の木材が階段状に積み上げられている。「...別働隊、お前たちにはすまないが今日も任務だ。」「別働隊が向こう側の通路を包囲するまで時間をかけろ!かかれ!」続けて指示を出した隊長命令に、すぐさま槍を片手に5人ほど走り出す。
───直後、その5人は気絶して前のめりに倒れ込んだ。
決して見くびっていたわけではない、が甘かった。一兵卒とは言えそれなりに鍛え上げられたフランス軍である。その5人をあっという間に叩きのめした。この人物只者ではない。
「お前たち、下がっていろ。私が負けた場合、この男を通してやれ」「「!隊長!!」」「これ以上の被害は出したくない。留めるには、私がやるしかない」意外そうにした目の前の男は違和感であった。どうも何か違う。それというものに気がついた者は隊長のみだった。彼は少年に非礼を詫びずにはいられなかった。
「貴殿を見くびったことを謝罪する。私の名はティエール。この隊を率いる長だ。聞いたとおり、私に勝てばここを通るがいい。旧王宮剣術使い」噂には聞いていた。フランス王家はまだ一族が身を潜めていると。それは恐らく彼に違いない。剣もオルレアン家の紋章を意図的に縫って誤魔化している。勝てるとは思わない。しかし、敵を前にして逃げるのは彼の矜持が許さなかった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」ティエールが走り出す。少年はまた動かない。ただ決着はついていた。
剣の柄が、首へ打撃を与えた。
ティエールが体勢を崩す中、男はボソッと言った
「ティエール...っつったか?また手合わせしてくれ、それと
俺はガキでも王宮剣術使いでもない、レゼジーだ。」
声こそ小さかったが、確かに私にいった。
───やはり、バロック式剣術。だけではない、あれは、クーデター時に見たことがある。あの剣端は!!まさに皇帝の剣術!
...それにしても、世の中には強い者もいるものよなぁ
意識が...沈んでいく...
剛毅な大将を易々と破ったレゼジー少年は、堂々と大通りを抜けていった。
過去に考えてたものをちょっと変えてあげてみました。ティエールさんこんな目立たさせる気なかったんだけどな(笑)