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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 色黒のリーダーはまだ状況が飲み込めていないようで目を丸くしてアリシアを見つめた。

 アリシアの顔がどんどん険しくなっていく。

 体を必死に動かそうとしているのにびくともしない。声すら出ないようだ。

 アリシアがキャザー・リズの魔力と必死に戦っているのが分かる。

 眉間に皺を寄せながら苦しそうな表情を浮かべる。

 それでも、全く動かない。

 ……彼女は聖女だ。

 誰も彼女の魔力の強さには敵わない。

 僕は扉の外を見る。

 最大限の声で僕は叫んだ。

「キャザー・リズ! やめろ!」

 僕の声は全く彼女には届かない。

 届いても何をやめるのか分からないだろう。

 僕が叫んだ事で色黒のリーダーが状況を察したようだ。

「ガハハハッ 動けねえのかよ」

 そう言って薄汚れた歯を見せながら豪快に笑った。

 色黒のリーダーはポケットから小さな刃物を取り出した。

 この時、初めてこの戦いでアリシアの表情に焦りが見えた。

「アリシア!!」

 僕が叫んだ所で何も事態は変わらないけど、叫ばずにはいられなかった。

 色黒のリーダーはアリシアに刃物を向けた。 

 不吉で薄気味悪い笑顔を浮かべる。

 僕は自分が動けないのが心底悔しかった。

 どうにか足を動かそうとしても、全く動かない。

 そこで僕は自分の足が折れている事に初めて気付いた。

 なんとか手で這いつくばりながらアリシアの元へ向かおうとした。

 すると上から色黒のリーダーの大きな足が僕の手を踏んづける。

「っぁあああ」

 グリグリと僕の手を押しつぶす。

「きゃははははは」

 狂気的な笑いが上から聞こえてくる。

 何とか顔をあげようとしたが、その前にそいつに思い切り腹を蹴られた。

 僕はそのまま軽々と宙を舞った。

 またゆっくりと時間が進んでいく。

 色黒のリーダーは気持ち悪い笑みを浮かべながら僕を見る。

 アリシアが僕を心配そうな目で見ている。

 僕の心配より自分の心配をしろと僕は目で訴えた。

 ゴンッと小屋に音が響く。僕はそのまま床に落ちた。

 全身に激痛が走った。このまま僕も死ぬのかもしれない。

 けど、どの痛みよりアリシアがこの世からいなくなる事の方が僕には耐えられない。

 こんなぼろぼろの体でいいのなら全部あげるから。

 こんなぼろぼろの命でいいのなら僕の命をあげるから。

 どうか神様、アリシアを死なせないでください。

 もう二度と神様を恨んだりしません。

 貧困村で生まれた事に対して、理不尽な状況に対してもう二度と文句を言いません。

 だから、どうか、アリシアだけは助けてあげてください。

 僕は心の底から願った。

 何とか残された力を全部使って、這いつくばってアリシアの元に向かう。

 もう顔を上げる力も残っていない。

「……っ」

僕の目の前に鮮やかな赤色の液体が数滴落ちた。

背筋に冷たいものが走り、自分の血の気が引くのが分かった。

 

 


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― 新着の感想 ―
[一言] うーん… ちょっといろいろご都合主義すぎるなぁ… お偉いさん方、国の命運を左右するような頼みごとしといて悪女に護衛も付けんのか?と。 ひとりは父親じゃないの?と。 聖女が生理的に無理すぎる上…
[気になる点] これ、あきらかにリズの殺人幇助だよね? それなのに、この痕誰もリズの罪を追求しないのはすごく疑問!! アリシア含めて全員洗脳されてんじゃないのか?
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