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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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前回に続きグロイ表現があります。

 筋肉男は体を震わせながらもアリシアに向かって剣を構える。

 色黒のリーダーは未だにこの状況を理解できず目を見開いている。

「うおおおおお!」

 筋肉男がアリシアに向かって直進する。

 さっきと全く体勢を変えずに突っ込んでいくって馬鹿だな。

 アリシアは一瞬何かを感じとったように扉の外の方に振り向いた。

 けど、すぐに前を向いて、気付けば今度は筋肉男の横にいてもう斧を振り下ろしていた。

 筋肉男の剣は斧の威力に負けて割れた。

 僕は自分の目を疑ってしまった。

 まさか剣を折ってしまうなんて……。

 剣を振り下ろす速さも勿論必要だが、何よりもアリシアの腕力に驚いた。

 あんな細い腕なのに……。

 前から腕の筋肉が凄いある事は分かっていたが、まさか剣を割るとは思わなかった。

 魔法なしでもこんなに強いのか。

 多分、魔法が使えない理由はあの首輪のせいだろう。

 前に本で読んだことがある、魔力を封じ込める首輪。

「俺の……剣が」

 筋肉男が唖然としながら自分の手元を見ている。

 アリシアは斧を地面に落とし、豪快に飛んだ。

 なんて脚力だ。

 そのまま両手で筋肉男の頭を掴み顔に膝蹴りを入れた。

 アリシアが床に着地したのと同時に筋肉男は顔を押さえながらよろめいた。

 指の間から血が滴っている。 

 それが鼻血なのか、口から血が出ているのか僕には分からない。

 アリシアは落とした斧を拾い、それを高く持ち上げた。

 筋肉男はカタカタと恐怖で体を震わせながら怯えた顔で立ちすくんでいる。

 後退る事ももう出来ないみたいだ。

 アリシアは助走をつけて思い切り地面を蹴った。

 真正面から斧を振り下ろすのだろうと思っていたが、アリシアはまた消えた。

 筋肉男の真横の壁に地面と垂直になる形で一瞬だけ足を着地させ、体勢を崩さずにそのまま壁を蹴った。

 そして、凄まじい速さで斧を筋肉男の首の真後ろから水平に動かした。

 その軽やかな身のこなしもスピードも全てが人間離れしたものだった。

 アリシアの動きには無駄な動きが一つもなかった。人を殺すという事に対して躊躇うこともなかった。

 筋肉男の頭が吹っ飛んだ。

 首からは少し暗めの赤い血が大量に飛び散る。

 小屋の中にいる人全員が彼の血を浴びる事になった。

 これは多分、後で感染症の検査を受けさせられるんだろうな。

 僕は呑気にそんな事を考えた。

 僕にはその頭が吹っ飛んでいる瞬間がスローモーションに見えた。

 ゆっくりと吹き飛ぶ筋肉男の頭は鮮明に脳裏に焼きついた。

 ボトンッと音を立てて、筋肉男の頭は床に落ち、転がって扉の外に出た。

 僕はただ茫然とその頭の動きを目で追っていた。

「きゃあああああああああ」

 突然扉の外から悲鳴が聞こえた。

 この甲高い声は……。

 僕はそっと扉の方に目を向けた。……キャザー・リズだ。

 道理でさっきアリシアが扉の外を見たのか。

 キャザー・リズの周りにはいつもの美形集団がいる。無能の集まり達だ。

 けど、ヘンリが見当たらない……それにデュークも。

 皆固まって目を大きく見開いたままその頭を眺めている。

 キャザー・リズの震える肩をそっとアリシアの兄……アランが支えているのが見えた。

 僕はこの後のアリシアの事を心配して彼女に目を向けた。

 アリシアは悲鳴には全く反応せずに目の前の色黒のリーダーだけを見下げるようにして見ていた。

「バイバイ」

 彼女はそう言って容赦なく斧を色黒のリーダーに振り下ろそうとした。

「やめてええええええ」

 小屋の中で盛大にキャザー・リズの声が響いた。

 その瞬間アリシアの動きが止まった。

 ……止められたんだ。

 キャザー・リズの魔法で。 

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― 新着の感想 ―
 ……状況を知ろうとせずに思い込みの主観だけで行動する最低女。と思えてしまう推定聖女。
リズとかいうクソはアリシアに舌戦で勝てないと知ったから殺らなきゃ殺られる状況のアリシアの動きを止めて間接的に殺しに来たか (本人の意思が違くとも状況的にはこう見える)
[一言] こいつホンマ
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