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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 私は大きな扉の前で大きく安堵の息を吐いた。

 やっとあの部屋から脱出できたわ。  

 早く家に帰ってマカロンでも食べたいわ。

 私は来た道を逆戻りした。

 無事に出口にまで行けるかしら。

 行きは侍女さんの背中を見て来たから記憶が曖昧なのよね。

 ……この道、通ったかしら?

 こんなに大きな花瓶が置かれた所を通った覚えがないのよね。

 私は壁にある絵に目を向けた。

 深い青色の瞳に絵の中の空と同じ色の髪の毛……これって幼少期の国王様よね? 

 若い頃は髪の毛が今より少し明るかったのね。

 その隣の顔の整った優しそうな人は国王様のお父様かしら?

 ……どこかで見た事あるような気がするのだけど。

 私、一度会ったら絶対に顔は覚えているから、気のせいかしら?

「アリシア?」

 デューク様の声が耳に響いた。

 私はゆっくり声のする方へ振り向いた。

 窓からの陽光が差し込みデューク様の耳元で何かが輝いている。

 あれは……ピアス?

 部屋に入った時は気付かなかったわ。

 デューク様が私の方へ近づいてくる。

 私は目を凝らしてそのピアスをよく見た。

 澄んだ蒼い宝石……魔法石だわ。

 レベル100になればつける事が出来るもの。

 という事は、デューク様はもうレベル100を習得したって事よね?

 じゃあ、もう世界で数名のうちの一人になったって事だわ……。

 そういえば、ゲームでもヒロインよりデューク様の方がレベル100を習得するのは早かった気がするわ。

 それにしても、こんなに早かったかしら?

「どうしたんだ?」

 デューク様は穏やかな声でそう言った。

 この距離間で話しかけないでいただきたいわ。近すぎるのよ。

 ……これで迷子なんて言ったら悪女としてはまずいわよね。 

「探索していたのですわ」

 私は微笑みながら答えた。

 デューク様は私を見透かしたような目で見る。

 デューク様は多分、私が迷子だって事に気付いているわよね。

 その大人の余裕を見せつけてくるのをやめてほしいわ。

「門まで送ろうか?」

 デューク様が少し笑ってそう言った。

 これは……完璧に妹扱いよね? 

 デューク様が私に抱いている好きっていう感情は妹としてって事でいいのよね?

 それにしてもどうしてデューク様が私に好意を抱いてくれるようになったのか未だに分からないのよね。

 ゲームの中ではアリシアの事は完璧に嫌っていたはずなのに……。

 もしかして、デューク様って私の事を消す為に演技していたりするのかしら。

 私への優しい態度とは裏腹にとても私の事を恨んでいるとか……それは流石にないわよね。

 私、ヘンリお兄様の話を聞いてから、皆の事を疑うようになったのよね。

「アリシア?」

 デューク様が私の顔を覗き込んだ。

 ……この距離はまずいわ。

 離れて下さい、私の心臓が壊れますわ。

 デューク様の匂いがふんわりと私を包みこむ。

 本当に良い匂いね、癒されるわ。

 自分の顔が赤くなっていくのが分かった。

 最悪ですわ、悪女たるもの感情は表に出してはいけないのに。

 デューク様が私の事を見て優しい眼差しで軽く笑った。

「真っ赤だぞ」

 そんな事は言われなくても分かっていますわ。

 私……からかわれているのかしら?

 段々そんな気がしてきたわ。正直、デューク様の本性が分からないわ。

 クールな方だと思っていたけれど、私の事は見透かすし……結構意地悪な方なのかしら?

「デューク様はどんなお方なのですか?」

 私の質問にデューク様は固まった。

 目をしばたかせながら私を見ている。

 あら、そんなに驚かれる質問だったかしら。

「デューク様の本性がよく分からないのですわ」

「本性?」 

「はい。私の事をからかうのが好きなのですか?」

 デューク様は一瞬目を見開いて固まったが、すぐに表情を和らげた。

「からかうのは嫌いではないな」

 デューク様はそう言って私の頭をガシガシと撫でた。

 ……その表情でそんな事を言いますか!?

 世界中のデューク様のファンが失神しますわ。

 私も悪女を目指していなかったら失神まではいかなくても鼻血は出ていますわ。

 本当にデューク様のキャラが全く掴めないわ。

 あんな甘い表情で頭を撫でるって……。

 さらっとそんな事が出来るなんてやっぱり美形王子は凄いわね。

「行くぞ」

 そう言ってデューク様は歩き出した。

 こういう時ってデューク様の後ろを歩けばいいのかしら? それとも横を歩くべきなのかしら?

 私の立場的にデューク様との距離は近くならない方が良いわよね?

 デューク様とこれ以上距離が近くなったら悪役令嬢的にはまずいもの。

 私はデューク様の少し後を歩いた。

 デューク様は私に歩くペースを合わせてくれた。

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