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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「ジル~」

「アリシア? どうしたの?」

「部屋に入ってもいいかしら?」

「いいよ」

 私とヘンリお兄様はジルの部屋の扉をゆっくり開けて部屋に足を踏み入れた。

 ジルが固まったまま私達を見ている。

「アリ、その人誰?」

 ジルが目を大きく見開きながらそう言った。

「私のお兄様よ」

「お兄様?」

「そうよ。貴方と話してみたいそうよ」

 私がそう言うと、ジルの目つきが変わった。

 鋭い目でお兄様を睨んでいる。

 あら、なかなか怖いわ。

 その目が私に向けられていなくて良かったわ。

「僕はそいつと話す事なんてなにもない」

 尖ったジルになっちゃったわ。

 このジルをお兄様はどう相手するのかしら。

 ヘンリお兄様はそんな穏やかで怒らないはず……なんて目をなさっているのかしら。

 物凄い剣幕でジルを睨んでいるわ。

 私が思っていた方法と違うわ。

 ヒロインが何の根拠もなく大丈夫よって言って微笑んで仲良くなるパターンだと思ったのだけど……どうやら違うみたいだわ。

 ヘンリお兄様ってやっぱり私と似ているのかしら。

「何?」

 ジルがヘンリお兄様から目を逸らさずにそう言った。

「お前、アリの助手なんだろ?」

「そうだけど」

「ならもう少し態度改めろよ」

「は? 僕がニコニコして愛想振りまくとでも思うの?」 

 あら、何だか物凄い不穏な空気ね。

 いきなり喧嘩腰なんてヘンリお兄様らしくないわね。

「ニコニコ? そんなのする必要なんかない」

「何が言いたいわけ?」

 ジルが片眉を上げてそう言った。

「一番怖い人の特徴って分かるか?」

「は? さっきから何言ってるの?」

「表情が顔に出ない奴が一番怖いんだ。お前は表情が顔に出過ぎた。俺が入ってきた瞬間、一瞬怯えた顔をしただろ?」

「してない」

「無意識にしているんだろ。理由は知らないが、お前は自分の味方かどうか分からない男性を恐れている。露骨に顔に出ていたぞ」

「恐れてなんかいない」

 ジルは目を丸くしてそう言った。

 なんだかヘンリお兄様がいつもと別人に見えるわ。

 それにジルが年相応の少年に見えてきたわ。

「別に恐れるなとは言っていない。それを表情に出すなって言っているだけだ。アリが助手にするくらいなんだ、お前は相当賢いんだろ?」

「結局、何が言いたいわけ?」

「そうして表情を読み取られたら一瞬で弱みを握られるぞ」

 ジルは黙り込んだままヘンリお兄様を見ている。 

 さっきまでの敵対心はないみたいだわ。

 ヘンリお兄様がいつもニコニコしていたのってもしかして腹黒さを隠すためかしら。

 アルバートお兄様の笑顔は黒いって事は分かるのだけど、ヘンリお兄様から黒さなんて感じた事がないのよね。純粋な笑顔だと思っていたわ。

「どんな人生を今まで歩んできたのか知らないが、これからはアリの隣にいるんだろ? 上手く自分の心を隠せよ。最終的に生き残るのはいつだって器用な奴だ」

 私はジルに目を向けた。

 警戒心が無くなったのかしら。

 さっきまでのようにヘンリお兄様を睨んでいないわ。

 確かにヘンリお兄様の言う通りなのよね。結局は器用な人が生き残るのよ。

 怯えた表情は悪女に禁物だわ。私も気をつけないと。

「僕の名前はジル」

 ジルが口を開いた。

 名前を言ったって事は……ヘンリお兄様の勝ちね。

 ヘンリお兄様は軽く微笑んだ。

「俺はヘンリ、よろしく」

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