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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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 久しぶりの魔法学園だわ。

 前に一度忍び込んだ日から私は出入り禁止になったものね。懐かしい景色だわ。

 それにしても一度見たとはいえ、やっぱり贅沢な作りをした学園よね。

 ジルの方へ目をやった。

 ジルは口を開けて、目を丸くして魔法学園を見ている。

 そりゃそうよね、今まで貧困村しか知らなかったものね。

 ジルはこっち側に来てから驚きの連続ばかりだもの。

 初めて太陽を見た時は涙を流していたし、ここまで馬車に乗ってきた時もずっと外ばかり見ていたものね。

 きっとジルにとっては全てが新鮮なんだわ。

「どうして……、どうしてこんなにも違うんだろう」

 ジルが小さく呟いた。

「僕等は一体どんな悪い事をしたんだろうね」

 そう言ってジルは私の方に顔を向けた。

 その目は少し潤んでいるように見えたけど涙を流す様子はなかった。

 ただ苦しそうに眉間に皺を寄せていた。

 ここで泣かないのね……。偉いわね、ジル。

「ジルは自分で何か悪い事したと思っているの?」

 私の質問にジルは首を横に振った。

「それが階級、身分制度なの。実力があっても結局貴族に隠れてしまうのよ」

「聖女は?」

「あまりにも稀有な才能を持っていたからよ。それに彼女は魔法を使えるでしょ?」

「……そうだね。僕は魔法を使えないけど、魔法学園に入ってもいいの?」

「当たり前でしょ。魔法学園は魔法だけを教える学園じゃないのよ」

 ジルは真っすぐ魔法学園の門を見た。

 私達は門の方へ歩いて行った。

 まだ守衛はあの人なのかしら。

 あの時、私の事を止めた人……、だわ。

 少し歳をとったように見えるわね。皺が若干増えたような気がするわ。

「ウィリアムズ・アリシア様。どうぞ」

 守衛は私に微笑んでそう言った。

 ……前回とは随分と態度が違うのね。

「もう一人いるわ。私の助手のジルよ」

 私はそう言って守衛を睨んだ。

 守衛は一瞬ブルッと震えたように見えた。

「申し訳ございません! ジル……、様ですか。どうぞ!」

 そう言って守衛は深く頭を下げた。

 頭を下げたのはこれ以上私の顔を見たくなかったからかしら。

 ジルは別にそんな事を気にする様子もなく堂々と歩いている。

 流石悪女の助手だわ。


 私達が学園に着いた時は丁度お昼休みだった。

 お昼休みに着くなんてついてないわ。授業時間中に来たかったわ。

 とりあえず、リズさんを探しましょ。

 お父様から貰った情報だと成績は優秀で魔法も特に暴走していないみたいなのよね。

「貴方がアリシア様?」

「アルバート様の妹様よね?」

「なんて可愛いのかしら」

「ヘンリ様とアラン様の妹様って事?」

「そうよ! やっぱりお兄様達に似て美しいのね」

 私、来て数分でもう有名人なの?

 それにしてもこの人達は誰かしら。

 初めましてよね?

 ……私は今ここでは悪女なのよ。

 馴れ馴れしくしないで欲しいわ。

「アリシア様、分からない事があれば私達にいつで」

「うるさいわ」

 私の一言で一気に静まり返った。

 私に喋りかけてきたお嬢様集団は固まって私を見ている。

 私は軽く嘲笑し、彼女達を睨んだ。

「私が初対面の方を簡単に信用すると思っていますの?」

 お嬢様軍団は怯えた顔で私を見ている。

 なんて弱いのかしら。

 貧困村の人達は私が睨んでも睨み返す勢いなのに……。

 そう思ったらやっぱり私と対等に戦えるのはヒロインのリズさんなのね。

 けど、私的にはもっと怯えて欲しいのよね。

「名前も名乗らずに本当に失礼な方たちですわ」

 私は彼女達に圧力をかけるようにして言った。

 一人は小さく震えだした。

 あら、これは私の悪女としての態度は合格点だわ。

 人を震えさせるぐらい怯えさせたって事でしょ。

 正直、彼女達が弱すぎるっていうのもあるのかもしれないけど。

「何をしているの?」

 この聞き覚えのある柔らかい声は……。

 私はゆっくり声のする方へ振り向いた。


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