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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「おはよう、ジル」

 私は目が覚めたばかりのジルにそう言った。

 ジルは薄目を開けてぼんやりと私を見ている。

「アリシア?」

「ええ、私よ」

「ベッドがふかふか……」

 確かにウィルおじいさんのベッドはマットレスが固いものね。

 ジルはまだ寝ぼけているみたいだわ。

「ここは?」

「私の家よ。そしてここは今日からジルの部屋よ。好きに使っていいわ」

 私がそう言うと、ジルは目を見開いた。

 あら、目が冴えたみたいね。

「僕の!?」

 ジルは自分の部屋を持った事がなかったものね。

 ジルは目を見開いたまま部屋を見渡す。

「さぁ、早く支度して。早速今日から魔法学園に行くのよ」

「今日から?」

 ジルが固まったまま私を見る。

「ええ。貴方は本で読んだことあるから知っていると思うけど、魔法学園には聖女がいるのよ」

「あの世界に平和をもたらすって言われている聖女? 本当にいるんだ」

「本当にいるのよ。それで、今から私が話す事は絶対に秘密よ。約束出来る? 勿論、私のお兄様にも秘密よ」

 ジルは深く頷いた。

 真剣な目で私を見ている。その瞳に彼の知性が顕れている。

 ジルが常に一緒っていうのは本当に心強いわね。

 私は小さく息を吸った。

「私はその聖女の監視役に選ばれたの」

「監視役?」

「そうよ。聖女がこの国のトップに相応しい賢さを持っているのか判断して、さらに彼女が正しい判断を下せるように私が導くのよ」

「それってアリシアが凄く良い人になるんじゃない? アリシアって悪女になりたいんだよね?」

 ジルが小さく首を傾げる。

「視点を変えてみれば私は立派な悪女になれるわ。聖女は皆から好かれているのよ」

「成程。つまり、アリシアが聖女に厳しい言葉や酷い事をして正しい判断へ導こうとしたら、アリシアが悪い目で見られるって事だね」

「そういう事よ」

 私はにやりと笑った。

 流石ジルだわ、物分かりが本当にいいわ。

「さぁ、そこの服に着替えて」

「僕はどんな役をすればいい?」

 そこまで考えていなかったわ……。

 そうね、私が世の中で一番の悪女だとしたら、その助手は賢くて……、正直、何でもいいわよね。

「ジルに任せるわ」

「悪女の助手として相応しい態度をとってみるよ」

「私の悪女っぷりについてこれるかしら?」

 私が小馬鹿にするようにそう言うとジルは苦笑した。

「僕を誰だと思ってるの? それに、最初に会った時のアリシアはなかなか凄かったし」

 確かにそれはそうね……。

 返す言葉が見つからないわ。

 ジルなら私の理想の悪女の助手になってくれそうだし。

「それと、貴方が貧困村出身だって事は内緒にしないといけないらしいの」

「分かった」

 ジルはそう言って頷いた。

 ……素直な子に育ったのね。おねえさん、嬉しいわ。

 一番最初に目が合った時の印象は絶望した感情のない目だったんだもの。

「着替えたら出てきて。部屋の外で待ってるわ」

 私はそう言って部屋を出た。


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