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歴史に残る悪女になるぞ  作者: 大木戸 いずみ
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「……誰の仕業だ?」

 デューク様の怒りのこもった声に私は思わず鳥肌が立った。

 地面からも冷気を感じると思い、視線を下げると私の足元辺りまで地面が凍り始めていた。

「デューク様、もう終わったことなので」

 私は内心焦りながら冷静な面持ちで声を出す。

 ……デューク様のお母様は毒殺で亡くなった。だからこそ、彼にとって、私が毒を盛られていたという事実は相当なものだったのかも。

「度を超えた」

 デューク様の怒りは顔を真っ赤にしたり、息が荒くなったりしない。

 その低く重い声は背筋に悪寒が走るほど冷たく、私まで恐怖を抱くほどだった。

 こんなにも怒っているデューク様を見るのは初めてかもしれないわ。

「この城ごと潰せばいいか?」

「落ち着いてください」

 私はもう一度デューク様にそう言った。……が、私の声は届いていないようだった。

 魔力がどんどん強まっていくデューク様に私は魔力で制した。

「デューク様!」

 私の声がこの場の空気を割いた。

 デューク様の魔力はかなり強かったが、なんとか抑えることができた。黒紫色のオーラが凍った場所を覆い、なんとか元に戻す。

 デューク様が本当に我を失っていたら、私は抑えられなかった。

 改めてデューク様の魔力がとんでもなく強いものなのだと認識する。

 お互い全力で戦うことにならなくて良かった。本当にこのお城を壊してしまうところだったわ。

 私は小さく息を吐いて、デューク様を真っ直ぐ見つめた。

 私が大きな声を出して、デューク様の力を無理やり抑えたことに驚いているようだった。目を丸くしているデューク様に私は一歩近付いて、優しくお腹に当てる程度に拳を入れた。

 本当は軽く平手打ちをしたかったのだけど、身長が届きそうにもなかったから、鳩尾パンチよ。

「私のために怒ってくれてありがとうございます。……ですが、ここに来た目的を忘れないでください」

 私はそう言って、デューク様のお腹から手を離す。

 デューク様はさっきよりも随分と落ち着いた様子で私を見ていた。

 掃除用具もすっかりと元通りになっている。私はデューク様を見つめながらフッと口角を上げた。

 私のことを本当に想ってくれているのだと伝わる。その気持ちが私は嬉しかった。

「それに……私一人であの離宮ぐらいなら制圧できますわ」

 私の笑みにつられて、デューク様も表情が緩んだ。

「相変わらずいい女だな」

「…………ところで、平民たちの方はどうなっているんですか?」

 デューク様に褒められるのがどこかむずがゆく、私は話を逸らした。

 その甘い視線が心臓に悪いのよね……。心拍数も上がっちゃうし……。

「こっちは大丈夫だ」

 デューク様はそれだけ言った。

 ……デューク様がそう言うのなら大丈夫よね。変に言及とかしないでおこう。

 私もなんとかしないと……。医務室で油を売っている場合じゃないけれど、一度引き受けてしまったからには最後までやり通さないと。

 そうして、私たちは掃除用具を持って、医務室へと戻った。


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