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私は「よしっ」と気合を自分に入れて、ベッドから勢いよく降りた。それと共に本が一冊床に落ちてしまった。
本を拾い上げようとすると、本の中から何やら一枚紙が飛び出していることに気付く。
……もしかして、破けちゃった?
いや、今の衝撃で一枚だけ綺麗に破けることなんてあるわけない。
私は飛び出た一枚を引き抜き、部屋に戻ってすぐに見れるように枕の下に入れた。
「とりあえず、みんなの様子を観察してみましょ」
私は独り言のようにそう呟いて、部屋を出た。
女性たちを観察するために、私は適当に離宮の中を歩き回る。
みんな優雅に過ごしている。侍女たちは必死に働いていて、それ以外の人達は自分の好きなことをしている。
お喋り、刺繍、読書、色んな人たちがいる。
私という存在に慣れてきたのか、私が離宮の中を歩いていても、来た当初よりも注目されることは減って来た。
それでも、まだまだ視線は感じるけど。
「ねぇ、そもそもここにいる人たちはどれぐらいローザ様を支持しているの?」
私はミアに小さな声でそう聞いた。彼女は少し考えてから、答える。
「ローザ様を恐れて支持している人を含めますか?」
「ん~~~、含めないで」
「だとしたら、一割ぐらいですね」
「え、そんなに少ないの?」
私はあまりにも少ない数字に声を少し大きくしてしまう。
「はい。……好かれる方ではないので」
確かにあの性格だ。好感度は低いだろう。……にしても、かなり少ない。
「ローザ様を恐れて支持している人たちを合わせたら?」
「八割ぐらいですかね」
「ほぼ恐怖政治じゃない」
私はミアの発した数字に、すかさずそう言ってしまった。彼女は「本当に恐怖政治ですよ」と私の言葉を肯定する。
権力で押さえつけているだけ……。意外とこれは、形勢逆転を狙えるかもしれない。……まぁ、私はよそ者っていうハンデがかなり大きい。
「第二夫人という立場はかなり強いですから」
「……ミアもローザ様のこと怖い?」
ミアは私の質問に僅かに顔を引きつった。……が、すぐにいつもの表情に戻り、「いえ」と首を横に振る。




